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ドローンが来ると、風が吹く プロジェクト報告書(2021.03.05)

本テキストおよび動画は、2021年3月に行われた令和2年度メディア芸術クリエイター育成支援事業 成果報告展「ENCOUNTERS」にて発表したものです。https://creators.j-mediaarts.jp/encounters-2021

2021年9月18〜20日の大西拓人個展「ドローンが来ると、風が吹く」開催にあたり、note掲載用に一部再編集したものを再掲いたします。

はじめに

本プロジェクトはドローンが飛ぶ際に起こす風に焦点をあてたプロジェクトである。風によって生まれるドローンを主体とするインタラクション、その中の様々な動きを観察するための作品郡を制作してきた。
ドローンが必然的に生み出す風は、飛行の副産物としてインタラクションの循環を起こしている。今回制作してきた作品群“Touchless Touch”では、「ドローンにとって風は触覚器として活用可能である」という提案をドローンに対して行なった。制作期間中の検証、2/6、7にVOU/棒(京都)で行なった体験検証展示を経て、インタラクションによる動き、それを引き出すための環境設計をより明確化することができたと考えている。
ここでは、本プロジェクトを通して得られた気づきをまとめた。再生されている記録・考察映像を見る際の参考資料として是非活用して頂きたい。

ドローンと風によるインタラクション集

風によるインタラクションフロー

ドローンは4つのプロペラの回転数を細かく変更しながら飛行を実現している。加速度センサー、ジャイロセンサー、赤外線センサー、カメラによる画像認識により、自身の姿勢を確認しながら、回転数の変化により補正を行う。姿勢と位置の保持だけでなく、移動や回転についても4つのプロペラの回転数のみで実現しており、ドローンにとって風は生命線であり、ドローンの主機能そのものでもあると言えるだろう。一方、この風はドローン自体の飛行を妨げる要素としても働く。屋外での飛行では、吹き付ける強風に邪魔され流されてしまうことも少なくない。屋内などの狭いスペースでは、自身の飛行するための風が床や様々なオブジェクトに跳ね返ることで、機体が煽られ傾くことになる。傾いた姿勢はプロペラの回転数を変化させることで補正されるが、その回転数の変化は新たな風を生み、また新たな跳ね返りの風を生み出す。このように、ドローンは自身の風による循環的なインタラクションフローの中に身を置くことになる。

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「風=触覚器」とするドローンへの提案

上記のインタラクションフローは、センサーの値からモーターの回転数を変化させるプログラム上の処理に過ぎないが、この一連の循環に意味と機能を見出し、ドローンにとっての風の活用方法を探るために、本プロジェクトでは「ドローンにとって風は触覚器として活用可能である」という仮説を立てた。

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ドローンにとっての風の役割は、風によって物に触れる、動かすといったアウトプット方向だけでなく、跳ね返る風を機体でセンシングすることで対象や状況を感じるためのインプットとしても利用可能である。この点から触覚器としての見立てを行い、その仮説を検証するための作品群として“Touchless Touch”の制作を行なってきた。

ドローンを主体とする風によるインタラクション

制作・検証中のものも含めて“Touchless Touch”ではいくつかのインタラクションパターンを試してきたが、対象としては風船とのインタラクション、ドローンとドローンのインタラクションの主に二つの方向で作品化を行い、風を触覚器と見立てたインタラクションの実証を目指している。
下記の画像は“Touchless Touch #2.1”の飛行の軌跡を視覚化したものである。この作品は、三台の定位置に飛行するドローンの真下を階段上に高度を上げながらもう一台のドローンが横切っていくというプログラミングで動作させている。本来直線であるはずのドローンの飛行が、上のドローンの風を受け上下方向に曲がっている様子を確認することができる。また、上に位置する三台のドローンについても下のドローンが通過する際に跳ね返った風の影響が動きの軌跡として表れている。

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インタラクションを観察する場としての展示

2021/02/06, 07の二日間で京都のVOU/棒にて体験検証展示を行なった。この展示では一日ごとに異なるシンプルな制御の作品を行うことで、ドローンと風、それによるインタラクションについて来場者とディスカッションを重ねることができた。

ドローンとそれによる風をテーマとした本作は、環境の微細な変化を動きに反映する。その変化を目の前にしながら作品について議論する「観察」という観賞体験は、今回の作品テーマに合致していたと感じている。
9月に開催の個展では体験検証展示を発展させた形での開催を予定している。来場いただく様々な方の視点とともに、ドローンと風によるインタラクションを観察できる場を提供したい。

大西拓人 初個展「ドローンが来ると、風が吹く」

https://www.gankagarou.com/show-item/202109onishitakuto/
2021年9月18日(土)~20日(月)12:00~20:00
@新宿眼科画廊 スペース地下

本プロジェクトでは、ドローンが飛ぶ際に起こる風をドローンにとっての触覚器と見立て、さまざまな飛行プログラムによる検証を行なってきました。その中では、ドローンの起こす風で生じるインタラクションにより、さまざまな動きを見出すことができます。
本展示では、ドローンの技術仕様とインタラクションを観察するための飛行プログラム"Touchless Touch"シリーズから、3つのパターンを実演。来場者とともに観察します。

※本プロジェクトは、令和2年度 メディア芸術クリエイター育成事業の支援を受けています。
http://creators.j-mediaarts.jp/

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