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いろいろあったクラスを担任するとき⑥ 「暴力に対して」

いろいろあったクラスを担任するときは、つい黒や紺のTシャツやパーカーなどを買ってしまいます。なぜかというと、ケンカで鼻血とか、泣き叫ぶ子の涙や鼻水がつくとか、モノが飛んで色がつくといったことが起きるという経験則があるからです(笑)。服の汚れを気にしていたらできないので、つい色の濃い服装になります。
でも、少しでも落ち着いてきたら、なるべく明るい色の服装にします。見えるもので、心も変わるとも思っているので、濃い色の威圧感を減らしたいからです。

今回のテーマ「暴力」は、最も悩んできた難しいテーマです。
私が経験した大きな暴力関係の事例です。
・5年生担任のとき、妊娠中でしたが、キレた子が暴力をふるい、このままいったら相手の子が危ないと思って、お腹を庇いながら止めに入ったとき、小指を骨折しました。妊娠中は赤ちゃんにカルシウムが優先していくそうで、なかなか治りませんでした。
・6年生から担任したクラスは、前年度に足を引っ掛けて転ばせた子の歯が折れるという事件などが起きていて、手足がすぐに出る子が多かったです。それでも、6年生の後半になんとか落ち着いたかなと思った子が中学で暴力が出てしまって少年院へいったと聞いたときは、ショックと共に、6年では遅いのかと思いました。
・その経験があって、4年生で暴力をふるう子に、今我慢を覚えないと将来大変だ…、という言い方をしていたら、そのお母さんから「先生は、先のことを言いすぎる。」と言われ、言いにくくなりました。でも、その子は中学で先生に手を出して、引っ越していきました。
・別の年の4年生では、キレた子が相手の顔面を蹴って怪我をさせました。保護者が、本気で謝罪し、本人の発達障害にも向き合うようになり、その子は今は、進学先でなんとか頑張っているようです。
・暴力をふるう子の中には、親から暴力を受けがちな子もいました。発達障害の子もいました。我慢の仕方を身につけてこなかったんだなと感じる子もいました。

でも、なんとか、小学校のうちに暴力をふるわない解決を覚えて、警察のお世話にならずに成長していってほしいのです。そこで、発達段階に応じて、私が今のところ、こうしたらよいなと思ってやっている方法を書きます。

低学年

まだ、心と動きがコントロールできていない子も多い時期です。また、一人っ子でそれまでの集団も穏やかに過ごして来た子と、兄弟がいて喧嘩したりやんちゃな子が多い集団で育ってきたりした子では、たたくという行為に対する感じ方が全く違います。(特に1年生では、保護者も前提となる経験が全く違うので、保護者を巻き込んでのトラブルも起こりやすいです。)ただ、まだ力が弱いので、相手に怪我をさせることは少ないです。

指導の基本は一つです。
人は言葉でお互いを分かり合い、手を出すことはいけないんだということを繰り返し、言葉で教えていくしかありません。普段から親に叩かれているなど、感覚の前提が違う子は、怒られても理由が分からず、何度も怒られるうちに、二次的障害(反抗性など)に繋がってしまうこともあります。
まず、双方に理由を聞く。本人がうまく言えなければ、周りの話も聞く。その上で、原因を理解させてから、お互いにどうすれば良かったのか、手を出してしまった方はなんと言えば良かったのか、具体的に考えさせて言わせて、私からも教えます。そして、「子供は間違っていいんだよ。でも、間違いって分かったら、繰り返さないようにしようね。」と伝えています。
また、私はそういった指導はなるべく学級でみんなで行うようにしています。一度の指導で、みんなに伝わるからです。泣いて興奮しているなどの状況で、別の場所で話を聞いたときにも、戻った時に簡単な報告をします。
そして、徐々に、私は、「大人が道でいきなり人を叩いたら、警察に捕まるよ。子供も同じで叩いてはいけないんだよ。」等と、世の中のルールとも繋げて話をするようにしています。

中学年

この年齢になると、怪我をさせる可能性が高くなりますし、10年くらい前に都内で相手が亡くなったケース(4年生)もありました。

だから、暴力のあるクラスでは、まず、暴力はだめだということ・実際に死んでしまうこともあるということを、最初に言います。そして、周囲の止める力も強くなっているので、とにかく複数で暴力を止める(引きはなす)ように教えます。止めきれないタイプの暴力の場合は、とにかくひとまず逃げて教師を呼ぶように教えます。

以前に習った止めるときのポイントは、力ずくで握らないことです。本人の腕なら腕の太さギリギリで握ると、痛くないけど動くことはできないくらいになります。後ろから押さえ込む感じの時も同じようにしています。相手がさらに興奮するのを防ぐ効果がある気がします。

止めたら、ひとまず、その場を離れて、落ち着くまで待ちます。授業中であれば、管理職や他の先生に助けを求めて、しばらくその子を(ときには学級の方を)見ていてもらいます。興奮している間は話しても聞く気持ちになっていないので、話は落ち着いてからにします。特別支援学級の教室に、「興奮している子が暴れてもいいように、壁に柔らかい素材を貼った個室」があったときは、その中で暴れてもらいましたが、今の学校にはそういう部屋はありませんので、階段の踊り場やその時使っていない教室などで落ち着いてもらうしかありません。

落ち着いたら、なるべく起きたことを言葉にしてもらいます。どういうときに自分がカッとなるのかわかってほしいからです。その上で、我慢の袋の話をします。「我慢の袋は、我慢をすることで少しずつ大きくなるんだよ。今から、少しずつ我慢の袋を大きくして、4年生のうちに(5年生までに、等子供に応じて目標時期は違うが)言葉で言えるようにしようね。大きくなって暴力を振るうと、警察に行くことになるから、そうならないようにしよう!今から頑張れば、きっと大丈夫、できるからね。」

しかし、繰り返す子もいます。そういう子供はいつも怒られているので、本当にいけないことのレベルの違いがわかりません。だから、暴力の時は、レベルの違いがわかるようにしてあげないといけないです。
叩き合った時は、教室で解決できることもあります。しかし、一方的で激しい暴力の場合や頭など危険な暴力の場合、管理職と話し別室に隔離して反省を言葉に書かせる、親を呼ぶ等のいつもと違うことがわかる方策をとるようにしました。

それでも、頭を叩くなど病院に行くような暴力を何度も繰り返す子がいたときは、警察の少年係の方に助けを借りました。保護者も同意の上で、保護者と私と本人で警察に行き、暴力はいけないという話をしてもらいました。もう次はないよということが少しは伝わったと思います。頭など危険な暴力は無くなりました。

高学年

基本は中学年と同じですが、より法を意識させました。中学校では、直接警察を呼ぶこともあると聞きました。小学校でも、自分の学校では経験ありませんが、近隣の学校で警察を呼んだ例も聞いています。

鉛筆を人に向かって投げるなどの危険行為、傘立てを投げるなどの威嚇行為、それぞれに対して、落ち着いてから、たまたま今回は当たらなかったり怪我に繋がらなかったにしても、もし被害が出ていたとしたらどうなるのかを話します。一方的に不満を募らせるタイプの子供の場合、相手がかわいそうとか、相手の気持ちになって考えるといった話が入っていかないことがあります。自分への不利益を自覚することでしか止められない子供には、いかに不利益かを説明しました。みんな覚えている、将来自分が頑張ってもその過去は消えない、SNSに書かれるかもしれない、大怪我だったらお金を出すのは自分、報道されることもある、家族も巻き込まれる、親の仕事に影響が出ることもある、引っ越さなくてはいけないこともある等です。

本当にキレやすい子は、もちろん病院や特別支援学級につながっていたし、繋げてきました。でも、そこまででもないなという子には、本人のよくなりたいというエネルギーが湧くように指導する必要があります。ただ叱っても話しても、本人に変わりたいという思いがないと、変わらないからです。それは、どの子でも同じです。普段の生活で良いところを見つけて本人に伝え、授業で「できた、わかった」という達成感を持たせ、友達と楽しく過ごす時間を増やし、トゲトゲした心がまあるくなっていくようにしていきます。
「大丈夫。前に担任していた子も、5年生で頑張って我慢の袋を大きくして、6年生では少し出ちゃったけど、中学校でしっかり生活しているよ。」等明るい展望を話してあげることも、本人の頑張ろうというエネルギーを増やしていくと感じました。







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