指圧は治療?慰安?
【SHIATSU TALKS #15 】
結論
まずは最初に結論です。
我々は、発足から一貫して、指圧は医療であると定義しています。それを前提にお伝えすると、指圧が治療なのか慰安なのか議論に関しては、"治療"だと考えています。
ここでは、「治療か慰安かは、お客さんや患者さんが決めればいい」というような、投げやりな発言を敢えてしません。指圧は"治療"です。
しかし、我々の業界では、
「駅前のリラクゼーションは慰安だよ」
とか、
「うちの治療は骨格矯正の理論に基づいて…」
など、治療か慰安なのかという議論が多くなされます。
もしかしたら、「君たちのやってることは全て慰安だよ」と仰る整形外科の先生もいらっしゃるかもしれません。
こんな状況を踏まえて、もう少し僕の話にお付き合いください。
治療と慰安の違いって何?
この議題を考えるときに、二つの違いを定義する必要があると思います。
僕らもわかっているようで、わかっていないこの違い。
少し考えていきましょう。
最初に、意味を調べてみました。
ふむふむ。なんとなくわかっていましたよね?
では、慰安はどうでしょうか。
なるほどね。
この二つを見比べてわかる点は、
治療→症状や結果に対して行われる行為
慰安→相手の感情に対して行われる行為
だということでしょうか。
例えば、慰安は僕らの業界ではなくても成立します。
美容院で髪を切ってもらいながら美容師さんと楽しくお話しすることが、その人にとっての慰安かもしれませんし、銀座のクラブで綺麗な女性とお酒を飲むことが慰安になるのかもしれません。
しかし、腰の手術が必要な人に対して、慰安を繰り返しても、必ず治療が必要となるわけで、改善には繋がりません。
では、治療と慰安は完全に畑が違うのでしょうか?
僕はこのへんがとってもモヤモヤするんですよ。
なぜなら、今まで施術をするなかで、慰安と治療は隣り合わせ、いや、多少なりともリンクしているように感じているからなんです。
治療と慰安の共通点
さて、もやもやを解決するためにも、今度は共通しているところを探してみましょう。
なんとなくですが、治療と慰安がまったく違うモノとは思えないという方は多いはず。
はい。僕もその中の1人です。
例えばこんなお話があります。
ある腰痛の女性。その方は10年以上痛みに苦しんでいました。整形外科に行っても治らず、マッサージからカイロプラクティック、整体、怪しい気功のようなものまで試しましたが、なかなか改善しませんでした。ある時、大好きな彼氏ができると、あら不思議、腰痛が治ったんです。
これは僕の作り話ではありません。実話です。
ある80代の方。膝の痛みがひどく、家から一歩も出れなくなってしまいました。どんどん足の筋力がなくなり、お家の中で転倒も目立ってきました。
訪問リハビリの先生や指圧師が施術をしてもあまり改善が見られません。痛いので散歩に促しても頭を縦に振りません。ある時、小学生の孫がお散歩に誘ってくれました。かわいい孫と歩けるならと最初は渋々付き合っていましたが、不思議と膝の痛みは減り、今では日課になっています。
これも実話です。
少し話を端折っているので、胡散臭く聞こえるかもしれませんが、ココロと身体は繋がっているということがよくわかるお話だと思うんですね。
さて、この二つの話を理解するための明確なキーワードがあります。
それは、"プラセボ(プラシーボ)"。
例えば、子供に「風邪薬だよ」とビタミンCの錠剤を渡して飲ませると風邪が治るだとか、名医と呼ばれる先生に話を聞いてもらうだけで症状が良くなるなど、要は"気のせい"ってことです。
でも、この"気のせい"を舐めてはいけません。
場合によっては、何の薬よりも効果を示すことがあるからです。
病は気から。
では、このプラセボは慰安でしょうか?治療でしょうか?
気のせい(感情)だけど、症状が良くなる(結果)。
慰安と治療の両方を含んでいますよね。
僕は、このプラセボを最大限に活かすことが我々指圧師の仕事だと思っています。
技術や知識は勿論大事。
しかし、それだけでは、プラセボの効果を十分に発揮することはできません。
施術者の身なり、話し方、聞き方、醸し出される雰囲気、色々なものが混ざり合わさって、プラセボの効果は上がっていきます。
お客さんが施術をしてほしいのは、技術や知識に踏ん反り返っている偉そうな"先生"よりも、よく話を聞いて、丁寧に施術をしてくれる一年目のあなたかもしれません。
是非、今一度、指圧師が何をしなければいけないのか考えていただきたい。
そして、プラセボを理解することが指圧師として間違いのない成功の近道だと思っています。
(解剖学+生理学+疾患の知識)×プラセボ
=施術の結果
是非、覚えて帰っていただきたい方程式です。
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