【読書記録】2021年1月(後半)

ごきげんよう。ゆきです。

1月後半の読書記録です。ミステリー多めで幸せ。

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大阪T市にあるO医科大学法医学教室。サイケなシャツ姿で現れたイケメン新人、伊月崇は目下、先輩のミチル先生にしごかれ中。ある日、電車に身を投げた女性の遺体が運ばれてきた。そして車に轢かれた女性も。驚くことに、これらの遺体には世にも奇妙な共通点があった。 それらは全く不可解な事故としか思えなかった。目撃していた人々も皆、口を揃えてそう言った。―ある時は混雑した駅のホームで、ある時は黄昏の色に染まった坂道で、突如、彼女たちは死に向かって身を投げた。若き法医学者、伊月崇と伏野ミチルの名コンビが事件の真相に迫る!女性法医学者が鋭利な筆致で描く意欲作。

ドラマ『アンナチュラル』、先月読んだ『ヒポクラテスの誓い』に続いて、もう少し法医学ミステリーの幅を拡げたいなと思って開いた1冊。近所の本屋には6巻が贅沢に平積みになっていて、注目度の高さも伺えた。

内容はあらすじの通り。いい意味でも悪い意味でも軽い文章で読みやすい。著者が実際に法医学に携わっているとのことで、解剖シーンも明瞭に書かれている。1つ1つの事件の謎が解剖を通して深まっていく様はやはり読んでいてドキドキするし、「この違和感がどういう結末をもたらすんだろう」と想像してページをめくる手が止まらなくなる。

ただ、これはミステリー好きにはオススメできない。ラノベ好き、ホラー好きなら読んでもいいかもしれない。理由は2つ。

1つは、ラノベ調の文体が気になって本格ミステリという感じがしないこと。特に法医学教室の秘書、峯子に至っては話すときの語尾が「~にゃ」というトンデモ設定。電撃文庫かこれは?!と目を疑った。教室のメンバーからは「ネコちゃん」と呼ばれており、童顔にそぐわないダイナマイトボディを持っているという全くもって不必要な設定まで明かされる。峯子は突出した例だが、登場人物1人1人が言ってしまえば胡散臭いのでちょっと気になる。

そして2つ目の理由……これは正直本当に私も、なんとも言えない気持ちになったのだが、ギリギリネタバレにならない程度にこのモヤモヤを記させてほしい。ミステリなのになぜ……なぜ何も解決しないんだ……。これ以上言うと自滅してしまいそうなので止めるけれど、つまりはそういうこと。このシリーズは1巻ずつ完結するっぽいので、あらすじに書いてある事件はこの巻だけで解決のはずだ。だから私がモヤモヤしているこのまま、この事件は終了となる。うーーーーーーーーん。事件の内容も登場人物の捜査のくだりも魅力的でめちゃくちゃ面白かったのに、この終わり方は無いよぉ……。初めからこの本がミステリーではなく、ホラーと謳っていればこんなことにはならなかっただろうに。この小説は、どう考えても推理小説の禁忌を踏んでいる。

続編どうしよう。あらすじは気になるものが多いんだけど、この読後感だったらと思うと躊躇してしまう。ミステリの合間に挟もうかな。

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永遠の愛をつかみたいと男は願った――東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔! くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。

黒地に赤でドクロが描いてあり、「これを読まずしてミステリーを語るな」みたいな旨の文字が躍るカバーが巻かれていたと思う。あまりにも悪趣味な特別仕様のカバーだったが、なんか悔しかったので読んでみた。

結果、ものすごく綺麗に騙された。最後の章で「え?え?」と言いながら何度も同じページを行ったり来たり。叙述トリックで有名な『十角館の殺人』は、途中で種明かしされた後にそれまでの行程を解説するように振り返る流れになるので読了後も落ち着いていたものだが、こちらは「はいこれが真相でしたー!おわりー!」みたいなテンションで急に放り出されるので、読者は一旦これまでの出来事を整理する時間が必要で、ゆえに読了後パニックを起こす。叙述トリックものだと知らなかった私は大混乱である。

犯人・蒲生稔、母・雅子、被害者の知り合いの元警部・樋口の3つの視点から描かれる本作。伏線も豊富に盛り込まれていて、本当によくできている。

トータルの感想を一言でまとめるなら「気持ち悪い」。エログロ耐性がないと事件の詳細は「気持ち悪く」て読み進められないし、殺人鬼・蒲生稔の思考回路も理解不可能なレベルで「気持ち悪い」し、母親の息子に対する思いも「気持ち悪い」し、真相が明らかになったあとにも追い打ちをかけるように「気持ち悪さ」が付いてくる。そして、こんな物語を書けてしまう筆者が最も「気持ち悪い」。これは誉め言葉だと思っていただきたい。こんなに猟奇的で、加えて完璧な推理小説を書ける人を他に知らないのだ。あまりの衝撃で初めて読んだ直後に二度読みしたくらい。

あとがきにあったが、これを執筆している最中の筆者は「なんか様子がおかしかった」と奥様に言われたそうだ。それだけ筆者がこの本に精神を持っていかれたということだろう。だとしたら読者も真っ向からこの殺人鬼と向き合う覚悟をしてから読み始めるべきなのだ。なんとなく、でページを開いた自分が悔やまれる。

「これを読まずしてミステリーを語るな」とまでは言わないけれど、「ミステリー好きならこの小説に挑め」くらいは言いたい。読んでよかった。1月のハイライトはこちらで決定。

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下町のフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルはカウンター七席、テーブル五つ。三舟シェフの気取らない料理が大人気。実はこのシェフ、客たちの持ち込む不可解な謎を鮮やかに解いてくれる名探偵でもあるのです。突然姿を消したパティシエが残した謎めいた言葉の意味は?おしゃれな大学教師が経験した悲しい別れの秘密とは?絶品揃いのメニューに必ずご満足いただけます。

既刊の〈ビストロ・パ・マル〉シリーズ、読み終えてしまった……寂しい……。

12月に初めて手を取ったこのシリーズ。3冊しか出ていないのは知っていたが、『殺戮にいたる病』で精神がやられていて、温かな本が読みたいと思って即決で開いてしまった。第3巻、故に現時点での最終巻である。

やっぱり良かった。もう大好きこのシリーズ。今回は1巻同様、全話がビストロ内の話で、店員の高築目線で語られている。前巻に登場したパン屋さんが出てきたり、相変わらずヴァン・ショーが提供されていたりと、シリーズで読んでいる人は嬉しい場面がちょこちょこ。

ミステリーとはいえ誰も死なないし、最後に小さくても救いがあるのがこのシリーズの特徴だ。物足りないという人もいるかもしれないが、私にはとても温かくて落ち着く居場所になっている。

今回は「コウノトリが運ぶもの」と「ムッシュ・パピヨンに伝言を」がお気に入りだった。短編でもしっかり泣かされて、心が温まる。ずっと店員目線で語られているのに、そこにいる客の心情や表情が目に浮かぶよう。

今回は前2冊とまたちょっと異なり、社会問題を織り交ぜたような話も数話見られた。そして今、筆者は感染病の影響でテイクアウトを始めたビストロを舞台に新作を書いているという。自分の世界と小説の世界が重なって、リアルさが増していくようだ。発売日は明かされていないが、またこのビストロに足を運べると思うと胸が高鳴って仕方がない。それまで、同著者の別のシリーズを読んでみようと思う。

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深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに8つの事件をひきおこす。社会人一年生の大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだが―「歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」という掃除の天才、そして、とても掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子・キリコが鋭い洞察力で真相をぴたりと当てる。

というわけで、近藤史恵さんの別シリーズ。可愛い表紙が印象的なのと、ビストロシリーズよりも既刊数が多いので手に取った次第。

ビストロシリーズがフレンチレストランで起こる小さな謎解決物語なのに対し、こちらはオフィスでの些細な事件解決モノなので、私にとってはリアリティがあった。悪く言うと、会社の人間関係等、想像に難くない場面が多いので少し疲れるくらい。とはいえ、キュートな清掃員が爽やかに事件も片づけてくれるのでサクサク読了できた。

個人的にはビストロシリーズの方が好きだな。温かい料理と同じように心がホッとするのはビストロの方。でも書籍の締め方はこちらが良かった。シリーズものではあるが、この1冊で綺麗なエンドを見せてくれる。本を閉じながら、自然に笑顔になっていた。清掃員キリコの可愛さにやられたので、続編も楽しみ。

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史上初! 最終候補にダブルエントリーされ、「こっちを読みたい!」という声が続出した話題作。『さよならドビュッシー』『おやすみラフマニノフ』に続く中山七里の最新刊。『このミス』ファン待望の作品が、満を持して登場!
マンションの13階からフックでぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに……。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の正体とは? どんでん返しにつぐどんでん返し。最後の一行まで目が離せない。

近藤史恵作品2つ挟んだから、ちょっと重いミステリーも今ならいけるだろ!と思って選択。タイトルにいまいちセンスを感じられなくて敬遠してた(すみません)のだけれど、これどうやら元々は『災厄の季節』という題で「このミス」にエントリーされていたという。何故改題したんだー!そのままの方が断然良かったわー!と思うのは私だけだろうか。

内容は『殺戮にいたる病』並みのサイコミステリー。あちらが叙述ミステリーなら、こちらは本格推理モノ。「この人怪しいな」と思った人物はそのまま事件関係者になっていったし、そこまでどんでん返しに意表を突かれた感じは私は無かったが、最後の1行で背筋がヒヤッとする感じに興奮した。作者の狙いはその最後の1行だったらしい。まんまとやられた。

私の場合先にヒポクラテスシリーズに手を出していたので、この主人公が既に知っている人物で嬉しかったりしたのだが、おそらくヒポクラテスの方がスピンオフ的立ち位置なんだよな。でもどっちから読んでも楽しめる。

口コミには「市民の暴動のシーンが冗長すぎる」というネガティブな感想が見受けられたが、猟奇連続殺人によって不安を抑えきれなくなった市民のリアル、そして自身の責務と自己防衛の狭間で葛藤する警察官の苦しみがまざまざと、余すところなく書ききられていて私は嫌いじゃなかった。この物語が本当に読者に見せつけたいのはこのシーンなんじゃないだろうか。上司と部下の絆も引き立つ場面で、思わず顔がほころんだ。

主人公が化物語シリーズの阿良々木暦なみに不死身体質なのが気になったものの(笑)、楽しく読了。ちなみに実写版は主人公を工藤阿須加が演じたそうだが、私だったら綾野剛一択である。

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いちばんたいせつなことは、目に見えない。世界中の言葉に訳され、70年以上にわたって読みつがれてきた宝石のような物語。今までで最も愛らしい王子さまを甦らせたと評された新訳。

カエル男の後に『星の王子さま』を読む私の情緒よ(笑)。

恥ずかしながら未読だった、『星の王子さま』。いろんな本に引用されているし、タイトルや作者はもちろん知っていたけれど、既読の友人はこれまで口を揃えて「よくわからなかった」という感想しか述べていなかったので、読む必要性に駆られなくて気付けば20代後半になっていた。無料だったので初読。

こりゃあ子どもに読ませても「よくわからなかった」になるだろうよ!と思った。児童書のくくりじゃないよこれ。もし私が幼少期にこれを読んでいたら、絶対今頃「星の王子さま?名作って言われているし、もちろん読んだよ、よくわからなかったけど」と言って読み返しもしていないだろう。

メタファーがすごいのと、大人だから理解できる感情や事象が多くて、今読んで正解だったと思っている。まだ子供心がわずかでも残っていて、でも大人にならないといけないという義務感の狭間で揺れている18~29歳あたりに読むべき本。生きていく上で何が大切で、子どもにとってどういう大人が憧憬されるのか、無くしてはいけない気持ちは何なのかが学べたような気がする。まだ私も深掘りしきれていないのでざっくりとした認識でしかここに述べることは出来ないが、それでも幼少期に読むより学びはあった。

しばらくしてから再読してみる。きっとまた新しい導きを得られる気がしている。

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1月後半、沢山読めて良かったです。最近はお風呂で、湯船に漬かりながら10分~15分読書をするのがマイブーム。ただし、ミステリーのクライマックスを持ち込んでしまうと興奮して一瞬でのぼせてしまうので、気をつけようと思います(経験済)。

来月はどうしようかな。毎月なにかしらのテーマを決めて本を選ぶというのも楽しそうですよね。うーん……そうしたら、2月の読書は表紙が気に入った本を選んでみます。内容は変わらずミステリー中心だと思いますが、お付き合いいただけると幸せです。

本日もお付き合いいただきありがとうございました。

またお会いしましょう。ゆきでした。

See you next note.

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