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音楽の旅 #2

 2回目の旅は、1991年夏のロンドンから。パンク~ニューウェーブの大きなうねりが一段落した頃、今度は海の向こうから、ハウスの波が押し寄せて来ました。シカゴ、NYを震源地としたハウスミュージックは、あっと言う間に欧州に飛び火し、イギリスでもセカンド・サマー・オブ・ラブのムーブメントの中、
ロックにも大きな影響を与えました。そんな時期にプライマル・スクリームの「スクリーマデリカ」(左)は発表されたのです。
 まず、このアルバムから先に聴いてみましょう。ジミー・ミラーがプロデュースした曲と、アンディー・ウェザオールが手掛けた曲の、あまりの違いに戸惑うかもしれません。ただこれは、1枚のアルバムの中に単にサザン風味のロックナンバーと流行りのダンスナンバーを詰め込んだ、訳ではないのです。理由は後ほど。
では次に、右のT.REXの「電気の武者」(1971年)を聴いてみましょう。アルバム一枚を通して聴いた感じでは、先ほどのスクリーマデリカと、違和感はあまりないと思います。
 2つのアルバムに共通するものは、ある特有のグルーブ感ではないでしょうか。元々ロックが内包していたこのグルーブ感は、パンク~ニューウェーブの間に忘れられていたのです。パンク以降サウンド面で重要視されたのは、早さと重さでした。サウンドに、よりスピード感を求めるか、ヘビーな重量感を求めるか、あるいはどちらも追求するか。全くどちらも重視しない人たちもいました。
 ボビー・ギレスピーはこのアルバムでは、そのどれでもなく、しばらく忘れられていたグルーブ感を無意識に選んだのだと思います。そして、そのグルーブ感に新しい血を入れる事に成功しました。
ロックとハウスが出会う事で、異種配合が行われ、今までロックの歴史で無かったものが生まれたのです。
 それは、ダンスミュージックを濃縮したハウス由来の浮遊感と重力でした。クラブの空間で、電子音が体と心を解放させるような浮遊感を生み、それを強力に引き戻すかのようなベースラインとキックが、大音響で永遠に繰り返す。この感覚は、アンディー・ウェザオール抜きでは生まれなかったのかもしれません。
「スクリーマデリカ」はこれからも、歴史的名盤として語り継がれていくでしょう。






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