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【推薦の店へ行く】 「神棚」上品な和の料理と、カオスな日本酒群(四谷三丁目)

私が飲み屋さんを開拓する時、多くは「人のおすすめのお店」を選びます。飲食関係の人や料理研究家さん、酒関連のお仕事をしている、いわゆる「酒飲みのプロ」たちをSNSでストーキングし、彼らを唸らせた店をあとでこっそり向かう、というものです。

今回は東京・荒木町にある「神棚」にいってきました。

やっぱりプロたちの目利きってすごいです。とても、とてもよかったです。
品のいい料理とタガの外れた日本酒たちを楽しみましたので、紹介します。

飲み屋の聖地・荒木町の新店「神棚」

場所は東京・四谷三丁目近くにある「荒木町」。この辺りは日本酒の有名なお店が集中している激戦区です。賑やかな飲み屋街の中心近く、素通りしそうなほど目立たない階段の先が入り口です。「ふらりと寄る」のではなく、がっつり予約していくタイプのお店です。

(…静謐!!)

長いL字カウンター、木、蝋燭、白い壺。BGMはなし。
背筋がピンと伸びそうな空間です。

(和食のタイプの木って、どこか神々しいです)

しかし、決して高級店というわけではなく、むしろリーズナブル。コースは3000円、5000円(今回はこれ)、8000円。お酒は3000円で基本的に飲み放題です。

八寸がすごい!

スタートは八寸です。すごいです。八寸好きにはたまりません。

お酒のあてでありながら味は優しめ。野菜のコクか苦さとかをしみじみと楽しめます。この時点でもうかなり好きです。

これだけあると、お酒が何杯も飲めてしまいそうです。

日本酒はカオス!勝手に飲むスタイル

大将が無言で日本酒3本をカウンターに並べます。この中から選ぶのかと思いきや「好きに注いで飲んでください」とのこと。料理の静謐さと逆の「セルフ飲み」スタイルです。

(せっかくなので少量ずついろいろ飲みます)

セルフスタイルの理由は「ワンオペで手が回らないので」とのこと。そういう理由とはいえ、どれも最初のいっぱいにぴったりのお酒です。野菜の優しい味わいも邪魔しないので、どんどんすすみます。

(!!!増えた)

大将が無言で新しい日本酒が並べます。
「遠慮せず、どんどん好きなものを飲んでくださいね」とのこと。神棚では、このようにお酒がほぼ自動ででてきます。少し飲んだ瓶はカウンターの別の場所に置いておく(右手に並んだお酒を左手に移動する)と、次に大将がやってきたときに片付けてくれる、というもの。

日本酒たちが回転寿司のように勝手にやってきて、飲み手を通過して、去っていきます。このスタイルは初めてですが、

①注文しなくていい
②好きなお酒を選べる 
③知らないお酒と出会える 
④少量ずつ飲み比べられる 

などを同時に実現してくれます。

海の幸にあわせて日本酒も加速

刺身、うまいです。さきほどまで「野菜おいしい」としみじみしていましたが、動物的なおいしさはまた別です。食べる速度、飲む速度が自動で上がります。

次にやってきたのはロ万(裏)と花陽浴。どちらもボリュームのある甘みで、刺身、そして醤油に合います。

そしてお酒が増えます。料理が端正な分、お酒がどこどこ出てくることが次第におもしろくなってきます。

牡蠣グラタン。見た目通り、有無をいわさずおいしいやつです。

そして次のお酒も登場。中央の紀土「宙へ」は、民間ロケットの燃料になったことで話題になりました。左の遊穂は酵母無添加。宇宙人の絵は「サンダー君」で、地球に不時着して現在は蔵でアルバイトをしている設定です。パワーがあり、牡蠣とよくあいます。

肉には渋いお酒も!

肉です。わさびでいただくいい肉です。これも本能的においしいです。

次の酒たち。このあたりで玉櫻、雁木がやってくるのがうれしいです。

そして〆のうどんです。満腹ですし、お酒も「もう出さなくていいです」と途中でストップをかけました。それくらい、バグったように出てきます。

静謐とラフが同居する心地よさがある

「笑顔は苦手で…」とはにかむ店主の丹生谷さん。懐石料理出身で、四谷にお店をかまえて30年以上(「神棚」は今年2月オープン)の和の職人。一見、寡黙そうですが、常連の方からは「おっちゃん」と親しまれていました。

神棚、おすすめです。

静謐な空間と、奇をてらわない品のある料理。そしてあえて力を抜くかのようなカオスな日本酒。お酒に対する大らかさは「上質だけど気は張らなくていい」とでもいうかのようです。

お酒好きにとって、とても心地いいひとときでした。

ごちそうさまでした。


もちろん、お酒を飲みます。