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僕よりネギの方が強いんだ、向上心が

ネギは収穫後も伸びるらしい。奥さんが教えてくれた。冷蔵庫に入れたネギが勝手に伸びていた、なんてこともあるらしい。

どの怪談でも日本人形の髪は大体伸びるが、ネギが伸びるのは初耳である。一体どこから栄養を得て成長しているのか。どう考えても僕より成長意欲が高い。新卒でITベンチャーでも立ち上げる気か。

就職活動中から今まで、社会人としての「成長」という言葉をよく聞くようになった。よくよく考えてみると、ビジネスだけではなく生活のあらゆる場面に「成長」という言葉が存在している。

人それぞれに「自分の理想の姿」があり、そこに近づくことを成長と呼ぶのだろう。自分自身に矢印を向けて「成長したい」と感じることはとても素晴らしいことだと思う。

ただ、他人に矢印を向けて「成長」を口にする人には気味悪さを感じる。就活をしている時もそうだった。会社説明会に行くと「成長できる職場です!」「一緒に成長しましょう!」などと唾を飛ばしながら連呼するツーブロックの採用担当者があちこちにいた。

この人たちが言う「成長」って一体何なのだろう。

仕事ができるようになること?
お金をたくさん稼ぐこと?
周りから一人前の社会人として認められること?


別に僕は成長したくて就職するわけではなかった。ほどほどの給料とほどほどのやりがいを感じられればそれで良かった。やりがいを感じるためにはある程度仕事ができるようにならないといけないが、それはあくまでやりがいを感じたいということであって、成長したいわけではない。

どこでそうなったのか、企業は就活生が「成長したくてたまらない人種」だと思っている。僕と企業の間の温度差がすごいのだ。フット後藤さん風に言うと「温度差すごすぎて窓ガラス結露しとるワ!」である。

ただ、説明会や選考で一緒になった就活生の中には「成長したいです!」と真っ直ぐな目で訴えるバイタリティモンスターがチラホラいた。たとえそれが面接官に媚びるためのハッタリだったとしても、ハッタリをかませるだけのバイタリティを擁している時点で半端ない。後ろ向きのボールめっちゃトラップする勢いである。その成長意欲はどこから生まれてくるのだろうといつも不思議だった。

僕は小さい頃から母に「欲がない」と言われて育ってきた。そのたび僕は「食欲が有り余ってるわ」と反抗的な目を向けていたが、きっと母は「成長意欲がない」と言いたかったのだろう。自分でも不思議だが、確かに無い。無いもんは無いので仕方がない。諦めてほしい。肉食いたい。


ネギの根っこを水に浸けておくと、伸びるスピードが増すらしい。早速水に浸けてみることにした。
もしかすると世界の食糧難に一石を投じられるかもしれない。SDGsだかコージーコーナーだか知らないが、偉いオヤジから表彰される可能性が出てきた。

ネギの本体ではなく根っこのヒゲだけが異様に伸び続けたら笑ってしまうな。
そうだとしても、僕よりは確実に成長意欲があるが。











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