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黒猫白猫(ショートストーリー)

「黒猫と白猫、どちらがよろしい?選びたくなければ産まれた時のお楽しみとなります。どうしますか?」
神様のところで猫になりたい列に並び、産まれる順番を待っていたんだ。
その時、優しく天使にそう聞かれたんだよ。

「ボクどうしようかな。どっちでもいいな。ウ~ン、黒猫がいいかな」
そう答えた。

僕の後ろに並んでいた子も
「私も黒猫か白猫だといいなぁ、じゃあ白猫にします」
そう答えていた。ちょっと可愛い子だった。
天使はメモ帳に何か書いている。みんなの望みを間違えないようにメモしてくれてるんだな。

ボク、今度は猫に生まれ変わるけど、その前は何だったのかな。何にも思い出せない。友達たくさんできるといいなあ。

ボクの後ろに並んでいた子と少しだけ話をした。
「私、前は人間の女の子だったの」
「本当?ボク、前のことは何も覚えてないんだ」
「ただね、体が弱くて元気に走ったりできなかったのよ。猫になったらどこまでも走ってみたいな」

順番がきた。天使が肩を優しく押してくれた。ボクの後ろの子が不安そうにボクを見送ってくれた。
宙に舞ったかと思うと、ボクは回転する滑り台の上にフワリと落ちた。クルクル回ってたどり着いたのは温かい場所。なんだかとっても眠くなっちゃった。ボクの後ろの子も、どこかにたどり着いただろうな。サヨナラも言えなかった。

柔らかいベッド。いたのはボクだけじゃなかった。声にならない声が聞こえてきた。一人じゃないのは心強い。そしてここはとても安心できる。


押し合いへし合いがずっと続いたけれど、楽しかったよ。
ある日、また滑り台があるのに気付いたんだ。どうすればいいのか誰にも教わらなかったけど、ボクはためらわなかった。ボクが一番先に滑り下りた。他の子たちも次から次にね。

「ママ―、5匹産まれたよー」
人間の声がした。
そうか、兄弟5匹か。嬉しいな。
「ママー、黒猫と白猫が一匹ずつ、あとチャトラだよー」 


ボクの後にいた子、ボクの妹になったんだ。
大きくなったら一緒に、どこまでもどこまでも風を切って走ろうね。




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