見出し画像

【大学生筆】学生のChatGPT使用に対して今後考えられる大学側の対策

 2022年11月に一般公開され、その後急速に普及していったChatGPT。もちろんそれは大学生も例外ではなく、SNSを見ても、ChatGPTを使ってみたという投稿をしている人は少なくありません。
 そして、大学の春学期が始まる前後(3月)には、ChatGPTの使用に関して対応方針を打ち出す大学も多々見受けられました。

参考:ChatGPT/生成AIへの対応を表明した国内の大学一覧(Pogo / gmorikiさん)


 このように、大学界隈にも旋風を巻き起こしているChatGPT。その中で、最もその影響を受けると考えられるのは主にレポート課題でしょう。ChatGPTは生成AIですから、学生がレポート課題を作成するときにそれを使用しようとすることは容易に想像できます。
 当然、大学側としても単に使用禁止を通知するだけでなく、何らかの不正防止策を講じてくるはずです。では、具体的にいかなる方策が採られるのか、現大学生として考えてみたいと思います。

 まず考えられるのはレポート課題の内容について、「ただし、授業で説明した(扱った)ものに限る」という制約をかけることで、ChatGPTの使用を妨げるというものです【例1】。

例1)中国で行われていた纏足という風習と当時の社会事情との関係について、4000字以上であなたの見解を述べなさい。ただし、参考文献は授業で挙げたものその他教員の許可を得たものに限る。

 これは、これまでもなされていた、出席点がない授業において学生に間接的に出席を強制する手法の派生形です。ChatGPTにレポートを書かせるだけなら可能でしょうが、その内容を授業中扱われたことに限定されると難しくなると思います。このような制約を加えることで、ChatGPTの使用を間接的に妨げてくることが考えられます。

 さらに、ポストコロナとあってその数は減りつつあります、オンライン試験におけるChatGPTの使用に対しても、回答内容を授業で説明したものに限定することで、ある程度対処できると思います【例2】。

例2)人間の身体に疲労が貯まるメカニズムとその回復方法について指定のWord上に書き、試験時間終了までに提出しなさい。ただし、その内容は授業で扱ったもののみとし、それ以外の内容は採点時に一切評価しないこととする。

 
次に、レポート課題で成績評価をする場合、それに加えてその内容を基にしたプレゼンを課すという、言わばレポート課題のマルチ課題化です。

 そもそも、大学側がChatGPTの使用を禁止する理由はChatGPTを使用することにより、学生が自身で考えることを放棄することへの危惧にあると思います。
 それならば、プレゼンという他人に代替させることができない課題をセットで課すことで、少なくともChatGPTが作成したものを真剣に検討せざるを得なくなります。そうすることで、学生の思考の完全放棄という事態は免れられるのではないかというわけです。

 また、ChatGPT使用への対策云々以前に、単にレポート課題を書くだけ書いて終わりというのは学問上正しいのかというと疑問であり、その点、自分自身の見解について他の学生と意見交流が図れるプレゼンを課すことは学問的にも有意義ではないかと言えます。

 当該方法をとる場合、少人数授業ではレポート課題を作成し、その後発表するという形態が採れるかと思います。
 しかし、大人数の授業だと時間的都合上、各人でプレゼンした動画を撮影して提出し、その後学生に他の学生のそれを閲覧させて感想文を書かせるという形態を採らざるを得ないでしょう。

 なお、お察しの通り、かのようにすると学生側からすると事実上、課題の難化であり、また、先生側からすると負担の増加になります。ゆえに、採用される可能性がないことはないでしょうが、それが多くの授業で普及するかというと、私自身も疑問ではあります。

 最後に、そもそも大学側も開き直って、使用自体を直接的に規制することはしないが、ChatGPTで作成したレポート課題を自己名義で提出している以上、その責任もchatGPTではなく、自分自身に帰するとすることにより、不正行為を排除していくのではないか、というものです。

 実は、既に多くの大学で剽窃検知ソフトが導入されており、丸パクリ行為は隠し通せないようになっています。そして、ChatGPTも完全に独自の見解を生成しているわけではありません。
 それゆえ、ChatGPTが参考文献を明示せずにレポートを作成し、学生がそのまま提出した場合、盗用行為として大学側から当該学期の全単位不認定等の重いペナルティを受けることになります。

 また、先生側も予めChatGPTを使って課題レポート例を作成しておけば、学生が参考文献を明示しているか否かに関わりなく、剽窃検知ソフトでChatGPTが作成した文章との類似性を判断できるでしょう。

 不正発見の正確性や先生方の負担との兼ね合いの観点から、私個人としては、剽窃検知ソフトを使用することにより、事後的に不正行為を排除するという対処法に落ち着くのではないかと考えます。
 しかし、このように剽窃検知ソフトでの対応がメインとされるのならば、決して今までのレポート課題で起こる不正行為への対応策と何ら変わりありません。

 そう、よくよく考えてみれば、大学のレポート課題での不正に限れば、ChatGPTの登場は何も革新的なものではありません。課題を代わりにこなしてくれるという点では、友達との協力行為やレポート代行業者の派生形態に過ぎないのです。そうだとすれば、かかる不正への新たな対応策に関する盛り上がりも一時の流行りで終わるのではないでしょうか。

 以上の点を踏まえますと、タイトルに『今後考えられる大学側の対策』と記しましたが、未だ取り入れられていない大学への剽窃検知ソフトの導入が進展する程度に過ぎず、ChatGPTの登場によって大学の不正対策が抜本的に変わることはないだろう、と私は考えています。

冒頭写真:pixabay(2023/4/22)

サポートを頂けるのも嬉しいですが、スキ・コメントをして頂けるとすごく励みになります!