見出し画像

就活のガクチカの流行ってファッションのように循環している気がする。

 始めに、私の進路は民間ではないし、また、学生の間で人気のガクチカであるからといってそれが必ずしも企業の採用担当者に良く評価されているとは限らないことを断っておく。(要するに、信憑性は世間話レベルだと思ってほしい)

 その上で、大学で周りの話を聞いていると、学生に人気なガクチカってあたかもファッションのように循環している気がするのだ。


1. 学歴

 まず、令和以前の時代、これを学生間ではついつい”昔は”と呼んでしまうが、その”昔は”ガクチカ云々はさして関係なく学歴こそ至高だったというのが共通認識になっている感じがする。


2. 副サークル長・塾バイト

 それが、ここ数年になって「学歴だけではその人の真の能力は測れない、もっと学生時代に力を入れたこと(=ガクチカ)にも着目すべきだ」という言説が支持を集めた。

 そして、私の知る限り、一番初めに学生の間でクローズアップされたガクチカは「サークルの役職」である。トップという立場にてチームをまとめ上げたという経験談が企業で評価されると学生間で広く認識されたようで、一部では役職の取り合いになったらしい。

 ところが、人間、役職に就いたという実績は欲しい一方で、面倒くさい仕事は担いたくないわけで、また、役職の需要が増加したこともあり、形だけの役職である「副サークル長」が当時、爆増した。しかし、それによって相対的にサークルで役職付きだったというガクチカの希少価値が下がってしまったというのがやがて学生間の共通認識となった。

 その後、副サークル長人気に少し遅れて「塾バイト」人気が勃発したらしい。何でも、人に物事を分かりやすく伝えるという能力をアピールできると学生間で見なされたらしく、また、高校時代の経験をそのまま活用できるとあって一躍ブームとなった。(今でも塾バイトの宣伝文句に使われている)

 しかしながら、先輩曰く塾バイトネタは皆話す内容が似通ってしまって他の学生との差異を出しにくく、ネタとしてマンネリ化したとあって全盛期ほど言われなくなったとか。

 以上は私が1年生だったときに4年生の先輩から聞いた話である(つまり5,6年前?)。


3. 資格取得・留学

 その後、ここ数年は資格取得や留学がにわかに流行っていた気がする。

 前者は副サークル長のような実体の有無が怪しい指標ではなく、客観的に実力を評価してもらえるとの期待や資格で得た知識が仕事に生きるとの意識から人気を誇ったのだと思う。
 しかし、FPや簿記3級といったそこまで難易度が高くない資格だとアピール力に欠けるし、これを全面に出し過ぎると、むしろ資格取得を必死に頑張ったという割にはその程度なのかと思われ、逆に悪い印象を与えかねない。かと言って、司法試験や税理士試験といった超難関資格なら期待通りの威力を発揮するのだろうが、そのような独占業務のある資格試験に受かったのにあえて新卒一括採用で民間企業に就職する人はいないだろう。

 学生の間に今でも根強い資格信奉は残っているが、結局、資格取得はガクチカとしてコスパが悪く、資格は例えば不動産業を志望する学生が宅建士を取るような形で間接的に志望度をアピールする等、サブウェポン(補助的なガクチカ)にしかならないというのが大勢の見立てだと思う。

 後者、留学についてはコロナ禍があったため何とも言い難いが、留学それ自体に魅力を感じて行く人はともかく、ガクチカ目的で留学する人は学生時代にどこか上手くいかなかった点を感じており、それを挽回するべく休学して/卒業を遅らせて留学するという人が少なくない印象がある。
 ゆえに、はなっからガクチカのために留学を選ぶ人はあまりおらず、自分自身のコンプレックスの埋め合わせとして用いられている印象がある。

 

4. スタバ

 ここ1年は何故か「スタバでのバイト経験は就活に強い!」との流説が広まった。どうもスタバに採用される人材はルックスやコミュニケーション能力など総合的に優れている人材が多く、企業の採用担当者に「スタバお墨付き」の人材として評価してもらえるとのことらしい。

 しかしながら、「スタバしか勝たん!」論の”第1期生”は未だ誕生していないため、今年ないし来年の就活事情を色んな人に聞いてみないとその真相は分からない。私としては「スタバのお墨付き」は他のバイトに移る際に発揮する程度のものだと思っているが。


5. 適性検査・長期インターン

 このように、学歴という学力重視の指標に始まり、それが高校までの受験勉強の成果ではなく学生時代を評価すべきとの理由からサークル活動やバイトに変わり、さらに、より客観的な指標をと資格取得が注目されたように、学生の間で有力とされるガクチカは年々変遷している。そして、今、再び過去に復古しようとしている印象がある。

 それは企業による「適性検査」の導入だ。”SPI”といったようなものが有名だが、これらは共通テスト類似の問題を学生に再度受験させ、その基礎学力や事務処理能力の評価を採用に当たっての足切りとするものである。そして、この検査の評価は学歴に比例しているそうなので、結局、学歴による評価に戻りつつあると言えるのである。
(ただし、学歴と違ってSPIの点数は大学生活で挽回することが可能であり、ゆえに、旧来と同じく学歴偏重だとする主張は批判は妥当しない)

Webテストでは大学入試のようにそこまで厳格に行われていないため、受験代行などの問題が起こっている。また、ネット上ではWebテストの解答集が売買されている。
これらは不正行為だと批判される声が多数派の一方で、社会人になる上で自身に足りない部分を他者の協力により埋め合わせる能力も必要であるから問題視する必要がないという意見もある。

 また、ここ最近は就活に効果覿面として低学年の頃から、実際の業務に触れることができる「長期インターン」に従事する学生が増えた。企業としてもやる気のある人材に映るのであろう。実際、私の先輩で優良企業に内定した方もこのガクチカが勝ち筋になったと力説している。

 しかしながら、長期インターンをする学生が増えるにつれ、徐々に長期インターンを経験していることは他の学生との差別化要素ではなく、もはや当たり前になりつつある。

 結果、長期インターンは通常の就職活動の一つに組み込まれていきそうで、ガクチカという扱いではなくなっていきそうだ。また、長期インターンが就活の一環と見なされることで、さらに就活の早期化・長期化が進むことだろう。

関連記事


自著の宣伝


サポートを頂けるのも嬉しいですが、スキ・コメントをして頂けるとすごく励みになります!