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息子が初めて「死」を身近に感じた日

先日、家に帰ったら飼っていたベタが死んだことを妻からそっと報告を受けた。

「保育園から帰ってきたら固まってるのを見つけたんだけど、さくがまだ寝てるだけかもって認めてないんだよね…」



次男が産まれて間もない頃、魚を飼いたいとの長男の熱い要望で、長男と僕二人でペットショップに行った。
色鮮やかなベタ達が並ぶ中、なぜか少し白く濁った赤色をした個体を長男は選んだ。

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身体が赤いから「あかくん」と長男が命名。晴れて家族の仲間入り。
自分が選んで連れてきたことが印象的だったのか、餌やりや水槽掃除をよく一緒にやってくれた。

僕がときどき
「好きな人は誰?」
と長男に聞くと

「おとうちゃんとおかあちゃんと、よしくんとあかくん!」(父、母、弟、魚)

と必ず言っていた。
家族の一員としてとても大切に想っていたんだと思う。











動かなくなったあかくんに

「元気ないのかな?」

と餌をあげる長男をみて涙が出そうになった。
必死で堪え、しばらくしてから
「さく、ちょっとお話しようか」
と僕は彼を抱き抱えてソファに座った。

「なーに??」

不安そうな表情をしながら聞いてくる長男。

僕は震える声を整えながら
「生き物はいつかね。寝たように見えるけどずっと動かなくなってしまうの。それが死んじゃうってこと。
あかくんも、猫も犬も、おとうちゃんやおかあちゃん、さくやよしくんだっていつかはそうゆう時が来るんだよ。あかくんはお魚だからその時が早くきたんだと思う…
だからあかくんは寝てるんじゃなくて死んじゃったんだと思う。
死んじゃうと綺麗な身体が少しずつ汚くなっていっちゃうから、綺麗なあかくんのまま、お父ちゃんはお墓を作ってあげたいと思うんだよね」
と伝えた。


すると長男は不安な表情が深くなり

「嫌だよ。ずっと一緒にいたいよ。一緒に大きくなって、あかくんが大きくなったら水槽も大きくしてあげたいんだよ。離れ離れになりたくないよ」

と切ない声で言ってきた。


僕は何も言えなくなってしまった。




しばらくすると長男が

「まだ寝てるだけかもしれないから明日の朝まで待ってあげたいの。いいでしょ?お願い」

と言ってきた。


「そうだね。そうしよう」
と言ってその日は先延ばしにしてしまった。
そのやりとりを見ていた次男もなんとなく雰囲気を感じたのか、不安そうな表情をしていた。

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子ども達が寝た後、何かヒントはないかと幡野広志さんの人生相談の書籍を読み返したり、Twitterで死についてとても納得する考えを発信してくれている僧侶の方のツイートを読み直したりした。


結果、息子の気持ちに寄り添いつつ、自分の気持ちを素直に伝えるのが一番良いのかなという考えに至り、少しスッキリした。









次の朝、起きると長男はいつものルーティンで妻と二人で先にリビングに降りて行った。

しばらくして僕と次男二人でリビングに降りた。長男はNetflixを観ていた。
昨日のように妻がまたそっと

「多分認めたくないみたい。確認しようとしないんだよね…」

困惑していた。


僕は長男に
「おとうちゃん、あかくんの様子気になるから見たいんだけど一緒に見てくれない?」
と聞いた。


少し間をおいてにこりと笑って

「うん、一緒に見よう。あかくん起きてるかな?」

と長男は明るい口調で返してきた。


彼の中で認めたくなかった気持ちももちろんあったと思う。けど、多分それよりも一度現実逃避して、覚悟をする時間を作っていたんじゃないかとその時の表情や声色で僕は感じとった。


すでに泣きそうになっている僕は必死に悟られないように取り繕って、長男を抱き抱えて水槽に行った。もちろん状況は昨日と変わっていなかった。


「やっぱりまだ寝てるのかなぁ?」


長男がぽつりと言った。

僕の頭はいろいろな言葉が浮かび、ぐちゃぐちゃになる。
なんとか捻り出した言葉は
「おとうちゃんはこんなにずっと動かないのは寝てるんじゃなくてやっぱり死んじゃったんだと思う。
だから綺麗なあかくんが汚くなっていく前にお墓を作ってあげたいな。
会うことはできなくなるけどお墓を作ったらあかくんのこと思い出せる場所にはなるよ」
だった。




少しの間があり長男が

「そうだね。お墓作ってあげよう」

と言ってくれた。

僕は
「どこに作ってあげようか?」
と聞くと

「お家の周りだったらあかくんもさびしくないからお家の周りがいい!」

と長男は言った。




家の裏に穴を掘ってそこに埋めることにした。あかくんの亡骸を穴に入れる作業は長男と一緒に行った。入れる瞬間


「やっぱり嫌だよ。離れ離れになりたくないよ」




と初めて涙をこぼした長男。
僕も我慢できず長男と一緒に泣いた。
勝手口から見ていた妻も泣いていた。
妻に抱っこされていた次男はポカンとしていた。




埋め終わると

「お墓の場所がわからなくなっちゃうから、さくが拾ってきた松ぼっくりを上に置いときたい」

そう言って、松ぼっくりを置いて手を合わせていた。










夜寝る前に思い出して泣いたり、朝や保育園から帰ってきたときにお墓に行って

「あかくんが天国にいけますように」

とお祈りしたりが続いている。

それがきっと少しずつ減っていき、一つ山を越えていくんだと思う。

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飼っていた魚の死を通して、たくさんの葛藤や悩みを家族みんなで共有した。

生き物を飼うことって大小限らずとても大変で責任のあることだし、死を経験することってすんごくしんどい。


でも、たくさんのことを考えさせられるきっかけをくれる、とても有意義で有能な先生になってくれたと思う。


そして何より、子ども達の心身の健やかな成長をたっぷり実感することができて嬉しかったし、この子達の親でいれることをとても誇りに感じた。

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死の概念を伝えることってすごく難しい。
けど、とことん一緒に悩むと、子どもの方がいつか自然と何かを見出してくれるんじゃないかという自分なりの答えをみつけることができた。


これからも子育てしていく中で、たくさんの悩みにぶち当たると思う。

その度に今回のことを思い出して、子ども達の気持ちに寄り添いつつ、自分の素直な気持ちも伝えていくというスタンスを続けていきたいと思った。





最後までお読みいただきありがとうございました。

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※登場人物
あかくん:飼っていた魚。ベタ。家族になって1歳5ヶ月。ちょっと白く濁った見慣れるとクセになる赤色をしている。

さく:息子。長男。3歳6か月。あかくんの名付け親。すごく思いやりのある優しい子。

よしくん:息子。次男。1歳5ヶ月。兄のことと食べることが大好き。

おかあちゃん:僕の妻。僕にはもったいないくらい素敵な人。

おとうちゃん:僕。家族で一緒にいることが何より好きだけど多趣味で出かけたがり。最近スキューバライセンスを取得した。自由人。

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