マガジンのカバー画像

企画への参加

51
小説、エッセイ、俳句etc
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

見つからない言葉 青ブラ文学部

見つからないの 探しにいかなくては 見つからないの  あなたの言葉 あの屋根に止まっているアレかしら? 違うよね 風に身を任せ飛んでいった昨日かしら? 違うはず あなたの約束の言葉 大切な言葉 どこかに消えた 思いだせない ハサミで切り落としたように キレイサッパリ無かったことに 約束の言葉を失くした私は ただの ただの 何だろう 約束の言葉なんか無かったのよ 初めから 私の思い違い 私の妄想 あなたさえ存在していない そういう事にしておこう 約束の言葉 円を描いて

雛人形 青ブラ文学部

春めいてきた。 春の足音が聞こえて来るたびに、私は思い出す。 子どもの頃のできごと。 この地では無い。私の生まれた街での。 次の誕生日がきたら、10才になる春。初めての二桁の年齢。なんだかお姉さんになるようでくすぐったいような気がしていた。 私の誕生日は三月三日。雛祭りの日だ。 小さなお雛様が、すでにテレビの隣にある低めの棚に並んでいた。 まだひと月も先なのに。 その雛人形は内裏雛だけの、母の手で生まれた木目込み人形だった。母が一生懸命作ってくれている姿を私はワクワクし

鳥に 青ブラ文学部

今度生まれ変わるなら、何がよいかとあなたは尋ねた。あれからどのくらいの時が過ぎただろう。 あの時、私は考えたこともないと返事をしたが、思い直してこう言った。 「鳥になりたい」と。 空を自由に飛ぶ。私でなくとも、誰もが一度は空高く飛びたいと願ったことがあるだろう。 あなたは大人になってから高いところが怖い人になってしまった。 だから私のこの返事を聞いた時、眉をひそめたのだ。 あれから、あなたはどこかに行ってしまった。私の前から姿を消した。その前日、あなたは私の目を見ないで

眠り薬 青ブラ文学部

皆様ご存じの眠り姫。 100年の眠りから姫が目覚めたのは、王子が口づけをしたからだと思っていないかしら?そうです、タマタマなんですよね。姫の呪いは初めから100年の間眠るというものでしたから。王子が現れなくても、姫は目を覚ましたと思われます。でもそれではお話としては面白くありませんものね。 姫にかけられた呪いとはいったいどのようなものでしょうか。それは、あなた、薬に決まっていますでしょ。眠り薬に他ならないと思いますのよ。100年間も効果があるなんてかなり強烈な薬ですわ。その