見出し画像

三重の林業を知る

はじめに

   11月19日(土)、11月20日(日)の2日間、自然環境リテラシーの活動の一環で、三重県紀北町にある速水林業様の大田賀山林での実習に参加させていただきました。林業の現場を見学したり、現場で活躍されている方々のお話を聞くなどの活動を行いました。

1日目  11月19日(土)

   この日は晴れ時々曇りの過ごしやすい天候。電車の車窓からは綺麗な緑と紅葉が見えました。そのうち紅葉している落葉樹はかなり少なく、大多数がスギやヒノキといった針葉樹であるのは何故だろう、と思っていました。
   都会生まれの自分にとってはとても新鮮な、無人の小さな駅・船津駅に着くと、すぐ目の前には緑の山が迫っています。こんなに緑豊かで静かな場所で暮らせたらさぞ幸せだろうと思ったりもしましたが、おそらく自分には無理です。

   大田賀山林に着き、まずは速水林業の川端俊介さんに案内していただき林業現場の見学です。最初に、刈り取った木材の選別や加工を行う土場という場所を見て周りました。今回見せていただいたのは主に広島や岡山で牡蠣の養殖のための筏に使われる丸太でした。多少曲がっていても問題は無いそうですが、表面はしっかりと磨く必要があるそうです。土場にとどまらず、今回の活動では木材の香りや質感を鮮明に実感できたと思います。

土場です。
前回の自然環境リテラシーの活動のために買ったスマホ用防水ケースを付けて撮っているのでブレブレです。

次に、(苗木を育てる場所)を見学しました。ここで育つほとんどのヒノキの苗木は、創業した江戸時代以来ひとつの大木から取っている挿し木です。雄大な山に生い茂るヒノキが全てクローンだと考えると少しゾッとしますね。

少し葉が茶色(黄色?)くなっている部分は、ヒノキ特有の紅葉だそうです。常緑樹とは言えども古くなった葉は落とさねければいけないのですね。


コンクリート塀を貫通して生えているヒノキの苗木。
やはり植物の生命力には驚かされます。

続いて、森の散策です。実際に間伐が行われた場所や、苗木の親玉である「速水1号」というヒノキなどを見学しました。また、この森林の木々のほとんどを占める、スギとヒノキの見分け方を教わりました。川端さんの先輩方曰く、シュッとしているのがスギ、ファッとしているのがヒノキ、とのことです。

この水溜りでイノシシが体を洗うのだとか。

この大田賀山林のように、しっかりと手入れされており陽の光が地表に届くような森林は、日本の中でもかなり貴重ということで、森林浴を堪能しました。途中で雨が降り始め、一段と森のヒノキの香りを楽しむことができました。道中で、夕食時の焚き火で使うための落ち葉や小枝を集めました。特に、いちばんよく燃えるというスギの葉を沢山集めておきました。

   散策から戻ると、夕食の時間です。まずは焚き火を起こしました。先程集めた落ち葉や小枝、そしてもちろんヒノキの木材を用いました。4人1組ほどの班ごとにマッチやガスバーナーで火起こしを行ったのですが、私たちの班だけ最後まで火がなかなかつかず、予定していた焼き芋が出来ず残念に思いました。そんな状況だというのに、あまつさえ「火の後始末の際には、木材を完全に炭にするように」と指示されていたので、一時はどうなることかと思いました。(幸い、何とかなりました。)もちろん、このようなことで台無しになるような夕食ではありません。メインはクリームシチューでした。小麦粉をバターで炒めて少しずつ牛乳を加えホワイトソースを作り、それからシチューにすることで上手くできました。

僅かな間だけ奇跡的に火がついた時の写真です。

夕食の後は、林業現場と森を案内していただいた速水林業の川端俊介さん、そして野地木材工業の岡田まりさんという、若手のお2人のお話を聞かせていただきました。川端さんは、自身とと紀北町との関わりや、余った木材を使った商品のアイディアについて話されていました。岡田さんは、実際に林業や製材所での仕事に携わることで変わった林業に対する見方について紹介されていました。聞かせていただく中で、将来は林業に携わるのも良いかもしれない、とも思いました。
本来はいつも通りテントを立てて就寝の予定でしたが、雨が強まっていたためコテージに泊まることになりました。暖房もありとても快適でした。

2日目 11月20日(日)

翌朝も雨が弱まることはなく、急遽午前中のみの活動に変更となりました。
朝食を終え、まずは速水林業の川端康樹さん(川端俊介さんのお父様)のお話を聞かせていただきました。日本の林業の現状や問題点を知ることができました。中でも、九州地方では山の木々が不適切に伐採されはげ山になってしまう事例が増えている、というお話が印象に残りました。森林保護が謳われているこの時代に、未だにそういった課題が残っているということがショックでした。
続いて、川端俊介さんへの質問コーナーがありました。私は、「林業に関わる前と後で、ものの見方はどのように変化しましたか」と質問してみました。その答えは、「林業を知れば知る程、家の見方、解像度が上がる」とのことでした。家屋や家具を一目見ただけで、どのような木材をどう加工しているかが分かるというのは、人生が豊かになりそうですね。それから、大学生である私たちに向けて、「『好きだな』と思ったものに特化して欲しい」とも仰っていました。今回に限らず、大学に入ってからは先生や先輩などに「好きなことをやるべき」と言われることが多いと感じています。高校までの周囲からの圧力との差に驚きです。

こうして、予定より早いですが、2日間の活動を終えました。自分は正直、林業というのはただ木を切るだけの仕事だと思っていました。ですが実際は、森のことや木材を使う人のことをとても真剣に考えている熱い人たちばかりだったので、過去の自分が恥ずかしくなりました。
最後になりますが、先生方、先輩方、参加者の皆さん、そして林業について様々なことを教えてくださった方々、2日間お世話になりました。ありがとうございました!
そしてもちろん、ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?