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ゆめ(716文字)

私は、今よりずっと若い。まだ女子大生なのだから当然だ。
大学の校内でトイレを探した。なかなか見つからない。
その辺にいる人に尋ねるが、誰も返事をしてくれず、私が見えないかのように無視をされる。

やっとトイレにたどり着くが、様子がおかしい。
並んだトイレのドアが、すべてゲーム機なのだ。
ドアのデザインではなく、正真正銘のゲーム機。ドアの前に並んでいる先頭の女の子はみんなゲームに夢中だ。
私は近くにいた女の子に、ここはトイレではないのかと尋ねたが、やはり返事はない。

トイレに行きたいわけではないと思いなおし、私はトイレを出た。

そこは広く長い廊下のどんづまり。
かなり高いところに、明り取りの窓が並んでいる。
その下で、一人の老教授が空しか見えない窓をずっと見上げている。
彼の抱えている数冊の本と教鞭が、なぜか私の目を釘付けにした。何かを思い出せない、何か大切な事を。そんな気持ちが私を不安にさせた。

彼は何を見ているのか、その表情は真剣そのもの。近寄りがたい、崇高な空気が流れているようだ。

私は、ここに居てはいけない気がした。彼の邪魔をしないように、私はその場を後にした。

広く長い廊下を歩き出す。何もないただの廊下は、不安しかない。随分歩いてたどり着いた、反対側のどんづまり。ドアも階段も何も無い。

この廊下から脱出するためには、老教授の所まで戻り、トイレからあちら側に出れば良い。

また、長い廊下を戻り始めたが、今度は早くにどん詰まりにたどり着いた。
老教授の姿は無い。
彼は女子トイレの中から抜けて行ったのか。
教授だから問題はないのだろう。

しかし、女子トイレに続くはずのドアは見当たらない。なんなんだ。焦る。このまま、私はここで果てるのか。

夢なら覚めて。


最近、睡眠時に長い間夢を見ることは無かったのに、二週間前にも夢を見ました。その夢をきっかけにして、『タオル』というショートストーリーを書きました。今回は結構、夢そのままです。

よろしければ、こちらも。
タオル(ショートストーリー



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