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毎週ショートショートnote

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たらはかにさんの企画です。410文字ほどの世界。お題は毎週日曜日に出されます。
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2023年11月の記事一覧

木の実このまま税理士 毎週ショートショートnote

宇宙船は、USO800地点に到着。 そこにある星は驚くほど小さい。一本の木しか生えていない。その一本の木は星全体を包み込んでいる。まるで神話の中の木のようだ。いつ訪れても赤い木の実がたわわに実っている。 この木の実を一粒食べると願いが叶う。 常識外れの願いは、ほぼ叶わない。だから大金持ちなる夢を叶えたいと願う者が殆どだ。 選んだ赤い実を手にし、再び乗船した客たち。 さあ、食べようとした時、船長が引きつった顔で言った。 「この船は動きません。船も無線も故障。申し訳ありません

ゲーム機という名のAI閻魔(毎週ショートショートnote)

お題 着の身着のままゲーム機 最後の審判で地獄か天国行きかを決められます。今では御多分に漏れずAIによっても下される場合があります。 AIは人間達になじみ深いゲーム機の形状で、かなり大型なもの。デ-ンと構えています。着の身着のまま訪れたあなたはゲーム機の前に立つだけで、それで全てが決められ、一瞬であなたは天国か地獄のどちらに行くか言い渡されるのです。 本物の閻魔様は今頃どうされておられますやら。長い間、休み無く働いてこられたから、バカンスにでも行っておられるのかも。 休

エモすぎる謎ねぶた 毎週ショートショートnote

エモすぎる謎ねって皆も言ってる。ぶた祭りのねぶた。なぜあんなにエモいのか不思議。 ネズミさんは面白くない。 豚の祭りがあるのに、なぜネズミの祭りはないの? 子ネズミたちを連れて、ぶた祭りに出かけた帰り道。 子ネズミたちも自分も楽しかった事は事実だったとネズミさんは思いました。 数日後、ネズミさんは豚さんに出会ったのです。 「ぶた祭りに来ておられましたね。ありがとう」 「羨ましいです、ネズミの祭りなんて無いですから」 「そんな事ないですよ。私たち豚は干支に入れてもらえなかっ

強すぎる数え歌 毎週ショートショートnote

ひとつ、一人ぽっちのあなたのために ふたつ、船を探してあげた みっつ、港に向かって立ちすくむ よっつ、酔いたいだけだと寄り添えば いつつ、いつものように私を捨てる むっつ、紫の雨は胸の中に降りしきり ななつ、泣いて叫ぶ猫はもういない やっつ、夜前の港に風が舞い ここのつ、この日が訪れた とうで、とうとう船は波間に消えて さよならの声は謎の色 「こんな感じの歌が流れているけど、最近の流行歌は古すぎて、ときめかないのよね」 「まあ年寄りだらけのこの国が、彼らに照準を合わせよう

訓告したいの四六時中 毎週ショートショートnote

【小人の国のお話です】 「『ドンジャラホイ祭り』に行きたいな」 「行けよ、タンタ」 「ピコは簡単に言うけど、一緒に行ってくれる子がいないんだ。ピコは誰と行くの?」 「妹のミンミ」 「妹?ピコは良いな」 「会場に入る時だけさ、妹と居るのは」 「でも、一人じゃ入り難いしな」 別の日。 「あのさ、タンタ。ミンミは他の男の子と行くって、僕もどうしょう」 「二人で行こうか、男の子を探している女の子もいるかも」 当日。 「ねえ君たち、二人に祭りのスタッフをお願いできない?人手が足り

戦国時代の自動操縦 毎週ショートショートnote

我が家のタイムマシンは、じい様が値切りに値切って購入した。文句は言えないが、彼女は今流行りの瞬間移動はできない。日本の戦国時代だけなら自動操縦で問題なく行けるが、その他は手動だった。 彼女は赤い車体でオールドタイプ。右ライトの下に可愛いピンクのホクロがある。 どういうわけか彼女は淀殿の大ファンで、事あるごとに淀殿のところに行きたがるのだ。その度に巻き添えにされる。戦国時代の自動操縦は、彼女が設定したのかも。 そんなある日、彼女は言い難そうに申し出た。 自分を人間の形に改造し

小判食え 毎週ショートショートnote

お爺さんは裏の畑で大判小判を手にした。愛犬ポチの手柄だが、ポチはもう二度と帰って来ない。宝物よりポチを戻してくださいと、毎日、お婆さんと二人で神に願い続けた。 ある日、一羽の烏が現れた。 「突然鬼が現れて、ツヅラいっぱいに小判をよこさないと、烏を皆んな食べるぞ」と脅されています。どうぞお助けください」 「うちにあるツヅラに小判を入れておくから、鬼に取りに来いと言いなさい」 烏は何度もお礼を言い、帰って行った。 その夜、鬼が現れた。 お爺さんとお婆さんは、震えながらツヅラ

ごはん杖 毎週ショートショートnote

魔法使いの杖の力は、魔女の持つ魔力によってレベルが変わる。 下っ端の魔女は、軽いものを移動させるのが精々だ。レベルの高い魔女は、勇者の一行に加えてもらえる。 結構シビアだ。 これとは別に、たった一つの魔法しか使えない杖がある。 『ごはん杖』と呼ばれるものだ。 魔女だって、先天的に魔法を使えない者もいる。 そこで、魔法局から貸与されるのが、この杖だ。 この杖は簡単な呪文で、文字通り御飯が出せる。 メニューは選べないが、おなかを満たすことはできる。だから何とか生きていける。し

新説なピン札 毎週ショートショートnote

お金が落ちていた。 拾う。 どこの国の紙幣だろう。初めて見る。 手が切れるほどのピン札だ。 知らない文字で表記されている。数字は500のように見える。単位は分からない。 中央に印刷されている肖像は美しい女性。女王だろうか。 裏には森の景色が印刷されているが、なぜだかひどく違和感がある。 持ち帰り、どこの国の紙幣か調べたがわからない。結局、飽きて机の引き出しに入れた。 すっかり忘れた頃、訪問者があった。 日本人には見えないが、流暢に日本語を話す異常に背の高い男。 彼は確かに