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【vol.3】目指したい理想のファンコミュニティの姿「コミュニティの"憲法"が変わらなければ良い」

Bandai Namco Entertainment 021 Fundは、今年6月にブロックチェーン技術を活用したファンエコノミー事業を展開する株式会社Gaudiyに出資を行いました。

同月、バンダイナムコグループ各社へGaudiyを紹介するために、バンダイナムコエンターテインメント 代表取締役宮河とGaudiy CEO石川さんのお二人をお招きし、「Web3.0」や「ファンコミュニティ」をテーマに対談を行いました。

第1回「Gaudiyへ出資した理由」、第2回「エンタメにおけるWeb3.0の考え方」と公開してきまして、最後に第3回「目指したい理想のファンコミュニティの姿」を公開いたします。ぜひご一読くださいませ。
(過去の記事は下記からアクセス!)

風間
お二人ともありがとうございます。
エンターテインメントにおけるWeb3.0の考え方が良く分かってきました。ここまでのお話の中で断片的に触れていただいているかと思いますが、ここからは「これから目指したい理想のファンコミュニティの姿」を軸にお話をしていきたいと思います。

コンテンツやIPのファンの方々との関係性はどのような形が理想なのか、ご意見を伺っていこうと思います。まずは宮河さん、いかがでしょうか。

宮河
まず、僕はライブ会場が大好きなんです。
なぜかというと、インターネットやSNSの普及によって、趣味も個人で分断される世界になってきていますが、ライブ会場行くと、同じものが好きな人しかいないわけです。

例えば、ガンダムのことが知らない人はガンダム関連のライブ会場には来ないですよね。もしかしたら、ガンダムのコミュニティに「ガンダムなんか興味ないけど」と思いながら、喧嘩を売りに来る人はいるのかもしれないけど(笑)、本当にガンダムが好きな人が大半なわけです。そんな空間を作ることが理想だと考えています。僕がファンのコミュニティを作りたい、IPごとのメタバースにしたいと話をしているのは、そこに理由があるんです。

好きなものが一緒である心地良い空間があるというのはとても大切だと感じています。僕は60年代 のブリティッシュロックバンドのライブに行くんですが、60歳の親父しかいないんです。でもそれが心地いい。その場にいる全員が同じものを好きでいるという空間がすごく心地良いと知っているから、そんな場所を世の中にたくさん作ってあげたいと考えています。

石川さん
宮河さんのおっしゃる通り、同じ方向を向いているコミュニティはとても居心地がいいと思いますし、それこそがいま本当に求められているなと感じています。

今のSNSのような広いコミュニティの場合、みんながどれだけ「かわいいか」「カッコいいか」「素敵に見せるか」という話がメインになっていて、それでみんな疲弊してしまっているんです。誹謗中傷で疲弊しているわけではなくて、みんなが良い部分しかSNSに出さないからなんです。

みんなが四六時中キラキラしているわけないじゃないですか。人間なのでサボるし、良いご飯ばかり食べているわけではないですよね。でも、みんなが良い一面しか出さないので、それを見た人は「自分とギャップがある」と感じてしまう。ギャップを埋めようと、さらに良い部分の切り取りで戦い合って、疲弊する空間になってしまっている。

何が言いたいかというと、好きなことが同じ人たちで集まって、同じ方向を向いているコミュニティはそういった戦い合いが起こらなくて、今のSNSのような広いコミュニティに比べて精神的にも良いということです。

ブロックチェーンを活用すれば、そのコミュニティに対して還元の要素も加わりますし、おじいちゃんやおばあちゃんがブロックチェーンゲームをやっているフィリピンのように、その人達の生活を支えるようにもなります。

ファンであるという精神的な一面だけではなくて、生きていくこと自体に対しての社会的なインフラにもなりつつあるというのがWeb3.0の本質ですので、社会的にもすごい価値があることなんじゃないかなと思っています。

風間
ありがとうございます。

前のテーマでもお話をいただいたファンへの還元というお話がまた出てきました。例えば、アイドルマスターやガンダムのIPファンのコミュニティがあったとして、そこに還元される仕組みを導入した時、儲けを得ようという目的で、好きではないのにコミュニティ参加してくる人たちがいる気がしています。

そうなると、全員が同じベクトルで居心地の良かったコミュニティが、そうではなくなってしまうと思うのですが、それを防ぐ方法はあるのでしょうか。本当に居心地の良い空間を作るためには必要なことだと感じています。

宮河
石川さんのお話を聞いていて、ひとつ思いついたんですが、そういう怪しげな人が入ってこないためのアイデアで、例えばガンダムの質問が100問出てきて「どれがゲルググですか?」といったことを聞くんです。それが答えられなかったら、コミュニティに入れないという仕組みを作ったら怪しい人は入ってこない。

石川さん
最近は、それを「Proof of Learn」と呼んでいて、学ぶという形で証明しないといけないという考え方があります。

そもそも、ブロックチェーンだとプログラミングができますので、様々な形でガバナンスを設計することができます。先ほどの宮河さんのアイデアも良いなと思っていまして、様々な発想を試す中で、サービス毎に良いバランスを探るというのが重要だと考えています。

というのも、バランスという意味では投機性も実は大事なんです。この社会において、お金というものは人々がモノを作るための手段であり、前段で宮河さんからも「血液」というお話がありましたが、大事な部分なんですよね。

動画クリエイターも含めて、クリエイティブが盛り上がっている背景には「稼げる」という要素があります。僕は、これは悪ではないと思うんです。ただ、それを過度に強くしてしまうと、バランスが崩れてしまうので、プログラミングで様々なパターンを試しながらバランスを調整する必要があります。

例えば、ガンダムのコミュニティは「常に法律が変わります」といったルールを発信して、バランスを見ながら、毎日プログラミングで調整するのが良いのではないでしょうか。プログラミングですので、翌日アップデートすれば、翌日からその法律になります。試行錯誤の中で理想的なものを徐々に形作れるんじゃないかなと考えています。

宮河
今のお話はすごく大切だと思いました。
法律なら頻繁に変えればいいと考えています。

ただ、憲法が変わらなければ良いんです。ガンダムという作品も実は同じなんです。ガンダム作品を作る際に、「ガンダムには憲法がある」と監督によく話をしています。1つは「ガンダムというロボットが出てくること」、そして「戦争状態であること」、最後に「青春群像劇であること」。この3つさえ守った後は、好きにやって良いという憲法です。それと同じで、コミュニティの「憲法は守ってね」でも「細かい法律は明日からめちゃくちゃ変わりますよ」という前提で良いと思っています。

もう一点、僕はIPのコミュニティの中での経済圏を実現したいと考えています。「仕事するより、ガンプラを作っていたい」という人がガンプラを作って、ある程度の収入を得て、それで生活できればこんな素敵なことはないと考えているんです。そういう風なことがIPで行われる時代にはなってほしいなと思っています。

石川さん
宮河さんのお考えについては、ブロックチェーンを活用すればIPの権利が保全された上でガンプラを作った人に還元できる仕組みを作れます。
面白い事例として、二次創作のコミュニティの収益は95%がインナーで回るというデータがあったりします。なので、ガンプラで稼いだお金は恐らくガンダム関連で使われるのではないかなと思います。推し活ってそういうことだと思うんですよね。

これを前提にすると、ユーザーがコミュニティでお金を稼いだ時、ユーザー自身の生活費に使われることもある一方で、自分たちが提供しているコンテンツにもさらにお金を払ってくれる。そうすると、クリエイターがさらにコンテンツを提供し続ける資源となって、コミュニティをより大きくできるビジョンが見えるのかなと感じています。

宮河
そうですよね。ガンプラを作ったお金でご飯は食べるかもしれないけれど、ガンプラで稼いだお金で車を買う人はいない感覚がありますよね。やっぱり、ガンプラ買うわけです。そのサイクルでコミュニティ内の経済圏が回っていく。

石川さん
このサイクルで自分が生活できている感覚を持てれば、もっと強いインセンティブとして機能するので、ずっとファンであり続けてくれると思います。

風間
お二人ともありがとうございます。
そろそろお時間となりますので、締めに移りたいと思います。
石川さん、本日の対談いかがでしたか。

石川さん
Web3.0とかブロックチェーンとか怪しいし、よく分からないと感じている方が多いと思いますが、意外にすごくエモい技術です。エンターテインメント業界の人たちがそれを活用することによって、本当にすごい世界を作れるような、本当に強みになるような技術だと考えているので、毛嫌いせずに理解はしようと思ってくれればうれしいです。
直接、僕にご連絡いただいても良いです。ぜひ自分たちの敵ではなく、味方になる技術なんだと思っていただけると嬉しいなと思います。

風間
ありがとうございます。宮河さんはいかがでしたか。

宮河
僕は40年以上このバンダイナムコグループにいるんですが、いま初めての経験をしています。これまでは、例えばフィギュアを作るとして、原型師というクリエイティブのパートナーと会話をしてコンテンツを形作っていました。キャラクターデザインでも同じで、その道のクリエイティブのパートナーと会話する。

この出資を機に石川さんと話をしていて、面白いなと思うのは「こういうのができないの?」という会話をする「技術」のパートナーが生まれたこと。僕はこの40年で初めてなんです。サラリーマンやっている間にこんな時代来るとは思わなかったです。

石川さん
ありがとうございます。

風間
これからもパートナーとしての石川さん、そしてGaudiyさんと長くお付き合いできればと考えております。引き続きよろしくお願いいたします。
本日は、長いお時間お話をいただきありがとうございました。

宮河
楽しかったです。ありがとうございました。

石川さん
ありがとうございました。

おわり

■「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」概要

  • 主な投資対象
    国内外のブロックチェーン、VR/AR/xR、AIなどの技術を活用したエンターテインメントに関連するプロダクトやサービスの提供、また、メタバース、Web3.0関連の事業を行うスタートアップ企業など

  • 投資対象ステージ
    プレシードからレイターステージまでの幅広い成長ステージの企業を対象

  • 投資規模
    年間10億円(3年間で30億円)程度の出資を想定

  • チケットサイズ
    数千万円~5億円

  • 公式ホームページ
    https://021fund.bn-ent.net/(日本語)
    https://021fund.bn-ent.net/en/(英語)