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警察学校の話 ②入校式

キムタクの「教場」というドラマが去年から話題になっていましたね。
私はどうしても見れませんでした。
自分の学校生活を思い出してしまうからです。
ドラマを見たという元同期にどうだったか聞いてみましたが
「まぁフィクションだからツッコミどころ満載だけど学校の重い空気はそこそこ忠実だから見てて気分悪くなるよ」
と言われました。
だよね。やっぱり見れないや。


さて、初日から教官を激怒させてしまい幸先の悪いスタートを切った警察学校生活。
最初の3日間はひたすら入校式の練習でした。
入校4日目に入校式があるのです。
入校式とは学校で言う入学式とほぼ同じです。
並んで入場して、学校長と来賓の話を聞いて、名前を呼ばれたら返事をして、校歌を歌うやつです。
これを3日かけて練習します。

3日もかけて何を練習するの?
式の流れなんて2、3回やれば覚えるでしょ?
校歌だって音源のCD流すだけじゃないの?
って思いますよね。

起立、敬礼、着席、そして校歌と返事の練習を1日中するんですよ。

機敏な動きで起立、全員揃えての敬礼。
3番まである歌詞を半日で覚え、音程は無視してでも爆音で合唱。
名前を呼ばれて「はい」と返事をする。
たったこれだけのことを教官の厳しい指導を受けながら練習するのです。

全員の動きが揃っていないと罵声が飛んできます。
歌詞を間違えれば罵声が飛んできます。
どれだけ大きな声で返事をしても声が小さいと罵声が飛んでくるのでもはや返事は絶叫です。

するとどうでしょう。
喉が1日で切れます。
起立礼着席の繰り返しだけで筋肉痛になります。
知り合いに警察官がいる同期生は喉ケアグッズを持ってきていました。
持っていけと言われたんでしょうね。
気休めにしかなりませんが気休めにはなります。


1日中罵声を浴びながら立って礼して座って叫んでまた罵声を浴びる。
生まれて初めての環境でした。
この最初の地獄の時間が途切れる時間があります。

食事の時間です。

私がいた県警の警察学校は食堂があり、調理・配膳・片付けは業者に委託してありました。
メニューは学校給食の様に1ヶ月単位で決まっており、食事の時間に食堂に行くと全員分の配膳が済んだ状態で準備してあるのです。
今考えると業者すごい。

まぁこの食事がつらかった。

警察官はそもそもいつ通報があるのか分からない上に通報内容やタイミングによっては食べられない時間が続くこともあります。
なので食べられるときにサッと短時間で食べることが求められます。
しかも体力勝負な仕事でもあるので毎食しっかり食べておかなければ身体が持ちません。
要は早食いで大食いです。
食欲があろうがなかろうが短時間で食べ切ることも訓練なのです。

もちろん教官達はめちゃくちゃ食べるの早いです。
女性の教官も早いです。
1番ゆっくり食べることを許されているはずの学校長ですら早いです。
健康に悪い?でもそんなの関係ねぇ。
当然上司より食べるのが遅いと食事中ですら怒られます。
更に教官の席に近い学生は教官のお茶の減り具合も気にしなければいけません。
食べることだけに集中してはいけないのです。

最初の食事は今でも覚えています。
カレーでした。
とてもこんな量食べ切れないよ、という量でした。
最初に教官から「お前ら絶対に残すなよ」と釘を刺されました。
斜め前に座っていた男の子が泣きそうな顔で口に流し込んでました。
あ、こいつ辞めるな。となんとなく分かりました。
人の心が折れる瞬間を見た気がしました。


初日から怒鳴り散らかされ、唯一気が抜ける食事ですら苦行になり、これから半年間やっていける気がまるでしませんでした。
4日目、入校式を見にきた両親はゲッソリとした私の顔を見て色々察したようで
大変だろうけど頑張れよ
とだけ言って帰って行きました。

私が今度家に帰れるのは1ヶ月後です。



入校式のあと、すぐに3人辞めました。


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