見出し画像

読書日記240 【方舟】

夕木春央ゆうきはるおさんの作品。この作品を読むまで知らないかったと思ったらデビュー間もない方だったらしい。レビューや内容紹介などで書かれているけど『トロッコ問題』というのがベースになっている。

トロッコ問題とはトロッコ列車が暴走する。Aさんはトロッコのレール切り替えのところにいる。そもそもトロッコ列車は先の5人をはねてしまうレールを切り替えると5人に暴走したトロッコはなねないが切り替えた先のそもそもはねられなかった関係のない1人に被害がおよぶ。さてAさんはどうする?

といった問題で答えの出ない倫理観や心理を問う問題でミステリーにはよく使われる作法となっている。それがふんだんに盛り込まれている。

9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。

『夕木春央著 方舟 内容紹介』

地下の施設という密室で次々におこる殺人事件……犯人は9人の中にいる。被害者は増えていくので9人は徐々に減っていく。『金田一少年の事件簿』も「同級生もういないんじゃないか?問題」というのがあるくらい、みんないなくなってしまう。ただ名探偵は自身満々に少ない人間の中から名推理を発揮して難事件を解決する。

そして最大の難関なんだけど、物語を進行させる文章を書くという視点も変わらないために、「これはどうやって書かれたのか(記録されたのか?)」とう疑問が残るのはさておき、面白い内容になっている。(批判とかではありません)

この事件の動機という点がこのミステリーの「Why done it = なぜ犯行を行ったか」になっていて、大どんでん返しの中核部分になっている。ミステリーやSFというのはストーリーを楽しむために存在している。だから読み上げてスカッとするか、「あーそういうことか!」と合点(ガテン)かいけば細かいところなんてオッケーというのは暗黙の了解なので、そういう意味でこの本は合格点を超えて面白いミステリーということになる。


話は変わって、女性にミステリー作家って少ない気がする。アガサ・クリスティーから頭に思い浮かべるけど見当たらない。「現実的な人が女性が多いからミステリーを書く人って女性は少ないんだよ」いった作家がいたけど、確かに日本で有名なというと山村美紗と宮部みゆきと湊かなえ……と数えるぐらいしかいない感じも確かにする。岡部えつさんなんか至極のミステリーを書いたのに(『嘘を愛する女』)それからは書いていない。女性版の密室ミステリーなんかは読んでみたい気がする。

今年は正直ミステリーの最高峰である京極夏彦さんの最新作が17年ぶりに百鬼夜行シリーズを書かれた(『鵺の碑』)ので本に格闘していた。やっぱり冬の夜長にはミステリーがいいです。
(また、まとまってなくてすいません……)




この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?