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「こんなの日本酒じゃない!」が賛辞になる日|注目のSAKEメーカー「WAKAZE」へ

日本酒の未来をガラリと変えるかもしれない。
今、大注目の気鋭酒メーカー「WAKAZE」にお邪魔しました。

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東京・三軒茶屋。飲食店ひしめく食の街の一角に「蔵」があります。
一見するとカジュアルなカフェバーのよう。「酒造」というより「都市型マイクロブルワリー」といった趣です。

まず、WAZAKEの簡単な紹介を

WAZAKE(https://wakaze.jp/whim/)山形県に本社をおく酒メーカー。酒の委託醸造と、三軒茶屋のブルワリーで醸造酒を製造・販売する。フレーバーを加えた「ボタニカルSAKE」を打ち出して話題に。今年はフランス蔵設立予定。

と、ざっくり聞くだけでも「なにかおもしろそうなことが起こりそう」なワクワク感に溢れたメーカーさんです。

酒造り+飲食=「新しいSAKE体験」

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「WAKAZE」では、酒造りの空間と飲食店スペースがガラス戸1枚をはさんで並びます。ここを訪れたお客さんは、
❶酒造りの様子を見学できる(こうやってお酒作るんだー)
❷実際にできたお酒を飲むことができる(こんな味なんだー)
という、「新しいお酒を知る、味わう」体験ができます。

酒蔵といえば「綺麗な水」「スペース」が必要なため地方に多いのですが、体験してもらうには都市部が最適。最近日本でも増えている都市型ブルワリーの流れですが、それを「日本の酒」でやっているところが熱いです。

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この日は「火入れ」をしていました。瓶火入れなんですねー。1本1本手作業で行なっています。醸造スペースにはタンクが4つ(徐々に増やしたそう)で、スタッフの方がすれ違うのもギリギリなほど、最低限のスペースでやっています。

精米、製麴までは本社の山形で行い、ここ三茶では酒母以降の工程を行なっています。(水は三茶エリアの湧水!このへんのこだわりもいいです)。ちなみに杜氏は新政酒造で修業されていたそうです。

「日本酒」ではない、新しいSAKEで勝負

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ここまで紹介文で「日本酒」という言葉を使っていません。実はWAKAZEの酒は「日本酒(清酒)」ではないのです。
お店の方(すごくいろいろお教えいただきありがとうございます)曰く、今の日本酒業界は新規参入ができない(免許が下りない)。そこでWAKAZEの酒はすべて「その他の醸造酒」として製造しているそうです。

写真はWAKAZEが三軒茶屋で醸造したフレッシュな「どぶろく」です。

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この日は4種類から選べたのですが、5号酵母を使っていたり、生酛造りにチャレンジしたりと、タンクごとに面白い造りをしています。

生酛と5号をいただいたのですが、搾りたてのお酒とあってとにかく「ピチピチ」「ぷちぷち」と口の中で心地い刺激があり「生き物飲んでるなー」といった印象。甘酸っぱくて低アルコール、かなり飲みやすいです。

未知との遭遇「ボタニカルSAKE」

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続いてが、フレーバーを加えた「ボタニカルSAKE」。酒を仕込むタイミングでフレーバーを加えるという、聞いたこともない独自のSAKEです。写真は副原料に「ゆず、山椒、レモン」を使った「SORRA」です。白麹四段仕込み。

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こちらは「TERRA」。副原料に「生姜、山椒、ゆず」が入ったパンチある味わい。造りはなんと「水酛」。

このように酒ごとに造りの「遊び」ができるのは、どぶろく以外は全国の酒蔵に「委託醸造」しているから。例えば樽熟成させたSOL(ここは日本酒、になるので委託になるそう)は「高温山廃」で知られる木戸泉さんだそう。

新しいアイデアに全国の酒蔵さんが賛同されているというのがいいですね。

これはもはや「日本酒」ではない!

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「?…これは日本酒じゃない」。これが、ボタニカルSAKEを飲んだ率直な感想です。よい、悪いではなく完全に「別もの」。

WAKAZEのSAKE造りは「日本酒」という枠に入れない故の「技」かと思うのですが、これが功を奏しているように思います。

「日本酒」にはある程度の「型」があるように感じます。「鑑評会受賞」「IWC受賞」「SAKE COMPETITION」など、もちろん細かいところは違いますが、「いい日本酒」を見る上での「ポイント」は重なるもの。新規メーカーが「日本酒」で戦うとなると、この世界のトップと比較されます。

しかしWAKAZEの酒はそもそも「日本酒」ではないから、「日本酒」を飲む(評価する)体験とは、異なる次元で楽しみ方ができる。例えば先ほどの「TERRA」は、トニックウォーターで割るのがおすすめだそう。甘み、香り、旨み、余韻…などではなく「生姜。炭酸割り!」。言語が違う!おもしろい!

フランスで新蔵建造へ!

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そんなWAKAZEは現在、フランス・パリ酒蔵設立へ向けたクラウドファンディングを行なっています。日本国内ではできない「日本酒」を、「フランス」で実現する。これはもう、応援せずにはいられません。

最後にとても個人的な感想と、勝手な願いを。
WAKAZEさんは「日本酒」の壁をぶち壊した稀有な存在です。フランスで清酒の造り方をしても、当然原料も水も、日常にある食事も、飲む人だって 日本とは全然違うでしょう。だからフランスでは「日本酒らしさ」以上に、現地の人が日常酒として飲める「地酒」として愛されてほしい。

「こんなの日本酒じゃない!」という日本人の言葉は、最大の賛辞に変わる可能性を秘めています。そのとき、日本国内の「日本酒」の常識も一変するのではないでしょうか。もちろん、おいしい方向に。

もちろん、お酒を飲みます。