日本BLドラマ「ポルノグラファー」第5話を本気で見た

さっそく最終話前にクライマックスが来そうな第5話。副題は偽りと真実のあいだで。

開始早々からとても不穏な空気。先生の小説の中の世界から始まり、ついに久住くんは大きな疑問を先生にぶちまけることになる。
久住くん「あの、俺の勘違いだったらいいんですけど……今やってるこの話ってこの、愛のいけにえの内容とほぼ同じですよね」
過去に書かれた先生の本と同じ内容を口述筆記させられていたと気付いてしまう。驚きからか動きが固まる先生。
「いいんですか、そういうの」「いいわけないじゃん」
久住くんに咎められた後、煙草の煙を吐いてバレたことに対する動揺を隠す。それから何かのスイッチを入れたかのように態度を硬化させるっていう一連の流れ。一瞬のことだけど先生の中の葛藤が垣間見えたような気がしてうわ~~~~ってなる。いいわけないじゃんって……悪い大人……しかし顔がかわいい……。

先生は冷めきった声で「あーあ、バレちゃった。最後まで分かんないと思ったんだけど」「どういうことですか?」
「嘘だよ。今月三本仕事入ってるってアレ、嘘なんだ。何の仕事も入ってない。今月どころか、もう一年以上ね。色々あって、僕……仕事干されててさ」
「じゃあ、俺が書き取ってたのって」
「全部一回書いたやつ」
こっ!!!!この、食い気味に言った先生の間の取り方がなかなか精神をえぐる。しかも平然とした、まさに久住くんに対してガツンと追い打ちをかけるような言い方で、何とも言えない性格の悪さっていうか、容赦のなさが逆に痛々しくてつらかったです。
「それ、何の意味があるんですか」「別に、なんにも。毎日やることなくてねえ……ふと思ったんだ。利き手の使えない作家やるの、面白いかなって」
笑ってる先生がどう見たって傷だらけ。
そして久住くんの方もどんどん心が打ちのめされていくのが表情の変化で分かる。
「君もさあ、楽しかったでしょう。この口述筆記ごっこ」

そう言って先生は、久住くんの目の前で原稿用紙をぐしゃぐしゃと丸める。本当に容赦がない。この容赦のなさは久住くんへのベクトルと同時に自らにも向けられていて、ああ……久住くんを断ち切るために、自分で自分の首を締めるようなことを……切な……。
「なら、よかったんじゃない」「じゃあ、俺が今まで書いてきた原稿って」
「ああ、全部捨てちゃった。丁度今朝、可燃ごみの日だったからまとめて。取っててもしょうがないしねえ。結構量があってさ、大変だったんだよ」
この後、久住くんの場合はやるせない感情が、じわじわ怒りの方向にシフトするのも若さって感じがしていいなと思った。
「ふざけんなよ!!」と先生に殴りかかる久住くん。ここでストップモーションになるのがいやらしいっていうか、うっかり制作サイドの性癖を感じ……。

殴られて吹っ飛んでしまったために眼鏡が無い先生。また空気を読まずに言いますけど、このシーンの先生の顔がすごいかわいい。顔がかわいいってすごい。
先生が「なんでキレてんの?」と言うなり、久住くんが掴みかかる。
「信じらんねえよ!よく平気で今までそんな嘘……俺の気持ちとか全然考えなかったんですか!」
先生と一緒にいる時間が楽しくて、先生の才能に触れて尊敬して、好きになって、妄想で散々いやらしいことして、しかも実際にもキスはしてて、最後にこんな仕打ちが待ってるなんて思いもしなかった久住くん。俺の気持ちとか全然考えなかったんですか、っていうセリフの言葉の端にある自分勝手な感じにも若さが。
自分はこんなにも先生のことで頭いっぱいになってるのに、俺のこと何にも考えてくれなかったのかって悲しくなっちゃう気持ちとか。
あとは先生の気まぐれな思い付きと思わせぶりな態度に振り回されただけ、って認めたくなかったのかも……と思ってまた切ない……無理……これは強く生きられない……。

そこで先生は「自分の立場分かってる?きみは加害者で、きみが僕に払うべき治療費をチャラにしてあげたわけだよ。こんな気まぐれのごっこ遊びくらい付き合ってくれてもいいんじゃない?」と急に久住くんとの関係をリセットしようとするのがつらい。口調にも余裕がなくなってるのも大変つらい。
久住くんが「今まで、ずっとそういう風に思ってたってことですか」と問いただすと、また食い気味に「みたいだね」と答えるのです。
こうして、自分のことをどこか他人事みたいに言ってのけるところも、なんかもう開始から全部つらいんですよね。こちとら頭を抱えっぱなし。
久住くん「ばかみたい……俺は、すげえ真剣に……先生の仕事手伝ってるって思ってたのに」「気付くと思わなかったんだ」

これは先生の本心。いやぁ先生マジさすがだなと思うのは、本心を織り交ぜながら嘘をついていくところ。偽りと真実があいまいになればなるほど、相手は深みにはまっていってしまう。まあ奇しくも今回は、先生自身までも深みにはまっちゃってるんだけど……つらの極み……。
「気付きますよ!俺、先生の作品ほぼ読破しましたから」

久住くんの言葉に思いっきり動揺を隠し切れていない先生の顔が秀逸すぎて一時停止しまくり案件。どこを切り取っても顔が良い。

きっと、ここまで自分の内側に踏み込もうとしてきたのは久住くんが初めてで、これ以上どうしたらいいか分からないっていうのが一番大きかったように見えました。いやはや、相手に深入りしない・自分にさせないようにと線引きをしていた先生にとって、パワーもとい若さで全てを押し切ろうとしてくる久住くんの存在はものすごい脅威だと改めて感じる。とんでもない相手をひっかけちゃったね、先生。

「あんな低俗な本より、読むべきものがあったと思うけど」と声を震わせながら言う先生。本当はそんなこと言いたくないだろうに。
「低俗とか高尚とか関係ないでしょう!俺は先生の作品が好きだったし、それにあんたのことよく知りたくて、だから……!」
そして久住くんは先生の肩に顔を預けて「好きなんです、木島さん」と切実な告白をする。先生と言わずに「木島理生」のことも好きっていうアピールが含まれている。そしてこの時の先生の顔がまた。
「好き?それって、僕とセックスしたいってこと?」

これはもう、自分で付いた嘘と真実に雁字搦めになっていた先生が、理性から一気に本能と欲求に針が振り切る瞬間。とにかく最高。最高のやつ。語彙とか根こそぎ奪われるやつ。
「いいよ。はめたい方?はめられたい方?」と矢継ぎ早に言いながら久住くんの洋服に手をかける先生。動揺しながらも抵抗し、身を捩らせて逃げる久住くんを後ろから服を剥ぐ。
久住くんに余裕がないように見せかけて、先生の方が余裕がありません。
「僕も人並みに罪悪感は持ち合わせているから、嘘をついたお詫びをさせてよ。……なんだ君、もう興奮してんじゃん。何想像した?」「煽らないでください……」

それでも全然やめない先生に「やめてください」と久住くんは振り返りざまに先生を殴ってしまう。ここの久住くんの顔も、先生の顔も見どころでしかなかったので何回か一時停止の案件。
「なんで?ずっと、こうしたかったんじゃないの」っていう先生のセリフが、そのまま先生にも突き刺さるという。
何度も妄想していたこと(「口でしてあげようか」)が現実になり、やめてとは言ったものの快楽に流されてしまう久住くん。先生にデスクに押し倒されて「いやらしい顔」とか色々言われてどんどん追い詰められていってしまう。

5話に至るまで何度も俳優としての本気を感じていましたが、このシーンは抜群にすごかったです。抜群の仕事。ここまで恥も外聞もかなぐり捨てた演技ができる俳優さんってすごく貴重な存在な気がする。なんかこのシーン見てたら役者っていう職業について妙に考えさせられちゃって気付いたら一時停止して5分くらい経ってた。危ない。話を戻します。
そして先生は久住くんの体を攻め立てていくんですが……あーーー!!!!かわいそう!!!!あまりにもかわいそうが過ぎる!!!!双方向にかわいそうなんだけど!!!!だって、こんな形でセックスしたいわけじゃないのに!!!!こんな、まるで、無理矢理の愛のないセックスみたい!!なんてこと!!!先生の愛が分かりづらい!!まぁわざと分かりづらくしてんだけど!!いやでもこんな痛々しいすれ違いある!?!?

事後、服を着る久住くん「頭、おかしいよ、あんた……」とすっかり絶望感に包まれる。
それから畳みかけるようにして「続きする?ベッドでしようよ」って言うのも、もうこれ以上やめて……先生ってば自分で自分のことものすごい傷つけ方してるから……って頭を抱えました。正直このへんもずっと頭を抱えてる。そして帰るという久住くんに「もう来ません、だよね?」とトドメの一撃。
久住くんが帰った後、「だから昨日、そう言ったんだ」とつぶやく。
私が昨日の言葉として思いつくのは「俺は、君に失望されたくない」なんですけど、それを踏まえて振り返るとやっぱり先生は久住くんのことが好きで、久住くんと「ずっとこうしたかった」んだなっていうのが分かる。無理矢理久住くんのことを犯すような真似をして改めて自覚させられてしまい「何なんだよ!!」と荒れ狂う先生。つらい。全面的につらくて死にそう。
そして久住くんの方も泣いちゃう。そして電車と共に走るっていう。若い。

 幾らか時間が経ち、久住くんに城戸から連絡がくる。「城戸……?」ってなる久住くんマジ正直でちょっと笑った。思い出した後のテンションの低さも含め。
城戸に会いに行き、これまでの経緯を話す久住くん。ほとぼりが冷めた久住くんは、確かに自分が加害者だったんだから文句言う筋合いなかったんだと冷静に言う。そして平気で嘘をつかれていたことがだいぶショックだったとも話していました。
ここで城戸に先生はなんで仕事を干されているのかを聞くと、実際はそうではなかった。先生はスランプに陥っていたわけです。1年も。
ある日から急に書けなくなるということは、小説が人生の全てだった先生にとってはかなりの打撃であり、極端に言えば死んだも同然。
そんな時に純粋に「先生は自分の才能を生かしていて尊敬している」なんていう久住くんの言葉はどんな風に響いたのかを考えると超しんどい。

これは個人的にちょっと真剣に考えちゃったところなので適当に読み飛ばしてください。今まで文章を書くことは苦に感じたことは無く、国語とか現代文なんかはこれと言って勉強したことなくてもどうにかなっちゃったクズ系人間だったけど、脚本とか色々と真剣に向き合って文章を書くようになってから急にピタッと指が止まってしまう瞬間が結構ある。
書きたいのに書けないし、書けないのに書きたいっていうループの中から抜け出すのはすっごく大変で、書きたいことを形にするのがこんなにも難しいんだなと最近やっと分かりました。ちなみに私が全然書けないなって時はとにかく寝るに限ります。リカバリー。

久住くんは「俺、先生の官能小説好きですよ。ほかの作家のも読んでみたけどなんか違うって言うか。品があって、骨格がしっかりしてる」と言うと、城戸が初めて先生の本を読んだときに感じた嫉妬するほどの才能と衝撃に「ずっと、今でも惚れてんだ」と告白してしまう。
ここも超激アツ……マジでやる気ならインディゴの気分もこのスタッフのまま実写化して……一人残らずそのままで……。

先生の様子を伺うために合鍵を使ったもののチェーンがかかっていたという城戸に、久住くんは「前から気になってたんですけど、何で合鍵持ってるんですか」と真っ向から聞く。
まあ、やましいことしかない城戸は自分から「すぐその手の邪推するのは良くないと思う」とか言っちゃって、久住くんが抱いていた疑念を確信にしてしまう。それで「キスしましたよね。それ以上も」と、かなり強い確信をもって城戸に言うんですけどこの根拠となるものはなんだったんだろう。あの二人の雰囲気だけで察してしまったのか、それとも先生の「はめたい方?はめられたい方?」っていう口振りか。
その後すぐに「俺もしたことあるので」と臆せずに言う久住くんに、ひどく動揺する城戸「マジかよあいつ……」と脱力する。
「奥さんとかお子さんとかいるんですよね」「ホントに、不倫とかそういうのじゃないから」「じゃあ、その鍵……俺に下さい」
すると城戸はめちゃくちゃ嫌そうに「ほら」と言って鍵を差し出す。

ここの久住くんが城戸から鍵を貰うシーンすっごい好きです。5話までで三本の指に入るほどの好き具合。情緒がこんなにも指先に表れてる映像ってあります?鍵をぎゅっと握りしめ、力強い目をして「俺は、チェーン切ってでも会ってきますから」と言って城戸の前から走り去るのです。
そのあと城戸は小さな声で「よろしく」と呟くんですけど、ここもすっごいよかった。椅子に座って「嫌な気分だ……」って遠くを見るのまで最高によかった。ずっと閉鎖された先生(と城戸)の世界の中に、急に入り込んできた久住くんの存在によって世界が揺るがされていくのがドラマチック。「先生が本当に苦しんでいるなら、俺は力になりたい」と、強い気持ちに突き動かされるように久住くんは先生の元へと走るのでした。

閉鎖されている場所ということは守られた安全な場所でもあり、皮肉にも自分で作り上げた世界に苦しめられている先生は、壁をぶっ壊そうとする久住くんの手を取るのか……っていう5話でした。
なんか随所に久住くんの若さを感じる。偽りと真実の間で揺れる先生があまりにもつらくて死にそうですが、久住くんの開けた風穴がどんどん広がっていくのがいいです。

ここまで好き勝手ベラベラ言ってるだけのnoteをお読みいただき、ありがとうございました!最後6話に続きます。

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