マガジンのカバー画像

ピアノ技術に関すること

5
技術といっても専門的なことじゃなく、いつもの仕事での出来事や思った事柄をだらだらと
運営しているクリエイター

2020年5月の記事一覧

とばっちり

とばっちり

10才のお嬢ちゃんがピアノを習っている。
ピアノの先生のところでは上手に弾ける天才少女なのに、
自宅ではどうもうまく弾けない
 だってうちのピアノ鍵盤がちょう重いんだもん!

君はやる気がない、センスがないなどと親はため息混じりの嫌味を呟く。
そんなネガティブな雑音に耐えながらも練習を続けている。
 だってピアノ好きなんだもん。

この楽器の場合、鍵盤が重いのは音を止めるダンパーという部品の不具合

もっとみる
手に伝わってくるもの

手に伝わってくるもの

ネジの溝にドライバーがしっくりとはまると 金属同士が触れ合う柔らかい音が聞こえる。
ドライバーを握る力をクッと強めると、木の部品は乾いた声で「締まりました」と合図する。
この瞬間が僕は好きだ。
特に古い良いピアノのそれは、手に伝わる感触と枯れた木の音がたまらない。
ピアノのアクション「打鍵機構」には400本くらいのネジがついているだろうか。
でもこの緩くなったネジを締めなおす「増し締め」はものの数

もっとみる
四半世紀のお付き合い

四半世紀のお付き合い

りんごの花が風に揺れる頃、年に2度のピアノ調律、春の部に赴く。
かれこれ25年続いているので、50回以上この邸宅に通っていることになる。
長いお付き合いもここまでくると歴史だ。

 ピアノの持ち主の現役時代は大学病院の外科医だった。
今年85歳になられた。
趣味のピアノ演奏はどうも最近気力がなくなりつつあるとか。
それでも定期調律は欠かさない。

毎回、調律作業が終わると次回の訪問日を決める。

もっとみる