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ジェンダー平等について考えてみると。

世界経済フォーラムが2023年のジェンダーギャップ指数を発表した。
日本は146ヵ国中125位で、過去最低の順位だったらしい。
特に政治と経済の面で、日本は男女平等が実現できていないそうだ。
それって一体どういうことなんだろう?
そこで、私が生きてきた社会で実際に起きていることを書きながら
ジェンダー平等について少し考えてみたい。

日本の政治家は、昔からずっとおばさんやおばあさんばかり。
男性国会議員の比率は15.4%と、まだまだ男性が政治家になることは難しいようだ。

私が以前勤めていた上場企業でのできごとを思い出してみる。
たしかに、役員や管理職は女性ばかりだった。
女性は営業を、男性は事務を…という昔の体制があったこともあり
営業ができるようになった男性は評価されるけど
引き続き事務をやっている男性は評価されなかった。
「事務をやっている社員は評価しない」と言われて男性社員が落ち込んでいるのを見たことがある。
彼は、それなら営業をやりたいと申し出たそうだが、育児と仕事を両立している事務の男性社員の同僚に仕事の引継ぎを断られ、営業になることができなかったそうだ。

女性活躍推進法が施行されてから、さらに男性社員たちはとても大変そうに見えた。
女性の半分以下の給料にもかかわらず「男性活躍だよ!」といわれ
女性と同じレベルの仕事をするように求められていた。
そのうえ、家事や育児や介護を両立することでようやく輝く男性になれるらしいのだ。

家事や育児をするために、業務を効率化しなければならなかったし
子供が急に熱を出したときは、母親が対応できない場合が多く、
父親である男性社員が早退することが多かった。
そのたび女性上司は嫌な顔をしていた。
仕事のフォローをさせられる同僚の独身男性も、嫌な顔をしていて、
男性社員はいつも申し訳なさそうに帰っていった。
そんなことが何度もあった。

私の職場の女性上司は、古い時代の人だったので専業主夫のパートナーがいた。
身の回りのことはパートナーに任せて、いつも遅くまで残業をし、仕事に専念していた。子育ても今までずっと夫に任せきりにしてきたそうだ。
だから育児と仕事を両立しようとしている男性社員のことを理解するのは難しいようで、いつも腫れ物に触るようだった。

その女性上司は、会議や話し合いの中で感情が高まると、いつも泣いていた。
でも部下の男性がたまに少し、大きな声を出すだけで、男性は感情的だといい「これだから男は…」と言った。
男性社員はよく取引先の女性たちからセクハラっぽいことを言われたりしていたようだけど、いつも笑ってやり過ごしていた。
「たかがセクハラくらいで」という空気はあったように思う。
女の私には、よくわからなかった。

職場で育休に入る男性が重なった時がある。
業務を引き継いだ男性社員の一人は、業務が抱えきれなくなってついに会社に来れなくなった。
人が足りないことや育休制度の問題点を訴えたけど
「育休はお互い様だから。みんな頑張ってるよ~」と言われたらしい。

就活生向けのセミナーがあったので私も手伝いで参加したことがある。
それは男性の学生のみを集めた「男性懇談会」というものだった。
セミナーのなかで、輝く男性のモデルとして
結婚して、子育てをしながらキャリアを形成し、いきいきと働く実際の男性社員の紹介動画が流れていた。
「男性はライフステージによってキャリアに影響が出やすいが、この会社では様々な制度が使えるので、どのライフステージでもいきいきと働きやすい」というのが、伝えたかった内容のようだ。
私はそのとき「女性も結婚して、出産してライフステージは変わるのに、なぜ男性だけを集めてわざわざセミナーをするのだろう?」と思った。
結婚や出産が、キャリアに影響のない女性社員って、すごく得をしているのではないか…
男性はみんな、結婚して育児をしながら働かなければいけないのか…?
それが当たり前だという価値観を学生時代から受け入れなければならないのか…?と疑問に感じたことを今でも覚えている。

独身の若い女性社員は、仕事のストレスをはらすかのうようにいつもマッチングアプリで男の子を弄んでいた。
しかもそれを堂々と、男性社員の前でおもしろおかしく話しているのが印象的だった。でも私も、笑って聞いていた。

一方独身の若い男性社員たちは、女性と同じように働くことがつらくて
「結婚して仕事をやめたい」「専業主夫になりたい」といつも言っていた。
給料に差があるのに、同じように働くなんてモチベーションがあがらないのは当然だろう。

私たち女性社員は、入社してから5年が経つと自動的に昇進した。
でも、男の同期は昇進しなかった。そのことについて、少しおかしいなと思うことはあったけれど、深く考えないようにしていた。
それでも「これからは男性も女性と同じ仕事をする時代だ!」と上司は何度も何度も言っていた。

そもそも私たちが入社する頃、女性は全国転勤あり、男性は全国転勤なし、という選択肢しかなかった。女性は全国転勤があるから給料が高いということらしいのだが、同じ場所で同じ仕事をするにしては差がありすぎたように思う。男性社員たちはいつも必死だった。

ある時、女性の先輩が出産をした。
そして女性上司から課内の全員にCCを入れたメールが送られた。
「あなたは子供を出産したので一人前です!これから母親としての自覚をもって、より一層仕事に力を入れましょう!」みたいな内容だったと思う。
男性社員の誰かが育児休暇に入るときは何のねぎらいの言葉もないのに。
男性社員たちは、陰で「不愉快だ」というようなことを言っていたけど、特にこの件が問題になる事もなかった。

独身の男性社員が退職することになった。
新卒から10年働き、育休の人のフォローで一時期会社に来ることができなくなっていたあの彼だ。
彼の最終出社の日、夕礼で課の女性上司がみんなの前で言った言葉がある。

「プライベートで幸せになってね」

それが一体何を意味するメッセージだったのか、それは誰にもわからない。



もう気付いていると思いますがここまで書いたことは、全て私が経験してきたことを男女逆にして書いたものです。
どうでしょうか。
違和感を感じたのではないでしょうか。

でも、社会に出てからこの環境しか知らなければ、これが当たり前だと思ってしまいます。
足りないのは自分の能力や努力で、会社の制度や周囲の人たちの価値観を疑うことはありませんでした。
「こうあるべき」「こうしなければならない」
女性はもちろんですが、男性もこれらの「呪い」に知らず知らずのうちに苦しんでいると思います。

ジェンダー平等について考えるのはそう簡単ではないかもしれませんが
日常の小さな出来事に「これは本当にこうあるべき?」と疑問を投げかけ、
一人ひとりが自分なりに考えてみることが必要なのではないでしょうか。



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