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ショートストーリー

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2022年3月の記事一覧

二人の兄弟

その兄弟は超有名人。 彼らを知らないと言う人を、私は知らない。 彼らはある意味、訪問者である。適度な訪問回数は求められるが、多くても少なくても、不満が出る。 しかも音沙汰が無ければ、大きな問題に発展する。複雑かつ微妙な存在だ。 この二人、一緒にいる所を目撃される事は少ないかもしれない。仲が悪いのだろうか。 一緒にいる事があるとすれば、訪問先がとても小さく可愛らしい場合が考えられる。 それ以外であれば異常事態の事もあり得るので、監視と注意を怠る事はできない。 弟につい

新婚旅行は地球へ

「ねえ、新婚旅行は地球にしない?」 「ちょっと遠いし、住んでいるのは野蛮人だって聞くよ、それで良いのかい」 「その野蛮人っていうのを見てみたいのよ。あなた、興味ないのね」 彼女の機嫌が悪くなりそうだ。 やっと彼女を射止め、結婚の約束まで漕ぎ着けるのにどれほどの時間と真心をささげた事か、思い出せば涙が溢れる。 「勿論興味津々さ、ただ君に万一の事があれば、僕は生きていけない」 「あなたが私を守ってくれると信じているわ」 幻のようなオーラを放つ彼女。 そして、僕らは新

ポポン太とキヌとキツネのおばさん

少し昔のお話。 タヌキのポポン太は妹のキヌと、トボトボと歩いています。涙を流しながら。 少し前に、お父さんとお母さんが猟銃で撃たれ、連れて行かれたのです。もう生きてはいないのはわかっています。 子供達を庇って命を落とした両親に、お墓もつくってあげられません。 二人は、歩き続け、とうとう疲れて、岩かげに隠れて泣きながら眠ってしまいました。 どのくらい眠ったのかわかりませんが、キヌは気配を感じて目を覚ましました。 キヌはポポン太を慌てて起こします。 目の前にキツネ