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「僕はまた、君にさよならの数を見る」

「僕はまた、君にさよならの数を見る」霧友正規

中学生くらいのときに読んでいたseventeenという雑誌で永野芽郁ちゃんがおすすめしていたのが読んだきっかけ。それからずっと好きな小説。

医学部に入学する春休み、佐々木直斗は桜の花が美しい公園で少し変わった美少女・峯原美雨と出会う。けれど彼女に触れたとき、「300」という数字が浮かんだ。直斗には余命が少なくなった人に触れると、その残り時間が「数字」として目に見えるようになる力があった。
2人は偶然にも同級生となり、恋人同士となる。残り300日。別れる定めの切ない恋愛物語の結末とは…

余命ものというのは、生死について扱っているだけあって考えさせられることが多い。
美雨は「自分が生きた証が欲しい」と言う。私もそうだ。何のために生きてるのか、生きていることに意味があるのかよく考える。それを考えすぎて苦しくなったこともある。
でも最近は、自分の生には自分で意味を見出すものなのかな、と思うようになった。「生きててよかった」って思えることをたくさん経験できたらそれでいいのかなって。宇宙レベルで考えたら私なんていてもいなくても同じ存在だけど、生まれた意味なんてないのかもしれないけど、ないのなら自分で見つけたい。今はそう感じている。

「二人が一緒にいた時間は、確かにそこに存在していた。たとえ二度と会うことができなくても、その時間はきっと無意味じゃない。だから、私はこう思う。さよならは「0」ではないんだ、って。そして、彼がこの世界にいた意味は、確かに私の中にあるんだ、って」(293pより)
これは私がこの小説で1番好きな部分。
「さよなら」が終わりではないことをこんなにも美しく描写されている。全体的にこの物語は描写が素敵なのだけれど、ここは特に切なくて、儚くて、美しい。
いつか私もこんなふうに思える人に出逢えたらいいな。


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