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日本酒蔵のエンタメ化が加速する! 豊島屋フェスタで東村山に人が殺到するわけ

「フェスタ」という字面から、どんな風景をイメージしますか?
さびれた商店街やデパートの端っこでやっている、ちいさなバザー、見向きもされない素人の催し…。

そんなイメージでした。豊島屋フェスタに出会う前までは。

豊島屋フェスタとは?(参加前の認識)
東京都東村山市に蔵を構える「豊島屋酒造」が行う、秋の蔵開き(酒造りの開始・新酒のお披露目に地元の人たちをまねくミニイベント)。
※ここまでが参加前の印象です。
豊島屋酒造は近年「屋守(おくのかみ)」で人気急上昇中の気鋭蔵。

秋〜冬といえば蔵開きの季節。東京は東村山にある豊島屋酒造の蔵開きにいってきました。

チケット完売!東村山駅がパンク!

豊島屋フェスタは午前11:00に開場。最寄りの東村山駅からは徒歩20分(!)。東村山駅からバスでもいけます。

という情報をもとに、10:00すぎくらいに東村山駅に到着しました。東京の西のほうの、はっきりいうと田舎です。そこが…改札がパンク寸前になっている。東京公演時の水道橋駅のように、人人人が。酒蔵の人なのか、必死に出口へ誘導する男性。その手には「豊島屋フェスタのチケットは完売です!」のプラカード。

…予想をかるく上回っていました。

当然バスなんか乗れません。でも大丈夫。駅から蔵に向かう列が自然とできていたので、流れに乗ればいけます。コンサートとか、Jリーグのスタジアムにむかうそれでした。田舎道を20分。

いよいよ豊島屋酒造の近くにたどり着いたとき、歩みが止まります。開場(蔵開き)を待つ行列です。

蔵が…見えない! 皆が向かっているのは「蔵」です。お酒を造るいち企業です。そこにいま、1500人(チケット完売)が列をなしています。

午前から酒を飲むためにこんなたくさんの人が並んで…大丈夫か。

午前11:00、ゆっくり列がすすみ、ついに蔵の中へ。
「地方のしょぼいフェスタ」のイメージは吹き飛んでいます。予備知識なしに、すごいところにきてしまった。

緑のユニホームはチーム豊島屋酒造。ぜんぜん列すすまない。日曜の午前から…本当におつかれさまです。

入場時にいただけるグラス。本日1日、これでお酒を楽しみます。

限定ガチャもあり、やりました。屋守(おくのかみ)のピンバッチ欲しい人はメッセージを。

食べて、飲んで、のクオリティが高い!

あらためて言いますが、豊島屋酒造は東村山の酒造です。
そんな蔵の敷地内でお酒を楽しむというのが「蔵開き」。だからメインは豊島屋のお酒。

フェスタ限定酒の無濾過生原酒をはじめ、新酒搾りたて、亀口(つまり槽口、上槽時にそのまま瓶詰め)など「新酒お披露目会」らしいお酒を中心に9種類。200円〜からいただけます。

蔵から一度も出ていないできたてのお酒、これはおいしい。

また、「おつまみ」のブースもでていました。「お酒のおとも」だと気軽にのぞいて驚きました。すごかった。

●主な出店と提供メニュー(一部)
四谷舟町「和酒 月肴」…果実の白和、酒粕入りレーズンバター、根菜メンチカツ
五反田「SAKE story」…金山寺味噌のおつまみバスクリーズケーキ、山形の芋煮
南千住「千手かんのん」&入谷「酒処 侘助」…日本酒のための焼売、北海道産北寄貝酒蒸し
成績桜ヶ丘「SAKENOWA六吉」…天使の海老、豚軟骨の煮込み
「東京カリー番長」…カレー(チャール付き)
南浦和「もつ焼きふくいち」…豚カシラ串罰鯖燻製

なぜ、東村山にみなさまが…と驚きます。

(…最高でした)

行列に並んでいる時、近くに並んでいた方(常連ご夫婦)から「人気の食べ物やお酒は午前で終わる。また、テーブルも争奪戦。ゆっくりお酒とおつまみを置けるスペースを確保した方がいい…」とアドバイスをいただきましたが、やっとわかってきました。肉フェスとかラーメンフェスとか、そんな食イベントに近いノリがあるみたいです。

個人的におかわりを重ねたのが「たる酒」(奥)。木の香りがいい。

落語にクラブにサンバに映画!蔵開きなのに「催し」がすごい!

おいしい料理とお酒があって、豊島屋フェスには音楽もある。生演奏で。蔵の中央に「特設ステージ」があり、1日を通してさまざまなアーティストが登場します。

別の場所では落語も!! 

東村山出身の三遊亭兼太郎さんの「お酒にちなんだ落語」を楽しみました。もちろん飲みながら。日本酒と落語って、またとてもよく合います。

さらにクラブブースもあり!!豊島屋の人気銘柄「屋守」は軽くフレッシュな味が多いので、こういう雰囲気にも合います。

映画!?全国を旅する移動映画館の「キノ・イグルー」による特設上映。お客さんの酔い具合をみつつ、この日にあった短編映画とセレクトしてくれました。(トムとジェリー、おもしろかった)

まだまだあります!

ステージに戻るとサンバが!日本酒なにも関係ない。けどお酒入っているので愉快になります。

ラップまで!!ステージ上はこちらも東村山出身のラッパー・バケラッタさん。
「SAKE が 好き!(SAKE が 好き!)」「飲み干せ!」のコールアンドレスポンスに、東村山がひとつになりました。

まだまだほかにもありますが、見れたのは以上。これらが1日中、蔵内で同時多発的におこなわれるのです。昼から酒ってどこか背徳感があるのですが、それを吹き飛ばすほどの充実感。そして、その催しも日本酒(そして酒)とまたよく合うのがいいです。

「飲酒のエンタメ化」は酒蔵のあるべき姿?

(映画館ブースで提供されていたソルティドッグ風SAKE。場所ごとに異なるお酒の提案もあっておもしろい!)

「豊島屋フェスタ」の存在を聞いたとき(この時点では「やたらおもしろい蔵開き」程度)は、「酒蔵」がそこまでやることに、あまりピンときていませんでした。お酒を製造する企業が、なぜ? と。

(燗つけ名人だそうで、めちゃくちゃおいしかったです。あまりの燗のレベルがすごく誰も交代できないため、この方だけ休憩なしなのだとか…)

敷地内には、忙しそうに(そして楽しそうに)走りまわる緑色のユニホームの人たちがあちこちに(そこらのテーマパークより全然多い)。

酒蔵の機能

これは醸造センターの先生に聞いたのですが、かつて日本酒蔵は地域の中心地であり、「自分たちの地域の酒」という意味で「地酒」といわれていたのではないかとのこと。たしかに、日本のあらゆる行事の中心には「お酒」があります。酒蔵とはそれだけ影響力があり、人と人をつなぐ「社会」の役割をになっていたのかもしれません。

お酒の機能

①お酒=美味いから飲む。酔うから飲む。というのは当然ですが、これだとライバルは他のお酒すべて。ワインとかストロングとか。しかし、

②お酒=余暇の楽しみ。コミュニケーション。と見てみると、同じ役割を果たすのはライブやコンサートなどの娯楽施設かもしれない、カフェ、習い事、ネトフリ、NOTEなどなど。

いまいろいろなところで「お酒離れ」といわれていて、また飽和状態にある多くの業界で似たうごきがありますが、改めて思いました。お酒とはエンタメなのです。多分。

酒蔵が「楽しい時間」をまるごと提供してくれるというのは、変化ではなく回帰なのではと思います。昔は今みたいな楽しみ(エンタメ的な)が少なかったことを考えると、なおさら。

とにかく、酒蔵の「蔵開き」を、ただのお酒お披露目ではなく、参加者にとって(待ちに待った休日)を一大エンタメショーに昇華させてくれた「豊島屋酒造」は、「次世代的かつ本質的な日本酒蔵」だと思います。酔いながらですが。

参加後改めて、豊島屋フェスタとは?(豊島屋酒造さまより)
従来の蔵開きをアップデートし、「フード」「クラブ」「ステージ」「シネマ」「和物」などを用意してさまざまなカルチャーを通して日本酒と出会い、また日本酒を通してさまざまなカルチャーと出会える「カルチャーの交差点」となるイベントとして開催しています。

おまけです。謎のおじいさんが「人間国宝の酒器で飲んでみろ!」と高価な器を出して(がたがたのテーブルの上に)、それで飲ませてもらいました。どなたかわかりませんが、最高においしかったです。

「屋守」、(ここ2〜3年ずっと好き)いちおしのお酒です!

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