アイドル、デビューしてから卒業までを振り返る。
アイドルというものを、卒業してからというか卒業を考え始めた頃から妙に達観視するようになったと思う。
今日は、私が前世で別人として存在させていただいていたアイドルグループで、3期生がデビューする日だ。
デビュー日
卒業日
どちらもアイドル当人とそのファンの方にとっては1日しかなくて、すっっぺしゃるな日であることは共通している。
だが、私はあまりデビュー日のことを覚えていない。
単純に卒業日は直近の出来事だから、とかそういうわけではなく、何故かデビューの日は卒業の日よりも記憶が薄いのである。
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アイドル、というのは芸能界の中でも特殊な存在だと思う。他の職種、例えば俳優さんやタレントさんが引退する時はまだしも、デビューする時ってこんなに重要視されることはなかなか無いだろう。
「卒業」という概念も、アイドル固有のものだ。
多くのアイドルが、卒業を決める時は葛藤し、卒業の場では時に涙する。
アイドルが他の芸能ジャンルと大きく違う点としては、主軸が自分ではなく他人にあるということだと思う。
何をするにしても、「応援してくれる人」がいなければ、それはアイドルではないのである。
idol=偶像
という通り、ただ1人でも崇拝してくれる人の存在なしには、それをもってアイドルとは言えないと私は思う。
まあプロかどうかは別として、何かの演技をすれば役になっているので「役者」になれる、何かの商品を引き立たせれば「モデル」になるとか、つまり1人でお話を完結させようと思えばできる他のジャンルに対して、アイドルは自分1人では成り立たない。
そんな特別なものであるからこそ「アイドル」をテーマにした楽曲とかはたくさんあるし(「役者」をテーマにしている曲とかって私は聴いたことがない)、アイドルにとって、ファンの方というものは非常に大切な存在なのである。
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以前に記述した通り(過去記事→「アイドルになったと思ったら、転生してた話。」参照)私は自らの意志でアイドルになったのではなく、気づいたらアイドルになってたというおそらく稀なタイプのアイドルだった。
それゆえに、最初はアイドルというのがどんなものかもわからず、ただただふわふわした気持ちで、熱意もなく(語弊があるといけないけど、進んだ時の流れに比して当時は、という意味ですよ)アイドルをしていた。
デビュー当初、私にファンの方はいらっしゃらなかっただろう。言ってしまえば、ただそこら辺にいるちょっと変わった女の子をぽんっとステージにあげたようなもので、何か光るものがある訳でもないし、特別歌やダンスとかのスキルがあったわけでも、容姿が素晴らしく優れている訳でもない。ファンの方が最初からいる方が不自然で、ただただステージの隅で、不安を抱えながら立ちすくみ、ぎこちなく踊る私だったのだと思う。
だから、私がデビューした日、
私はアイドルじゃなかった。
アイドルという仮面を与えられただけで、中身はアイドルになりきれてなんてなかった。
だからだと思う。デビューの日の記憶があまり残っていないのは。デビュー前のMV撮影、デビューまでのレッスン、デビュー日のステージに上がる直前のことなんかはよく覚えているのだが、肝心のデビューの本番ステージのことはすっぽり抜け落ちてしまっている。
世の中にはアイドルになりたいと願う女の子がごまんといる。しかし、その中でアイドルになれない女の子もごまんといる。
その状況の下で言うのは失礼だと思うし、本当に申し訳ないけど、私はアイドルになる意志がないのになれちゃった人間だから、、、
でも、幸運なことに私は1期生だった。
まだ何にもないところから、新しいアイドルを創り上げていくプロセスに関わらせていただいた。
同時にそれは「アイドル」がなんたるものか、そして芸能の世界がどんな気持ちで向き合っていくものなのかを学ばせていただく私の物語なのだったと思う。
アイドルになってなかったら、
自分が歌う曲がサブスクに入ることなんてなかった
冠番組、ラジオ番組を持たせていただけなかった
私たちのMVを撮っていただくこともなかった
多くのライブに出演して、歌い、踊らせていただくこともなかった
「仲間」、尊敬する先生、関わってくださったスタッフさん、なにより大切な大切なファンの方々に出会えなかった
そして
「葛藤」「苦しみ」「嫉妬」「悲しみ」なんかを骨の髄まで沁みるくらいに味わうこともなかった
そうなのだろう。
1期生としていろんなごたごたを乗り越えてきたから、いろんなステップを初めて踏む喜びを感じて来たから、私は自分の気持ちが理解できた。
その結論として、私はアイドルを卒業した。
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今日、私たちが創り上げてきた場所に3期生という新たな風が吹き込む。
私が初めてステージに立った時とは、きっと違った気持ちで迎えるのだろう。
新しく何かを創り上げることにはエネルギーがいるけど、それと同じくらい出来上がっているところに入っていく、ということはとても勇気とエネルギーがいる。
1期、2期と続いてきたものを受け継ぐこと
3期生として新たなものを生み出すこと
どっちも難しいことだけど、1期生として、卒業生としてそれを遠巻きに眺める今、あまり不安は感じていない。
3期生は今までを見て、それを踏まえてここに来てくれた訳だから。
関西から通ってきてくれる子も
大学の卒業が近い子も
アイドルって道をおそらく想像してはいなかったであろう子も
アイドルとして生きることを決めてくれた子達だから。
私みたいに、ふわっとした気持ちでアイドルになんかなっていないだろうから、大丈夫。
これを書いている今、単独のチケット、初めて完売になったの知ったよ。
なんだか私が泣いちゃいそうです。
改めて、3期生のみんな、
デビューおめでとう。
これからのアイドル人生に花が咲きますように。
私も、みんなも、それぞれの道が幸せなものになりますように。
ずっと応援しています。
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そして、アイドル時代の私に出会ってくださった方へ
私はもうアイドルではないけど、皆様からいただいた愛は、きっとアイドルにならなければ得られなかったものでしょう。
全てが良い思い出だったと言えはしないアイドル生活だったけど、
これだけは確かです。
アイドルになれてよかった。
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