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大学生はもはや人生の夏休みではない。就職活動の「超」早期化について。

 近年、就職活動の前倒しが急速に進んでいます。
 私の親世代の頃は新4年生のいわゆる「解禁日」(3月1日)から就活に取り組み始めても全然遅くなかったそうです。しかしながら、今の大学生においては、かのタイミングから始める人は少数派で、3月1日は新3年生が就活に向き合い始める一つの区切りとして機能しつつあります。

 そして、その分内定が決まる時期も早まっており、私の周りでは、新4年生の3月1日(解禁日)までにどこかしらの内定が得られていないとマズいという空気感です。客観的に見ましても、約2割の学生が同段階までに内定を確保しています(NHK)。すなわち、完全に就活が1年間前倒しされているのです。

 さらに、優秀な人は3年生の年越しまでに内定を確保しており、外資系志望の非常に優秀な人ですと3年生の夏頃には事実上の内定を得ていることもあります。

 その上、現3年生から、今まで暗黙の了解とされていたインターンシップを通じた採用が公に認められるようになりました(経産省)。以前より内々にかかる仕組みが利用されてはいましたが、これにより、解禁日前に行われるインターンシップの重要性がさらに増すと考えられます。


 他にも、近時、就活において「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)が重視されるようになっています。そして、多くの学生がガクチカ作りに力を入れた結果、単なるバイト経験やサークルの副幹事長といったものでは十分とは言えず、質にもこだわったガクチカが求められるようになっていると感じます。

 以上のような事情により、私の友人の中には、就活を成功させるため、以下のような学生生活を送っている人も少なからずいます。

大学1年次

春学期中に進路を民間に決定。
ガクチカになり得るサークルや英語を使うバイト(外国人と関わることがある職場)に取り組みつつ、夏休み~秋学期から低学年より入れるインターンを体験。

大学2年次

ガクチカにすべく長期インターンに取り組む。
TOEICといった資格も勉強する。
秋学期過ぎより業界・企業研究や自己分析を開始。

大学3年次

今まで培ってきたものを活用し、サマーインターンのエントリーシートを作成。様々な説明会に出席し、情報収集。

 これを見てわかる通り、就活が大分前倒しされ、また、就活において求められるモノが多様化したことで、大学1,2年生の期間が事実上就活の準備期間となりつつあります。言わば、受験日が1年早められたため、受験勉強も1年早く始めなければならなくなった感じです。

 正直、こうなると就活において学業面の頑張りはさらに評価できなくなるのではないかと危惧しています。1,2年生ないし3年生前半の段階ではまだ専攻分野について深く学べていないためです。
 事実、私はゼミが2年生の秋学期開始でしたし、専攻分野や学部によっては3年生の春学期開始のところもあります。

 さらに、ゼミで中心的な役割を担い始めるのは、通常4年生からで、早くても3年生の秋学期からです。この時期には就活も既に佳境に入っていますから、いくらゼミで努力しようとも就活においては無意味同然です。

 そうなると、就活では必然的に学問分野以外で評価しなければならなくなります。しかしながら、学問分野で評価することが不可能なら、はたして新卒採用の対象を「大学」生とする必要があるのか疑問に思います。
(例えば、※GPAを用いれば全く評価できないことはないのかもしれません。しかし、科目間の難易度の差といった点からGPAは1つの指標以上にはなり得ず、GPAが算出されていることをもって直ちに学問分野において努力した者もしっかりと評価できるとするのは早計だと考えます。)

※GPA:大学の成績を数値化したもの。"Grade Point Average"の略。
例えば、4(=秀/A+)、3(=優/A)、2(=良/B)、1(=可/C)という段階に分けて各科目の成績が数値にて評価される。

 もちろん、様々な活動に取り組むことができるのも大学生の特権です。それゆえ、学問以外、すなわち課外活動を通じて評価されること自体は全く問題ないと思います。

 しかしながら、やはり学生の本分は学業です。そうだとすれば、文理問わず、大学にとある分野を専攻したいとの意志をもって入学し、興味をもった専攻分野を深く学修したような人の頑張りもまた十分評価対象とされるようなシステムになってほしいと思います。


参考:内定率は74.1% 去年より増え例年並みで推移|NHK就活応援ニュースゼミ
現大学2年生より、インターンシップのあり方が変わります! (METI/経済産業省)(ともに2023/7/23)



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