ワンオペの店が好き!「でんや御馳走」「Talkin' Loud」で店主の偏愛を堪能
ワンオペの飲み屋さんが好きです。
数名で埋まるほどの小さな酒場で、カウンターの中に大将がひとり立ち、自分の好きな料理と酒をふるまい、唯一無二の宇宙をつくる。
最近出会った、おすすめのワンオペ酒場2軒を紹介します。
大塚「でんや御馳走」/荒木町(四谷三丁目)「Talkin' Loud」
南大塚 でんや御馳走(大塚)
2023年3月、東京・大塚駅の近くにオープンした日本酒とおばんざいのお店です。
大塚に詳しい日本酒好きでしたら「ちょこだま」といったほうが通じるかもしれません。日本酒専門店「地酒屋こだま」の店主が不定期で開催していた間借り営業「ちょこだま」の料理人・渡辺直樹さん(通称ちょびんさん。ちょびん+こだま=ちょこだま)によるお店です。
ちなみに「でんや御馳走」という店名は、もともとこの場所にあったお店の名前。店名も店内もそのまま受け継いで営業しています。
「でんや御馳走」の特徴は「お通し」である「あて盛り」。おばんざい3品か6品から選ぶことができます。普通のお店では「とりあえず」といった軽い扱いの「お通し」ですが、ここではお通しでかなり満足できるのです。
日本酒は「地酒屋こだま」をはじめ、ちょびんさんの料理が進むものばかり。90ml(半合)で400円〜と、かなり安いです。
この「あて盛り」の満足度がとっても高い&お酒が進むため、個別オーダーは2〜3品程度でも十分にお腹いっぱいになります。
また、「でんや御馳走」の単品メニューの多くは、(小)を選ぶことができます。例えば写真の南蛮漬けだと、通常は500円で、小だと300円。ひとりでいろいろ味わいたいときにはうれしい仕組みです。
ふと上を見ると、仮面ライダーの缶?が。
実はちょびんさん、仮面ライダーの大ファン(シンはまだ見ていないそう)で、DVDで全て持っているとのこと。本人は「もっとライダーで店内を飾らなきゃ♪」と楽しそうにお話しします。
メニューの「おばんざい」が多いためか、ちょびんさんの雰囲気からか、カウンターの数組が同時に飲んだり頼んだりしていても、せわしない雰囲気はありません。
慌てず騒がず、まったり、いろいろつまんで飲みたいときにぴったりです。ひとりで通いたいです。
Talkin' Loud(荒木町)
東京の飲み屋街の聖地・荒木町にある「日本酒の品揃えがすごい!」と噂の日本酒バー。伝説的レコードレーベルを冠した店名から、店主の趣味の香りが全開です。
通常はバースタイルで単品を注文するTalkin' Loudですが、前日までに予約すると「3時間利き酒コース(6品料理付き)」が楽しめます。それも6000円と破格です。
店主の石田さん曰く利き酒コースとはつまり「わんこ日本酒」。店主セレクトのお酒が自動的に出てきて、飲み終わると勝手に次のお酒が出てくる、というもの。少量ずついろいろな味を楽しめます。
日本酒はコース料理の展開にあわせて、軽いものから徐々に味の濃いものへとシフトしていきます。味のタイプを変えつつその時々の料理との「ちょうどいいペアリング」を楽しめるのが嬉しいです。
全国の酒屋さんから仕入れているという数十種類の日本酒は、人気銘柄から、あまり見かけないものまでさまざま。「次はこんなお酒が来た!」という期待と驚きが続きます。
日本酒ラインナップは、そのお店ならではの「趣味・思考」が表れます。新しいお店に行く時、知らないお酒がたくさんあるのはシンプルに楽しいものです。
「ちなみにこのお酒は、国道115号沿いの田んぼで育てたお米を使ってます」と店主。このように、1杯ごとにお酒の解説をしてもらえます。
料理は7品。前菜から〆まで、お酒のすすむメニューが続きます。少量でいろいろな味を楽しめるのも、コースの醍醐味です。
お客さんは常連の方が大半で、近隣の飲食店の方もきていました。同業者に愛されるお店にハズレはない、と勝手に思っています。
このTalkin' Loudですが、店主の石田さんは同じ荒木町にあるジャズと日本酒のお店で修業したのち独立したそうです。「同じ街にお店を出してお客さんの取り合いにならないか」と心配になりますが、むしろその逆。
一次会と二次会でハシゴしてもらったり、片方が満席の時に新規のお客さんを案内したりと、関係性のあるまま共存しているそう。多くの個人店がひしめく荒木町ならではの、飲み屋のエコシステムを感じました。
3時間、何十種類もの日本酒をいただきました。多種多様なタイプの日本酒を店主の解説とともに味わうのは、美術館で音声解説を聞きながら巡っているような、ある種のエンタメ体験でした。
お酒のラインナップはどんどん変わるそう。次回はまた全然別のラインナップなのですね、楽しみです。
だから、ワンオペのお店が好き
今回、2つのワンオペのお店を紹介しました。最後に、訪れる方の楽しみ方にも少し触れます。
規模の大きなお店でメニューから何かを選ぶときは「自分が食べたいもの」「自分が好きなもの」と、自分起点で考えます。
一方ワンオペのお店に訪れたときは、「自分」ではなく「お店起点」の考えになります。主役は店主で、自分はただの脇役。店主のおすすめを味わいたい。
「おすすめ/おまかせがいい」というと「それはお店にとって都合のいいメニューだ」という意見を聞くこともありますが、そもそも「店の『人』を知りたいのだから、都合よくて全然OK」というテンションです。
「銘柄」「コスパ」「原価」「おもてなし」「量」「オペレーション」などはどうでもいい。熱くるしく言うのであれば「俺は他の誰でもない、あなたのうまいと思う酒と料理を味わいたいんだ!」という感じです。
そしてそれほど惚れさせてくれるほどの偏愛のあるワンオペ酒場が、やっぱり好きです。ごちそうさまでした。とにかく、どちらも美味しくて最高なワンオペ飲み屋さんでした。
おまけ
今回紹介したのは新たにお邪魔した2軒ですが、それ以外にも素敵なワンオペ酒場はたくさん。これまでにnoteで紹介したワンオペ酒場を紹介します。
さけとギャラリー晴陽(経堂)
「お通し燗」で迎えてくれる熱燗のお店。つまみからメインまでついた「晴陽セット(3300円)」は必須です!
神棚(四谷三丁目)
コースのみ。八寸からメインまで「酒に合う」料理をおもいっきり楽しめます。お酒はなんと「無限に出てきて、カウンターの席をお酒が回っていく(飲んだら横の席へパス)」という、独自ワンオペスタイル。
HuQu(大塚)
コース一本。上品&遊び心のあるメニューと、華やか〜熱燗まで幅広い日本酒が堪能できます。一気に4本出てくるなど、こちらもワンオペ独自のシステムに注目。
覇通福らーめん(名古屋)
ラーメン店なのに、熟成酒が強くて、それにあう一品料理(予約制)がおすすめ。創作料理がおいしすぎてラーメンに辿り着けませんでした。ラーメン店なのに。
もちろん、お酒を飲みます。