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ソーシャルストーリーとは?特性に寄り添った支援で不安を減らそう

こんにちは!
誰かの役に立ちそうなことを発信しています。

突然ですが「ソーシャルストーリー」をご存知でしょうか?

ソーシャルストーリーとは、主に自閉スペクトラム症児に対する支援方法の1つなのですが、有効な方法であるにも関わらず、あまり知られていない印象を受けます。

実際に私は自閉症の息子との生活の中で、ソーシャルストーリーを取り入れて良かったと思う場面がありました。

自閉症などの発達障害であるか否かに関わらず、ソーシャルストーリーは子どもの発達を支援することに加え、親子が穏やかな時間を過ごすための手助けになるのではないかと考えています。

大切なのは「子どもの目線に立つ」ということでした。

実例を交えながらソーシャルストーリーとはどういうものなのか、作り方や使い方のポイントについてもご紹介します。

ソーシャルストーリーとは社会技能をサポートするもの

私の9歳になる息子は、自閉スペクトラム症の診断があり、支援学級に在籍しています。

息子が年長さんのとき、親子で一緒に通っていたことばの教室の先生に「ソーシャルストーリー」という支援方法を教わり、実践してきました。

ソーシャルストーリーとは、子どもに合わせて作り、繰り返し読むことでその子の社会技能をサポートするものです。

詳しくご説明します。

▼自閉症(ASD)児に世の中のことを教えるストーリー

ソーシャルストーリーとは、アメリカのキャロル・グレイが考案した、自閉スペクトラム症(以下ASD)や発達障害児に対する支援方法の1つです。

簡単に言うと、ソーシャルストーリーは、ASDの子どもたちが分かる形で、社会の様々なことを紹介する文章です。

ASDの特性をもつ子どもたちは、脳の神経回路の違いにより五感の働きやものの見え方、考え方が定型発達児とは少し異なっています。

そのため、私たちにとっては何の説明もいらない当たり前のことや、見ればわかること、世の中の暗黙のルールのようなものを理解できないことが多くあります。

ASDのお子さんは、物事の捉え方に特性があることにより、社会の中でふさわしいとされる振る舞いができず、周囲とトラブルになってしまうこともあるのです。

社会的に好ましくない行動をしてしまった子どもに対して、私たちがいくら頑張って教えてもその言葉が本人には全く届いていない、ということがあります。

私自身、毎日癇癪を起こす息子のことが全く理解できず、試行錯誤するも変わらない日々に「なぜこんなにも伝わらないんだろう?」と悩んでいました。

しかし、息子にとってはこの世界が訳の分からないことばかりで、苦しみ、助けを求めていたのだと思います。

ASDのお子さんに対しては本人の特性に寄り添った表現で、物事を説明することが必要になり、その方法として有効なのがソーシャルストーリーなのです。

パニックを起こしたり、手が出てしまったりしているときは、子ども自身も困っていてSOSを出しています。

子どもの目線に立って、状況や物事を説明することで、子どもの不安感を和らげ、社会で生きやすくなるための手助けができます。

同時に、ソーシャルストーリーは私たちが、ASDの子どもたちが見ている世界について理解を深めるためのツールにもなるんですね。

▼ソーシャルストーリーで支援できること

ソーシャルストーリーで期待できる支援は、以下のようなものがあります。

これらを身につけることで、子どもは適切な行動を自ら選択して、行っていけるようになるのです。

  1. 規則やルーティンの理解

  2. 行動の予測

  3. コミュニケーションの支援

①規則やルーティンの理解

日常生活における規則やルーティンの理解をサポートします。

ストーリーを通じて、子どもは特定の場面やイベントでのルールに沿った振る舞いや手順を学べます。

②行動の予測

特定の場面やイベントにおいて、望ましい振る舞いを予測し、行動する手助けをします。

初めての事柄に対しても、事前にストーリーを提示するため、子どもは実際の場面で「どのように行動すべきかわからない」という不安感を減らせます。

③コミュニケーションの支援

他者の感情と自らの感情の適切な表現方法を学ぶことで、コミュニケーションスキルの向上を支援します。

ストーリーの中で、他者の感情について触れられるため、ある状況下での他者の感情を予測しやすくなります。

また、適切なセリフや他者からの反応を学ぶことによって、その場に応じた感情の表現方法を身につけていきます。

自分も相手も心地良いコミュニケーションを知り、スムーズなコミュニケーションをとるための手助けになるんですね。

▼最大のメリットは個別のニーズに合わせて作成できること

一概にASD・発達障害といっても、一人ひとりの特性や物事に対する理解の度合いは異なっています。

ソーシャルストーリーは、その子が苦手とすることや不安を生じやすい場面に合わせてオリジナルの文章を作成できるというメリットがあります。

▼理解を深めるためにおすすめの本はコレ

私はことばの教室の先生からこの本をお借りし、後から自分でも購入してソーシャルストーリー作りの参考にしました。

本の中には、日常生活の中でありがちな出来事に関するソーシャルストーリーがいくつも書かれており、この本をそのまま子どもと一緒に読んでもOKです。

全てひらがなで書いてあるので、ある程度ひらがなが読める年齢になれば、子どもが自分でも読める本です。

この本を読んで、ASDのお子さんに対しては「そんなことから説明するの?!」という当たり前のことから丁寧に伝えていくことが大切なんだなと思いました。

ソーシャルストーリーの例文を紹介

実際に私が作成したソーシャルストーリーを例文としてご紹介します。

あくまで息子の状態に合わせて作成したものなので、内容は参考にならない部分も多いかもしれませんが、文体や雰囲気は分かっていただけると思います。

ソーシャルストーリーとはどのようなものか分かっていただいたところで、確認しておきたいソーシャルストーリーの特徴もお伝えします。

▼例文①知らないことを説明する

【がっこうって、どんなところ?】

がっこうは、たくさんのともだちといっしょにおべんきょうをするところです。
がっこうでは、おべんきょうをしたり、みんなでいっしょにあそんだり、かかりのしごとをしたりして、たくさんのあたらしいことをおぼえます。
がっこうのせんせいは、こどもたちがいろんなことをおぼえるためのおてつだいをしてくれます。
○○くん(息子の名前)のいくがっこうには、たくさんのきょうしつがあります。
きょうしつには、つくえといすがたくさんならんでいます。
○○くんのいくがっこうには、ほかにもたくさんのものがおいてあります。
おべんきょうのじかんわりひょうもあります。


〈このソーシャルストーリーを作った経緯〉

ASDのお子さんは、初めての場所に大きな不安を感じる子も多いと思います。

息子もそうだったので、小学校入学にあたり、学校がどんなところなのかイメージしてもらうために作成しました。

息子の名前を入れたことで、興味をもって話を聞いてくれました。

その他にも「じかんわりって、なに?」「せんせいって、どんなひと?」「がっこうには、どうやっていくの?」といったタイトルのソーシャルストーリーを作り、読み聞かせをしました。

旅行などで初めての場所に行くときや、初めて電車や飛行機に乗る、といった場合に場所や乗り方の説明をソーシャルストーリーで事前に伝えるのも良いですね。

実際の写真があると、子どももよりイメージしやすくなります。

▼例文②苦手な場面にどのように臨むかを説明する

【かったり まけたり】

しょうがくせいになると、ともだちとべんきょうしたり、あそんだりします。
ゲームやきょうそうもします。
ゲームやきょうそうでは、かつこともあるけれど、まけることもあります。
かったりまけたりしてあそぶのが、ともだちといっしょにやる、ということです。
○○くん(息子の名前)がかつときは、ともだちがまけます。
○○くんがまけるときは、ともだちがかっています。
つぎはどうかなと、どきどきするけれど、ともだちとゲームやきょうそうをするのは、たのしいものです。
かったりまけたりしながら、みんなとなかよくなります。
まけるとくやしいきもちになりますが、すこしがまんします。
すこしがまんすると、くやしいきもちはなくなって、またいっしょにやりたいとおもえます。


〈このソーシャルストーリーを作った経緯〉

息子は勝ち負けのあることで、負けたときにものすごく心が乱れてしまいます。

そして、最初から勝ち負けのあることには参加しないという状態になってしまいました。

しかし、これから生きていく中でずっと勝ち続けることなんてありえませんよね。

負けることも、間違えることも、失敗することもたくさんあって、全てが大切な経験です。

少しずつでも、そういった経験に慣れてほしいという思いで作成しました。

苦手なことも、頑張ってやってみると良い気持ちになって、周りの人も喜んでくれる(応援してくれる)という結果を伝えています。

▼例文③どういう行動を取ると良いか説明する

【ともだちとなかよくするために】

どんなりゆうがあっても、ともだちをたたいたり、けったりするのはよくないことです。
もし、たたいたり、けったり、ともだちがいやがることをしてしまったら、「ごめんね」とあやまります。
○○くん(息子の名前)は、ともだちをたたきたい気もちになったら、がまんして○○くみ(支援学級の名前)ににげます。
そして、じぶんの気もちをせんせいにはなします。
いやだったことや、おこった気もちもなんでもはなしてだいじょうぶです。
せんせいやおかあさん、おとうさんは、○○くんがじぶんの気もちをはなしてくれたら、とってもうれしくなります。


〈このソーシャルストーリーを作った経緯〉

息子が小学校1年生のとき、普通級のお友達を叩いてしまうということがありました。

私は普通級の担任の先生から連絡をもらったのですが、先生は叩いた場面しか見ておらず、理由は分からなかったそうです。

息子は私にも何も話しませんでしたが、私は理由を聞き出そうと、どんどん息子を問い詰めてしまいました。

私のただならぬ雰囲気に息子は泣きながら、そのまま疲れて眠ってしまいました…。

息子の寝顔を見ながら、感情的になってしまったことを深く反省し、このストーリーを作って伝えようと思ったのです。

幸いにも、叩いてしまった子の親御さんは「よくある子ども同士の喧嘩だよ~」と言って許してくださいました。

結局理由は分からなかったけれど、このストーリーを何度も繰り返し、息子と一緒に読みました。

手が出そうになったら、どのような行動を取れば良いのかを具体的に説明しています。

▼ソーシャルストーリーの特徴

ソーシャルストーリーには2つの大きな特徴があります。

①指導するためのものではない

ソーシャルストーリーの目的は、子どもを指導することではなく、子どもが生きやすくなるための手助けをすることです。

前述しましたが、問題行動の裏には必ず本人の困りごとが隠れています。

例えば、衝動的な行動を取ってしまう場面では、代わりにどのような行動をすると落ち着けるのか、子どもと一緒に考えたり、こちらから提案したりしてストーリーの中に入れます。

・静かな場所に行って、心を落ち着けます
・小さな声で「○○」と言ってみると、不安が小さくなります
・大好きな○○を思い浮かべると、イライラが減っていきます
                          …etc

不安な場面において上記のようなことを行い、自分の感情をコントロールできると「みんなはうれしくなります」「ぼく(わたし)もうれしいです」という結果を伝えると良いですね。

②即効性のあるものではない

ソーシャルストーリーを読んだからといって、すぐに子どもの行動が変わるものではないことを心にとめておいてください。

繰り返し読むことによって、だんだんとその子が自分のものにしていくイメージです。

だからこそ、子どもが興味を持ち、前向きになれるような内容であることが大切です。

ソーシャルストーリーの作り方と使い方を紹介

ソーシャルストーリーには、作り方でいくつかのポイントがあります。

簡潔にいうと「本人の目線で、ポジティブな表現を多く使って書く」ということが大事です。

また、ソーシャルストーリーのおすすめの使い方をご紹介します。

▼作り方のポイント4つ

  1. 本人の目線で書く

  2. ポジティブな締めくくりにする

  3. 実際の場面に即して書く

  4. イラストや写真を添える


①本人の目線で書く

「ぼく」「わたし」といった一人称の現在形を使い、子どもにとって出来事が目の前で起こっているように書きます。

ASDのお子さんの物事の捉え方や考え方の特性をふまえて、このような書き方になっています。

②ポジティブな締めくくりにする

ソーシャルストーリーは何度も繰り返し読むものなので、ストーリーの最後は希望が持てるようなポジティブな締めくくりにしましょう。

また、ストーリー全体で否定語はなるべく使わず、ポジティブな表現を多くすることを意識します。

③実際の場面に即して書く

できる限り、実際に生活の中で子どもが体験する場面に即した描写で書きましょう。

実際の施設名や家族・先生の名前を登場させるのも良いでしょう。

④イラストや写真を添える

イラストや写真を添えることで、視覚的な情報による理解を促します。

イラストや写真は便利なフリー素材サイトから、ダウンロードして使うと簡単で良いですよ♪

▼親子がどちらも落ち着いている状態で使おう

ソーシャルストーリーの使い方で大事なポイントは、親子が共に落ち着いている状態のときに使うということです。

私は寝る前に絵本を読み聞かせるように、ソーシャルストーリーを読んでいました。

子どもの気持ちが不安定なときは、ストーリーの内容など頭に入りません。

また、親の「どうにかしなきゃ」という不安や焦りは、少なからず子どもに伝わってしまいます。

親の方も「支援している」という姿勢ではなく、自然に生活の中に取り入れられると良いですね。

▼集まったソーシャルストーリーがその子だけのお守り本になる

作成したソーシャルストーリーをファイリングしていくと、その子が困った時に助けてくれるお守り本ができあがります。

息子はこの本を大切にしていて、読み返すたびに「こんなこともあったな」と言って、自分の成長を実感しているようです。

実際に我が家にあるファイル

ソーシャルストーリーは最初に作成する手間がかかりますが、その後は特にストレスなく使えるものです。

一人ひとり抱える困りごとは違うので、その子に寄り添って作られたストーリーが支えとなることを願っています。

まとめ

  • ソーシャルストーリーとは、主にASDの子どもたちの社会技能をサポートする支援方法の1つである

  • ソーシャルストーリーは、個別のニーズや目標に合わせて作成できるというメリットがある

  • ソーシャルストーリーの目的は、子どもの不安感を減らし、生きやすくするための手助けをすることである

  • ソーシャルストーリーは即効性のあるものではなく、繰り返し読むことで成果につなげていくものである

  • ソーシャルストーリーを作るときは、本人の目線で出来事が目の前で起こっているように書く

  • ソーシャルストーリーを使うときは、親子が共に落ち着いた状態であることが大切


発達がゆっくりな子の支援は、本当に根気がいるものです…。

日々、わが子のために頑張っておられる親御さんたちには頭が下がります。

様々な支援方法がある中で、ソーシャルストーリーが全てのお子さんに有効であるとは言い切れません。

しかし、ソーシャルストーリーの根底にある「結果を急がず、安心感を与える」という考え方は、親御さんの気持ちを少し楽にしてくれるのではないかと思います。

親子が穏やかな時間を過ごすためのヒントになれば幸いです♪


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