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読書日記64

 大東京ビンボー生活マニュアル

 前川つかささんの漫画で描かれたのはもう30年以上前になる。僕がまだ高校生の時に流行っていて漫画を貰った。ヘタウマ作家さんで漫画というか画力がない分すごく表現方法が上手いとか、ネタが沢山あるとかそういった感じもなく本当にぼーっと描かれている不思議な作品で主人公は何時も彼女におごってもらったりしている。

 くずの人間か?というとそうでもなくて、普通に生活をしているんだけど、ボロアパートで本とかを読んでいるだけという本当に何もない世界感がある。この漫画をくれた友達も「買うまでいかないけど、読むと読み切っちゃう不思議な漫画なんだよな」と言っていた。まあくれたのは僕が貧乏だったからというのも大きいかもだけど。

 冒頭は主人公のコースケも彼女であるひろ子さんをアパートに呼ぶのに奮起するけど、そこら辺からはダラダラと生活が続いていく。今の女性でこういう生活を喜ぶ人いるのかな?と思うような生活で、村上春樹の「ノルウェイの森」のようなもっと前の生活(1970年ぐらい)を復元させたような生活をしていた。

 ジャズ喫茶や定食屋や古着屋さんなど不変的なアイテムや100円ショップのはしりを出してみたりする。お酒は好きじゃないのか居酒屋はあまり出さないけどそういうものを出していくと普通に東京の都内の生活そのものという感じになる。バブルがはじけていい意味でも悪い意味でもみんな貧乏化されていったので漫画もあまり思い出されることなく終わった感じがあった。人気は凄くでていて単行本も良く売れてた感じはある。

 喫茶店とか居酒屋とかもホントに色々あった時代で、僕もその当時入ったお店で本を読もうとしたら、女性マスターに「ここ本を読む喫茶店じゃないから飲んだら帰って」とハッキリ言われたことがあったり、居酒屋で「団体さんきたから帰って」と追い出されたなんてことはよくあった。チェーン店が出来て同じものが提供されて普通に時間がつぶせるようになってくるとそういう店は潰れていくし、残る店はチェーン店よりサービスがいいので残るしというので自然淘汰されていった。

 この主人公のコースケはビンボーを満喫している。テレビも網戸もない部屋で国木田独歩や井伏鱒二などを読み、ビデオデッキとテレビを借りて映画鑑賞を始めたりその空間はまるで切り取られた絵のようにそこに残っている。そこに深い過去なんてないんだけど懐かしく感じてしまう「何か」がある。郷愁とでもいうのかもしれない。

 もう少しネタがあって続きがあったら面白かったし、絵も上手くなっていたんだろうなと思える。ただ「それでいい」という読者に支えられているから電子書籍にもなっているんだろうなとは思う。kindleのunlimitedで読めるとわかって2冊ほど読んでいた。

 貧乏って「渇き」って表現がすごく近い感じがする。僕が宅建の勉強をしている時にわざわざマックやら図書館やら近くのデパートのフードコーナーみたいなところで勉強をしていた。勉強するならスタバとかコメダ珈琲とかの方がゆっくりできるんだけどあえてそうしていた。相方(おくさん)は嫌がっていたので待ち合わせとか1人で行けるときにそうしていた。学生やおばあさんたちが騒ぐ中で勉強していると嫌になる。それを我慢していると「渇き」に近い感覚が戻ってくる。

 お金がなくて始めてできたガールフレンドにプレゼントが買えずに馬鹿にされたことや、友達とご飯を食べて帰ろうと言われてお金がないので水だけでしのいだことやそういうことが想い出されてくると不思議に勉強が頭に入ってくる。人って不思議に渇水しないと吸収できなくなっているというか「今でいいや」と思うと前に進めない。まあ簡単にいえば変われないというのは「今に満足している」からなんだけどね。それもそれで幸せな感じがあるけど。

 その話を前の会社の人にしたら「僕も」というので一緒に勉強した人がいる。その頃の勉強方法は朝いちばんに図書館に入って一般席で勉強するというので、本も借りれるし勉強も普通にやってよかったので多く利用していた。僕は土日だけだったけど色々な人(特に学生)が勉強をスタスタと始めるしやる気も湧いてくる。その図書館は館内に喫茶店あったり近くにもあったりするところなんだけどそんなところ行っては身もふたもないので、ペットボトルを買って飲むそれもスーパーとかであらかじめ安いのを買う(コンビニで買ってしまうと気持ちが入らない)

 すると、「生活変えたい」という分泌液が出てくるw「おまえ貧乏だからちょっと立派になれよ」みたいなのが出てくると、なんかくだらない法律用語がスラスラと入ってくる。それで午後2時頃まで勉強して遅めの昼食を食べて帰るというのをしていた。それを会社の人に話すと「ぜひ一緒にやりたい」というので一緒にしていたらハマってしまって僕がその年に宅建合格してやめてしまった後も続けている。

 勉強しているのは今は司法書士で大学で法学部でたらしいけど、結局資格を何も取らないでいたらしく最初は僕と同じ宅建を勉強していた。僕の1年後に合格してそれからも続けている。コロナでできなくなったとラインがきていたが、また再開しているみたい。僕はちょっとやめているけどまた勉強したくなったら頑張ってみたい気もする。

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