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クオリア指標は「こう使う」&「こう役に立つ」:街づくりカルテ【エリアクオリア指標】のトリセツ⑥ 構造、使い方と効用



こんにちは noteメンバーシップ:ツギ・マチ・ラボ(次世代の都市・街づくりラボ)を運営する松岡です。私たちの研究会FIACS で開発している、次世代の街づくりカルテ【エリアクオリア指標】のトリセツを解説する第6回目は、指標の構造、利用法、効用についての説明です。

よろしくお願いします。


【内容】

⑴ エリアクオリア指標の構造と考え方

⑵ エリアクオリア指標の使い方イメージ

⑶ エリアクオリア指標の活用と効用




⑴エリアクオリア指標の構造と考え方


① 3分野等価評価

エリアクオリア指標は文明系のハード整備だけでなく、ソフト活動に伴うコンテンツの充実・情報流通量の増大が、わざわざ繰り返し訪れる人(共感人口)の増加に繋がると考えます。

したがって共感人口活動量・文化系指標・文明系指標の3分野を等価評価します。

② 共感人口を最重要視

居住でもなく就業でもなく、わざわざ繰り返し訪れる人が多い街(=共感人口の多い街)は魅力がある街であり、街を楽しみ回遊することによってリポーターが増えると想定します。

KDDIの協力の元で行動データから、対象エリアに繰り返し来街する「共感人口」を計測します。単位面積(ha)当たりの月間数を元に、東京都の平均値(50)と対象エリアの内の最高値(100)との間の比率をスコアとして算出し、最も重要な指標として採用します。

③ 文化系指標においては街の個性や話題流通量を重視

対象エリア内の図書館やホール数などのハード整備とイベント数、NPO数などのソフト施策の「基本文化環境」を単位面積あたりで東京都平均と最高値の比率からスコア化します。

さらに街のコンテンツとしての「街の話題流通量」の増大が、街の評価に繋がると言う認識を元に、角川アスキー総研の協力によって、Twitter解析による「特化文化環境」をスコア化します。

④ 共生・サスティナブル志向で文明系指標を評価

文明系指標では経済性だけでなく、共生・サスティナブル志向で評価項目を設定します。市区町村単位でオープンデータを元に税収や事業所数などの「経済基盤」及びCO2排出量や女性の労働力率などの「環境・多様性基盤」を評価します。

さらに対象エリアの商業施設や宿泊・公園などの「生活インフラ」について単位面積あたりの充実度を算出し、いずれも東京都の平均と最高値との比率をもとにスコア化します。


⑤ スコア合計をもとに九段階に格付け

各分野のスコアを合算し、 AAA,AA,A/BBB,BB,B/CCC,CC,Cの九段階に格付けします。


⑵エリアクオリア指標の使い方イメージ

エリアクオリア指標は前述の通り共感人口(1項目)と文化系指標(基本文化環境4項目、街の話題流通量1項目)、文明系指標(エリアの生活インフラ5項目、経済基盤4項目、環境・多様性基盤3項目)を等価評価します。

ですから「商業施設が集積している」「図書館が整備されている」などのハード水準よりも、その場所・街でどのようなイベントやプログラムが実施され、それが「街の話題流通量」として換算されたり、その結果として繰り返し来街者が訪れ、回遊・滞留し「共感人口」として計測されることの評価が高くなる仕組みになっています。

ハード整備だけでなくソフト施策や街づくり活動の努力が反映される「総合的な街づくりカルテ」として機能します。

また街の話題流通量では分野ごとのキイワードの検出できますので、イベントの効果、街づくりテーマの有効性も可視化可能です。

隔年で定期的に計測することで街づくりの方向性の検証や効果測定が可能になります。

もちろん「共感人口」を支える要素として、より的確な項目を模索し常に更新していく必要があると自覚しています。


⑶エリアクオリア指標の活用と効用

エリアクオリア指標を活用することによって、以下の4つの効用が期待されます。

① 総合的な効果測定:日本版BIDのエビデンスとして

エリアクオリア指標は、街の魅力向上を総合的に測定する指標になります。年間でのイベント開催数や個別イベントでの集客数を、集計する従来手法よりも合理的です。エリマネの活動原資の捻出手法として期待される「地域再生エリアマネジメント負担金制度(日本版BID)」のエビデンスとしても活用可能です。

② 街の特性・進化を相対評価

エリアクオリア指標は、他の町と比較した時の当該エリアの特性や、経年的な進化を相対評価として可視化することが可能です。従来の当該エリアの活動内容及び予算を記載するしか無いエリマネ事業報告書に総合性・客観性を担保することが可能です。

③ 街の強みを抽出・可視化

エリアクオリア指標では、当該エリアに対する興味や来街目的を、街の強みキイワードとして、抽出することが可能です。従来の来街者アンケートよりも、遥かに大きな母数での動向把握が可能になり、街のプロモーションへの活用や街づくり施策の参考データとして、非常に有効です。

④ 街のファンの定量可視化

エリアクオリア指標は、「どんな嗜好を持つ人達が、どれくらい集まる街なのか?」を計測することで、街中での広告・宣伝のセールスツールとして活用可能です。

さらにプロモーション活動として非常に効果の高い「街まるごとハック」をインセンティブにした、「街のスポンサード」への布石になることも期待されます。


リモートワークが主流で「出社がトピック」になりつつある時代には、リアルに人を集めやすい交通利便性と規模だけを重視するのではなく、オンライン1stを前提に、企業活動や企業カルチャーなどをネット上のコンテンツとしてどう発信していけるか、という視点が重要になります。

東京大学で街づくりを専攻される小泉秀樹教授は「これからの街づくりでは歴史性と真実性とが評価される」と指摘されました。

交通利便性だけでなく公園や水辺などの特別感のある立地特性を活かしたり、自社のDNAや土地・建物の歴史を如何に深掘りして発信できるかが重視される時代と言えます。


エリアクオリア指標は、まさに時代が求める「街づくりの質」を可視化するカルテになるのです。


最後までお読みいただき有難うございました。次回は、エリアクオリア指標を向上させる街づくり方策について、触れていきたいともいます。



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