ショートショート（8話目）必要ないけど欲しいんだ。

世の中には必要ないけど欲しいものがある。

例えば、最高時速300キロのスポーツカー。

日本の法定速度は高速道路でも100キロ。

アウトバーンにでもいかない限りそんな高性能な車はいらない。

それでもフェラーリを見ると、欲しくなる。

必要ないけど欲しいんだ。

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例えば、金のかかりそうな女。

街を歩いていると、ブランドものの服にブランドもののバックで着飾っている女がいる。

こんな女と付き合ったら、金がもたないことはわかっている。

それに「美人は3日で飽きる」という諺（ことわざ）があるように、男は常に新しい女を求める生き物だ。

それでも、いい女をみると欲しくなる。

必要ないけど欲しいんだ。

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例えば、会社での役職。

出世したところで大して給料はあがらないし、部下と飲みにでもいけば奢らなくてはならない。

仕事量は増え、ストレスだって増える。

それでも、上司にお世辞を言いながら、やりたくもない仕事だってする。

僕は部長になりたい。

できれば、社長にもなりたい。

必要ないけど、会社でも役職が欲しいんだ。

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必要ないけど欲しいんだ。

将来の夢が。

幼少期、僕の夢はプロ野球選手だった。

毎日毎日、白球を追った。

結局、夢はかなわなかった。

あの頃は夢中だった。

いま、夢中なものがない。

必要ないけど欲しいんだ。

将来の夢が。

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人間はなぜ生きるのだろう？

どうせ死ぬのに。

僕らは毎日、罪を犯している。

他の生物の命を奪って、自分の命をつないでいる。

僕が死んだって、人類には何の影響もない。

それでも、誰かに必要とされたい。

必要とされたいんだ。

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