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【01Night】 アートと事業創造と妄想の良い関係 〜未来を作るビジネスマンが未来を描けなくてどうする!?〜

この記事は5月19日に株式会社Bulldozerの尾和恵美加さんをお招きして開催した【01Night】 アートと事業創造と妄想の良い関係 〜未来を作るビジネスマンが未来を 描けなくてどうする!?〜のイベントレポートです!

▲こんな人に読んでほしい
・アートシンキングに興味のある方
・新しい視点や捉え方での事業創造に関心のある方
・妄想がすきな方
▲トークテーマ
・アートシンキングとは
・事業創造とアートの関係性
・妄想から作られる未来

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尾和さんには2020年4月にも【01Night】にご登壇いただいております!

0.登壇者紹介

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尾和恵美香さん(スピーカー)
株式会社Bulldozer 代表取締役運転手 / パラダイムシフター
日本IBMにコンサルタントとして新卒入社後、働き方改革をデザインシンキングから取り組む
左脳の活用が重要なコンサルタント領域で「右脳爆発系」とあだ名が付いたことをきっかけに、自らのバリューを探しはじめ、「これからの世界は左脳、右脳の掛け合わせになる」との洞察を得てデンマークのデザインビジネススクールKaospilotに留学。
現在は株式会社Bulldozerにて能力開発を手掛けている。
主な提供先は、歴史や哲学のある会社「大正製薬」「サンリオ」など。

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江本 祐太朗
株式会社ゼロワンブースター

電機メーカーグループにて、企業向けにデジタル技術をベースとした、新規事業プロジェクトの設計及び推進、アイデアソンや社内教育などのワークショップデザインに従事。社内新規事業制度を利用し、通常業務と並行しながら自ら新規事業立上げ活動を行う。2020年より01Boosterに参画。

1.アートシンキングとは?

イベントではまず、アートシンキングの概要について理解するために尾和さんからこんなお題が提示されました。

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これは何でしょう?

ヒント:江戸時代に使われていた、人の顔のサイズ程の和紙が挟まっている道具

皆さんわかりましたか?

正解は、「お茶の葉を乾燥させる道具」です!

150年前に乾燥剤はなく、「お茶の葉は湿気てしまい飲むたびにこの道具を使って囲炉裏で乾燥させていた」というのが当時の常識でした。
しかし「お茶を飲むたびにお茶の葉を乾燥させるのはなぜ?」「乾燥したままのお茶の葉を用いてそのまま飲めるのでは?」と妄想した人がいたからこそ、今私たちはお茶の葉を乾燥させるという手間を必要とせずにお茶をおいしく飲むことができます。

実物は深川江戸資料館で見ることができます。

つまり、アートシンキングは、
物事を再定義することでイノベーションを起こすことです。

そして、今回取り上げるオリジンベースド・アートシンキングでは、常識から逸脱し、物事を再定義する「芸術家の思考回路」を利用します。その際重要になってくるのが「オリジン」という概念です。

デザインシンキングなどで、「問」「疑問」を生むことの重要性はよく知られていますが、ボーっとしているとそういったものは生まれません。

オリジンが存在する
問・疑問が生まれる
物事が再定義される

以上は事業創造の際にアイディアの基本となる流れですが、この中でオリジンベースド・アートシンキングの担う役割は最初期の「オリジンを生み出す」という段階です。

では、デザイン(シンキング)と、アート(シンキング)の違いは何でしょうか?

デザインシンキングは「届けたい相手≒ペルソナ」「その人に訴求したいこと」が決まっている段階で、それに対し必要のないものを削いでいく行為です。新規事業創造の場面でデザインシンキングを用いて、引き算ばかりしていては「母体=オリジン」が分からなくなってしまいます。

一方で、アートシンキングは自分にしか作れない世界観バリューを何層にも重ね、デザインシンキングで削る前の母体=オリジンを作っていく行為です。

※事業創造におけるフェーズ中の関係性

ここで一度、構想策定、要件定義、設計といったフェーズ中でどのような考え方をするべきか、俯瞰し、アートシンキングの立ち位置を明確にしておきます。

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ロジカルシンキング:
コンピューターがコンサルティングファームや一般企業に登場し始め、それまで俗人的で見えなかったデータ見える化効率化が始まった1980年代に登場。
データをインプットし、効率的・汎用的に拡散させるための戦略立案に利用。
デザインシンキング:
スマートフォンが登場し始め、データからは読み取れない「ユーザーインサイト」の存在によってUI, UXという概念が生じた2010年代に登場。
使う人の声をインプットし、どういうものを設計すると価値を提供できるのかを考える際に利用。
アートシンキング:
0→1の場面で使用。
自分起点で始める「オリジン」が重要。直訳は「起源」だが、その人、その会社独自の価値観のことを指す。誰もが必ず持っているもの。
オリジンをインプットし、自分にしか描けない未来を最初に描き切り、拡散させたところから届けるべき相手を見極め収束させる。

2.オリジンとは?

ここまで何度も「オリジン」という言葉が出てきましたが、その概念について詳しく紹介します。

尾和さんは、オリジンとは「哲学」という言葉が一番近いと語ります。

哲学のあるものは人の心に深く刺さり、その人の心をつかみます。心に深く刺さった人はアーリーアダプターになりますが、そういった人たちが周囲に集まり、その哲学を共有する人が増える文化になり、文化として長い間使われると歴史になる、という流れです。

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尾和さんは

「独創性とは起源(オリジン、哲学)に戻ることである」

というガウディの言葉が一番フィットしていると語ります。

これまでに登場したオリジンの説明を総括すると、

オリジンは「その人・会社特有の価値観・世界観・バリューを積み上げ、作り上げる母体となるもの」「自分にしか描けない未来」つまりは固有の哲学のこと。
オリジンによって「独創性」が生まれ、「誰に届けたいか」「どのように届けるべきか」と収束させていくことができる。

現在は「デザインシンキング」でそぎ落とすばかり根本的に大切「オリジン」が分からなくなってしまっている。
それを回避するために根本を形成し拡散させる行為が「アートシンキング」ということです。

そして、アートシンキングとは、今作っている商品は一時的には売れているかもしれないが、100年後、1000年後も残っていくような、歴史に残るようなものを作ろうという挑戦のことです。

3.アートシンキングが重要なワケ

それではなぜ、1980年代のロジカルシンキング、2010年代のデザインシンキング、そして今「アートシンキング」が重要になっているのでしょうか。それには時代背景を紐解く必要があります。

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近年イギリスでは"Ikigai"=生きがいという言葉が重要視されてきています。この生きがいは、「好きなこと」「得意なこと」「スキルとして求められていること」「性格として求められているもの」の四つで構成されます。

なぜこの概念がイギリスで重要視され始めたかというと、資本主義の成熟により先行き不透明なVUCAの時代がやってくるということを前提に、コロナというイレギュラーな状態がかぶさり、「どうしたらよいのか誰にもわからない」時代背景が原因です。

前年度の業績、競合他社との優劣といった数字に目標を置くことができなくなった時、どこに「次の目標」を持つのか、企業単位・個人単位で明確に定まらない時代になり、そこで

「自分だけの正解=生きがい」

が重要視されるようになった、ということです。

これまでHave to=しなければならないことで日常が埋め尽くされていました。しかし、Want to=生きがい、やりたい行動を選択するということは極端に少なくなってしまい、いざ自由に何でもやっていい、と言われてもわからなくなってしまうような状況があります。

>尾和さん
このような状況は日本だけでなく欧州も同じです。デンマーク滞在中に触れた若者たちは確かに自由に伸び伸びと過ごしていたけれども、何が本当にしたいのか、長く働けるような環境が見つからない、とジョブホッパーが多い状況にあります。

日本は今「働き方改革」をしていますが、働く時間を短縮する取り組みだけで、SDGsの8番のゴール「働き甲斐も経済成長も」にあるような、働き甲斐=やりたいこと、自分事の仕事をするということには至っておらず、本質的な効率の向上にはつながりません。
そして、「○○したい」という目標地点が存在するからこそ、ストレッチし、スキルアップをしていくための成長というステップを踏めるものなのではないでしょうか。

>江本さん
社内起業制度の場合、「何かやりたい」と思っても「何をしたい」というのが出てこないことが多いです。会社、組織に入り、組織のミッションのために自分はこうしたい、というものは出てくるものの、意外と「ゼロベースで何がしたいか」と問われたとき、何も出てこないケースが多いです。

>尾和さん
なかなか「アートシンキング」に切り替えられず、「本当は持っているけれども言語化できない」状態の「オリジン」ですが、VUCA×コロナという誰も予測できない時代に入ったとき、データや情報に惑わされず、自分の頭で考え自らの価値観で判断することが必要です。
重要なことは、インプット:妄想力、プロセス:意思決定、アウトプット:実行力と、「こういう世界があったらいいな」に対して「ここに向かってやりきる」「ちょっと新しいチャレンジに踏み込んでいく」という気概です。

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Origin Based Art Thinkingの6つのステップのうち、自分の持っている哲学から作りたい世界を妄想し、現状とのギャップを認識して問いを設定していく、「作りたい未来の想像=妄想力」を育てることが必要、ということです。

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これまでの物質的な不足などの「困っていること」が分かりやすく目の前にたくさんあった状況から、物質的に満たされ、あらかた生活には困らなくなったけれども、どこか閉塞感があったり常に「面白いこと、楽しいことないかな」を探しているという「満たされてはいるけれども満たされてはいない状況」に移っているのではないでしょうか。

そしてこの「満たされてはいない部分」というのが言語化できていない、「これを実現したい」という妄想のタネ、オリジンを形作るタネといえるでしょう。

妄想力にはこういった言語化できていない「満たされていない」部分に気が付き、拡散するというトレーニングが、ロジカルシンキングなどと同様に必要です。

4.第二部 ー妄想を語る会ー

ここまでイベント第一部の尾和さんのレクチャーから「アートシンキングとは何か」とその重要性や時代背景をお伝えしてきました。
ここからは第二部として「2050年に向けたムーンショット計画」を中心に「妄想を語る会」が開催されました。

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このイベントレポートでは「妄想を語る会」で出されたキーワードをいくつかご紹介します。

・ちょっとしたデートで江戸時代の箱根にリラックスしに行く
・ハードな運動を求めてマンモス狩りに縄文時代へ飛ぶ
・本来肉体もいけないような惑星に旅にでる
・「世界の頭のいい人たちは何を考えているのか」を体験するプラットフォーム
・他人の体の中に自分の体のサイズを変えて入ることができる
三大美人に会いに行く
・憧れの人の感性を感じてみたい
・体の各種パーツをファッションのように入れ替えることができる
・犬と話す→犬の権利とか生まれているかも?
たんぽぽの権利
・量子力学のような存在と非存在の曖昧な世界

などなど文字で並べてみると非常に不思議なワードが並んでいますね(笑)

イベント中には最初に尾和さんが広げた妄想に乗っかるように様々な領域の知見を合わせながらSli.doやzoomで参加者の皆様にもたくさん妄想を語っていただきました。

尾和さんはこの時の「妄想を語る会」からさらに妄想を成長させたそうです!尾和さんがこちらのnoteに書かれているのでぜひチェックしてみてください。

5.最後に

ここまでお読みいただきありがとうございました!
ロジカルシンキング、デザインシンキングに続き、今後どんどん重要性が増してくるアートシンキングについて、少しでもご理解いただけましたでしょうか?

アートシンキングで妄想を膨らませ、その妄想を理論できゅっと収束させる、その繰り返しによって実現したい「あったらいいな」「できたらいいな」を現実のものにしていくことで、わかりやすい正解のない時代「自分が作り出す正解」を目指す必要が出てくるでしょう。

この記事を読んで、「アートシンキングって何?」と少しでも気になった方はぜひ尾和さんのTwitterFacebookを確認してみてください!

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Writer:王 翔一朗(わん しょういちろう)


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