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米津玄師 HENSHIN(変身)ツアー ライブレポート【完全版】

人々の熱気。場内に立ち込めるスモーク。ちなみに照らされるライトの影響で左右で色が異なっており、遠くは水色こちらは桃色で、アイネクライネを彷彿とさせるカラーリング。

ライブ前特有の空気と、ふっと証明が落ち真っ暗になる会場。それでも今日の主役は未だは登場しない。

「駐車券をお取りください」

静寂を崩したのはライブとは一切関連のないはずの言葉。黄色いポールと四画面の監視カメラ。白い車がそのうちの一つに映し出されている。うたたねする警備員の横をすり抜け、地下の駐車場に滑り込んでいく。

スクリーンに映るはどこか懐かしい車と、けむくじゃらのオレンジ身体、それから長い爪。かちりかちりとハンドルにあたってはほのかな焦りや、いさみ足を表現するかのようなリズムを作っていた。

このモフモフな怪獣は巧みな(二、三回バック駐車にトライしてようやく満足に停めることができた)ドライビングテクニックでNo.311に駐車。

自ら動かしたミラーに現れたのは黄色とオレンジのボタンの目に、グリーンで陶器のお面がハマったモフモフの頭。今回いきなりグッズの至る所を飾っているnigiちゃんが満を辞して登場だ。ピンクのベロはハート型にも見えてくる。

降りる音に続いて、車の向こう側、タイヤの間から覗く大きく爪の伸びた足と灰色の足の裏。かと思えば駐車場のコンクリートグレーの壁にずんぐりむっくりとしたシルエットが映し出されていた。

いきなりトランクをガバリと開け、(青鬼のクローゼットの演出を思い出した)赤い薔薇に黄色のリボンの花束を取り出し、後ろに投げ捨てる。次に取り出したるは緑色のじょうろ。これが見つけたかったものらしく、どこか満足そうにトランクを閉じる。

ここまで全く喋らないnigiちゃんと、薄暗い地下の雰囲気とライティングがホラー映画を彷彿とさせる不気味な演出。正直可愛いとは言い難い。言葉を選ばないとすれば醜いと言って差し支えのない、不思議な映像。

彼は歩きだす。矢印↑のボタンを押す。そして立ち止まったかと思いきや「チーン」という小気味の良い音とともにエレベーターが到着を告げていた。

「上に参ります」

乗り込む際に扉に挟まる小ネタも挟みつつ、無事じょうろを持って乗り込んだ。徐々に狭まっていく扉とそして再び真っ暗になった会場。にあらためて「チーン」と音がして、そして彼はようやく変身をはじめる。

さあようやく、今回の主役のおでましだ。薄いエメラルドグリーンのシャツ、しなやかな素材が柔らかに上半身を包み、濃い色のスキニーが元々長い足をより長く見せていた。

そして手にはグリーンのじょうろ。nigiちゃんから渡されたバトンのよう。

  1. POPSONG
    ちゃらけてんなよーー。米津玄師!ダンサー集団を引き連れて記念すべき一曲目はPOPSONG。黄色の光が走る中左右のでかいモニターではおもちゃの兵隊(くるみ割り人形)やら、猫足のバスタブが踊っている。玩具箱をひっくり返したかのよう。手に持っているじょうろを担ぎながら、手遊びながら、踊り場を縦横無尽に歩き回る。歌い出しは少し歌いにくそうにしている印象からだんだんと声が伸びていく。

  2. 感電
    前の曲のテンションそのままに空を飛ぶMVが話題になった感電が二番手に。背景には遊園地ようなライティングが、まさにビカビカメリーゴーランドを思わせる、かのMVの雰囲気再現で熱い。四角いライトを組み合わせて電極で装飾しました、って感じが本当にまんまって感じ。ちなみにワンワンワンとにゃんにゃんにゃんでは犬と猫の絵文字がスクリーン上で縦に並んだ信号のように三つ点滅する様子を確認できる。なんだお茶目かよ。
    ラスサビ前の「肺に睡蓮 遠くにサイレン」の際は少し雰囲気が変わって雨降る窓に映像が変化。一点してシティライクなクールな印象に。この緩急がたまらないね。

  3. PLACEBO
    はい、野田洋次郎。洋次郎はでてこなかったけど。でも成立しているのが個人的には感動した。この曲熱烈な恋愛ソングと思っているので、湿っぽくて、熱っぽくて、でも軽やかな掛け合いがたまらない。会場内のランウェイでこちらを見ながら歌ってくれる米津玄師。一番は暖色(ベース黄色でオレンジや赤がさし色)、二番は寒色(ベースは水色、青やピンクがさし色)でラスサビにかけてそれぞれの色が混ざった演出なのがすごく良かった。ストレイシープのカラー?明確なパート分けの存在を感じることができて良かった。それぞれ寒色・暖色の時もグラデーションで色が流れていくのが綺麗。ラストダンサーさんがぐにゃぐにゃと骨入ってるんか?ってくらい崩れていく演出がすごくマッチして素敵だった。

  4. 迷える羊
    背景で流れている映像がモヤのかかった地図のようにも砂漠や岩場のような写真を編集したように見え、一方で溶かした鉱物にも思えた。会場中央ではダンサー(辻本さん)が茶色いスーツを着てとにかく跳ね回っている、躍動している。時に大木の成長のように、時に獣のように。大いなる地球という天体そのものを象徴するようなダンス。「千年後に未来には僕らは生きていない」というようにラスサビで粉々に三角形の粒になって霧散していったのが印象的。曲調の優しさと演奏の厳かさのアンバランスさがライブだとより一層強調される不思議な曲だった。歌のラストで辻本さんと米津玄師が重なる場面もあり。

  5. カナリヤ
    5曲目。カナリヤ。しだり落ちる黄色の光と頭上から降り注ぐ白く細い無数の光がオリのように米津玄師を取り囲む。彼を逃さないように、そこに留めておきたいという欲望がそのまま具現化したような綺麗な監獄。そんな様子が変わるのは二番のサビから。今まで彼を取り囲んでいた白い線が少しずつ開き、会場中を照らしていく。そして現れるのは一つの窓と2羽の黄色いカナリヤ。ふと目を離した刹那の間に彼らの姿は跡形もなく消えていた。でもそれでいいんだと思う。飛び出す瞬間は実はあっけなくて、日常的で、彼らにだけ特別であればいいと思った。

  6. Lemon
    米津玄師を一躍有名にした特別な曲。「誰もが知っているアーティスト」でいることを達成したこの歌は、どこか聴き慣れすぎてしまった気もしていた。気のせいだった。ライブで聴くとまた一味違う。丸く落とされた光の中で歌う彼が綺麗で。一方から強い黄色の光に照らされた彼のシルエットだけが映し出されて影絵のようにも感じられた。サビでは白い光が会場を駆け巡る。自分があなたたちの光なんだと伝えてくれているような、それはおこがましい勘違いだろうか?ラスサビは中央から、米津玄師から漏れ出てくるようにモヤのような明かりがだんだんと白い爆発するよう光に変化して、能力者じゃん。まじで。

  7. 海の幽霊
    涙腺崩壊ソング。歌の進行によって浅瀬から深海まで変化していくアニメーションがあまりに綺麗だった。光の粒を集めたような映像で、雨の日の街中をガラス越しに眺めたようでもあり、万華鏡を除いたようでもあり、変化していくカラーと歌の盛り上がりがマッチしてほんと最高以外いうことがなかった。サビ時にでてくる鯨のシルエットもまた印象的。でけー。ちなみにサビ前の溜めから音が爆発するような進行がオーケストラというか、ライブらしくない感覚があったりする。(オーケストラよく知らないのに…)ちなみに別ライブでは映像に変化があり、怪獣の子供から映像が引用されている。どっちも素敵やね。

  8. まちがいさがし
    「最近結婚した友達のためにつくった曲です」ってMCから始まるまちがいさがし。みんなを照らすのは緑と白の光。このカラーは飛燕を思わせる爽やかさ。懐かしい。新たに、前に進もうという意思を感じさせる始まりや契機にぴったりな曲だと感じた。そうだ演奏するメンバーの後ろでは鬱蒼とモヤが焚かれていて真っ逆さまに落っこちる感じだった、モヤの中に。

  9. アイネクライネ
    始まる前に時計の秒針が動く音が聞こえた気がした。
    聴きすぎてイントロで絶対にわかる。でも最強。何回聴いたっていいですからね。いつかはガンにも効く。でも今回は背景がお花らしきもので、基本はすごく綺麗な形なのにサビになるとぐちゃぐちゃになって、分け目が曖昧になる。そしてその瞬間はどこか女性器のような淫靡さを感じる。この映像の変化が、この曲にある「人間はどこまでいっても一つになんかなれない悲しみ」と「それを諦めて二人で生きていく」ことを表しているのではないかと考えていて、ほのぐらいハッピーさが大好きで大好きでほんとたまらん。(多分この考察そこそこしてるから過去も言ってるかも)
    どうやら演出がいくつかあるっぽい。石の扉にスート(トランプのマーク)が並ぶパターンもあるらしく、なんなんだ。教会なのかな。祈りの曲なのかな。

  10. Pale Blue
    始める前に警告音のような音が聞こえた気がした。
    背景が正しくペールブルー。というか音楽は続くギミックの抜けるような水色の空っぽい背景。踊り場ではダンサーさんがいちゃいちゃ(?)ダンスを披露、勢いよく抱きついていたのにブレない体感が素敵だね。
    ここから少し性的な話になってしまうのだけれど、背景に使われている絵具が混じっていく様子。液体が流動的に動いている様子、が受精のようにも、挿入のようにも思えてた。蛍光ピンクが水色にまざっていくんやなー、と。そこだけくっきりと浮き彫りになっていた。

  11. パプリカ
    米津玄師が真ん中の丸い高い奴に乗ってた!!!一番は立っていたし、二番はなんか座ってた!!!燃えるオレンジの背景を背に、サビでは白い花火がそこかしこで花開く。
    途中、彼の背後、まん丸から太陽が登ってきて、これは夕焼けではなく朝焼けなのかなと考えながらも、座り込んでパプリカを歌う米津玄師があまりに感情を揺り動かす。ラストは黒い背景にカラフルな花が咲き、そして散っていく。上からはひらひらと白い花が落ちてくる。散華という言葉が脳内ではひたすら点滅する終わりだった。

  12. ひまわり
    ここの前のMCでライブは自由に楽しんで欲しい、とライブのあり方を話した後にやるひまわり。ここからは早い曲をやりますと言ってやるひまわり。この曲のそこかしこにちりばめられたキーワードからイメージされる人物が、米津玄師にとって一つライブを象徴するものなんじゃないかと思えてしまって、そこからは泣くことしかできなかった。
    最終日には「今日だけね、もういない親友に歌います」と告げて歌ったらしい。そんなのずるいよ。
    ライブの演出もかっこよかったよ。黒と黄色って感じで。激しいライトの動きもあって、どこかリーダーのライブを彷彿とさせるそれで。でもそれ以上にこれをここで歌ってくれたことが嬉しくて、それ以外はあんまりなにもないや。ありがとう。

  13. アンビリーバーズ
    もうかなり古い曲になってしまったアンビリーバーズ。正直めっちゃかっこい。ライブ慣れしている感じがビンビンに伝わってきてとても良い。ここでの光の色は白なんだなと、いつも思う。ライブの非日常を、「現実はクソだ」と表現してしまえる彼の特別を演出する特別な一曲なんじゃないかとずっと思っている。中央に走る道を曲のときどきでカラフルな光が走っていたのだけれど一番のとき「赤、青、白」の三色でまさにライブグッズ、タオルのずれたトリコロールまんまで気づいた時は流石に衝撃が走りました。他のタイミングは赤白黄だったり、青白黄だったり、深読みのしすぎなんだろうかね。米津玄師にとっての高速道路ってなんなのだろうね。

  14. ゴーゴー幽霊船
    最高に楽しい、縦横無尽に走るライトが目に眩しく、背景の砂嵐がどこか懐かしい。数字の掛け声に合わせて、映画が始まる前のような黒い背景に白い番号が流れていく演出がより会場の一体感を煽っていてたまらなかった。

  15. ‪爱丽丝‬
    緑、ピンク、黄色、赤の丸い光が会場をぐちゃぐちゃと動いている。マーブルチョコ?いろいろな画像がスクリーンに映し出される。ブルーグレーの布の波打つ様子。なにか煙だかなにかしらがこんがらがっている様子。白黒の四角が重なった(QRコード簡易版みたい)かと思えば一気に広がって青とピンクに変化からサビへ落とし込まれる。サビのところは過去ライブとかと背景一緒な気がする、どこかに迷い込んだようなそこかしこをあてもなく歩いているようなアニメーションが毎度目に残る。あと今回ステージまでひかる感じもよかった。

  16. ピースサイン
    漫画のコマ割りっぽい感じで演者さん達が変わるがわる切り替わっていく様子が斬新で可愛かった。赤と青。カラーリングもどこかアメコミを彷彿とさせる感じでたまらない。ヒロアカ最高!ヒロアカ最高!もちろん米津玄師が掲げたピースサインがデカデカとモニターに映し出される瞬間は、胸熱。みんなで一緒にピース。さらに胸熱です。
    そして弾ける銀テープ。弾けて光って落ちてマーーーージでめっちゃ綺麗だった。赤と銀が艶々と煌めいてここからのライブでもずっと輝いていた。(よかった)

  17. KICK BACK
    や、やっちゃったやん。なに?ほんま……。もちろんやったらいいなって思ってたけど、でもやるとは思わなかった。赤、赤、赤、そして反転した黒で演出される血飛沫がチェーンソーマンでしかない。がなり立てる一歩手前みたいな無茶な歌い方が身を削って戦うデンジだし、カメラに向かって自撮りかましながら歌っちゃう感じとか自意識過剰っぽくて、自分に注目を集めたい思春期のデンジって感じだし、ベロとか出しちゃうし、両目見えてるし、ほんまありがとうございます、悔いとかないです、自分顔ファンいっすか?いやそもそも一生ファンです。キャラが憑依したようなその歌い方、作品への没入度がその悪魔とも評される解釈を生んでるんだなとすごく納得させられる時間だった。でかいお立ち台一面に米津玄師の顔が映し出されていたのはシンプルにウケた。

  18. 死神
    え?裸足?紫の座布団?=正座です。どうもありがとうございます。漫談です。映し出される水墨画のような蝋燭の揺らめきがその雰囲気をいっそう引き立てている。米津玄師の笑い方も歌ではなく、演じる笑いという感じがあって大層素晴らしい。ラスサビで光が大きく揺れたかと思ったときには黒いモヤが大きくなって蝋燭の炎を覆い被して見えなくしてしまった。終幕「ふっ」と息を吹く音がして、完全にその灯火は消えてしまった。

  19. ゆめうつつ
    そうか、シャボン玉。裸足のままでいろんなところ歩き回るし、こっち見て観客を覗き込んで歌ってくれるし、ゆめうつつなのは私たちなのかな。幸せすぎて。

  20. 馬と鹿
    前から後ろに流れていく床でダンサーを追い越していく演出が一番印象的だよね。力ずくって感じがよかった。MVの人をかき分けるのがリアルに再現されている感じとか「人間」と「神」の二極化というか、最終的にはたどり着けない、触れてはいけない存在の具現化って感じで。

  21. M八七
    なんて言えばいいのかな。粉々に割れた破片は鏡なんだと思うし、それらが集まってできた宝石はカラータイマーなのかなとか。このライブは時間制限があることとか、変身が溶けてしまうことなのかなとか。
    ミラーボールでピンクの細かい光が回って、orionを思い出させる演出。宇宙と星空と。それら中に放り出されたかのような浮遊感。終わりなんだけれど、現実離れしすぎていて時間の感覚が曖昧だ。(カラーがピンクだったのが大きな違いだけどこれはなにを表しているのだろうか)
    今までは明示的に終わりの掛け声があったけれど、それもなくて大きく一礼をしてエレベーターで下って行く、劇の一部のような終わり。

辺だけが白く光るエレベーターはまたあの地下駐車場に戻ってくる。壁に映る影と、車に乗り込む足は始まりのシーンを逆再生するかのようだった。あんなにてこずった駐車とは対照的に車は名残惜しさもなく、ぬるりと発進した。

登る車、また映る監視カメラの4画面。うたた寝の警備員。駐車券を差し込んでそこそこ明るい(渋谷っぽい)を走っていくnigiちゃん。流れるETA。

ETAとは、Estimated Time of Arrivalという英語表現の略語で、到着予定日/到着予定時刻を意味します。 どちらも元々は貿易用語で、船舶や航空機での輸出入、物流の現場で使用されることが多い言葉です。

https://sogyotecho.jp/qa/etd-or-eta/#:~:text=ETA%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81Estimated%20Time,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%84%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

そして映画さながらのエンドロール。さて自分が見ていたものはなんだったのか。ライブを見にきたはずなのに映画を観終わった後のようないつものライブとはちょっとだけズレた充足感。

ここまで印象的なこの演出から考えるにnigiちゃんというのは「幼い頃の自己認知」なのではないだろうか、と思った。

緑色のお面は、緑色のシャツに。
黄色とオレンジのボタンは、視力の大きく違う左右の目に。
モフモフで手足の大きなボディは、すらりとした188cmの身体に。

幼い米津玄師は他人の話を理解できず、自分のことを他とは違う怪獣だと考えていた。そんな彼の自己認知が今nigiちゃんという形で表現されたのだ。



ちなみに米津玄師の視力は0.15くらいで、不同視と過去の本人のツイートでも語られている。

ちなみに過去ボタンの目がつけられたキャラクターにはリトルキングがいるが、ジャガイモの王様でひとりでは何もできないらしい。可愛いね。

あまりにもいろんな要素が散りばめられたnigiちゃん。

その名前はどこから来たのか様々な考察がなされているが、その中の一つ「now i get it.」が個人的には一番しっくりくる。日本語の意味を当てるなら「やっとわかった」と訳されるその言葉は米津玄師の「本来のあるべき姿が」「他人の考えていることが」やっとわかったから。わからなかった怪物の自分に当てて「nigi」の名前をつけたんじゃないか。

引用『https://ejje.weblio.jp/content/now+i+get+it.』

さてLIVEという物語が終幕を迎えると、人間であった米津玄師は再び怪獣に変身。車に乗り込み颯爽と地下駐車場を後にする。

まだ夢うつつの警備員。その横を抜けてまだほの暗い地上のハイウェイへ向かう。窓に映る街並みはだんだんと赤らんでいき、まるく粒の光になって輝く朝日が綺麗だ。

はじまりからエンディングまで、一貫して映像で意識されていた「地下」と「地上」は「夢」と「現実」を明確に区分するキーポイントなのだろう。

ライブのMCで彼がしばしば口にする「日常はくそだ」というセリフ。

「ハレ」と「ケ」が区別はされていながらも、分離はしていないように。日常と非日常は決してかけ離れておらず、あくまで一続き(ひとつづき)のものだということを強く表現しているようにも感じられたのだ。

クソな日常もひとたびライブ会場に足を踏み入れれば、一瞬で最高な時間に変化する。だからこそこのくそったれな毎日を生き抜こうじゃないか、なんて、「song for you 聴こえてる? いつでもここにおいでよね」と語りかけるような映像なのではないか。最高じゃん。米津玄師。


最終的に高速道路に乗ったnigiちゃんはそのまま走り続けて映像も終わりを迎える。高速で思い出したのはアンビリーバーズの狼。(nigiちゃんもまだ腕しか見えていない段階では狼にも見えた)

光に溶けていく狼のいた、nigiちゃんが走り続けてフェードした高速道路。思い出されるのはアンビリーバーズのこの一節。

「ヘッドライトに押し出されて僕らは歩いた ハイウェイの上を この道の先を祈っていた シャングリラを夢見ていた」

望む理想郷を目指しこれからもその道をずっと進んでいく彼と、それに続く私たちにぴったりな言葉こそ「音楽はつづく」なのではないだろうか。


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