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八寸が好き。外食の魅力が凝縮されたワンプレートの世界

「八寸」とは、「8寸(約24cm)のお盆」であり、その盆にもりつけた酒の肴たち。和食のお店では、前半にでてくることが多いです。「これらを摘んで酒のんで、ちょっと待っててください」というように。

高級店などほとんどいかない(いけない)私の中で、八寸は「ワンプレートつまみ盛り合わせ」として認識されています。(ですので、ここから書くのはすべて正式な八寸ではなく「つまみもり」の八寸です)

私は「八寸」が大好きです。今は酒場になかなか行けないため、特に印象的だった5つのお店の八寸(つまみもり)を紹介します。早くいきたい。

ちび、ちびが食欲と期待を高める「Huqu」の八寸

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大塚にある創作和食のお店、Huquの八寸です。これが、自分の中では「八寸らしい八寸」。海の幸、山の幸がひとくちサイズでもられています。

ちなみに、お皿の向こうに並ぶお酒は「八寸に合わせる4杯の日本酒」。組み合わせを変えながらちびちびいくのが楽しいのです。

出てくるのはコースの序盤。カウンターの向こうで動く店主を眺めながら「ここからどんな料理とお酒が出てくるだろうか」と期待が高まります。

蓋を開ける行為が楽しい「SAKE Story」の八寸

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五反田の「SAKE Story」は、3ヶ月ごとに「ある地域」をテーマにした料理をお酒を楽しめます。最初に登場するのはこの重箱。中には今回のテーマ(この時は中部地方)の肴が数種類ならびます。

これはもう、蓋あける瞬間が楽しい。初めて出会う「地域の味」と出会い、どんな味か、地域でどう親しまれているかを聞き、実際に味わう。単純な「おいしさ」ではなく、「おもしろい」食体験です。当然、お酒数杯が溶けます。

「数種類のつまみを頼むのと同じ」といえばそれまでですが、自らオーダーするタイプならなかなか候補に入らない「漬物」などは、こういうスタイルだから楽しめるもの。「この味が食べたい!」ではなく、「今日、このお店ではどんな味がやってくるか?」という楽しみです。

これぞ酒場の良心。日本酒を溶かす「たちばな」の八寸

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祖師ヶ谷大蔵にある「たちばな」。メニュー名「もりあわせ」で、「八寸」ではないのですが、いいのです。これはとてもいい八寸的なものです。

貝に塩辛、タコキムチ、おひたしなど、いろいろなタイプのつまみが並びます。素朴な味があれば辛いものもあり、食感もコリコリがあれば、柔らかなものもあり、お皿のなかにさまざまな情報が詰まっています。単調にならず、これだけで満足できるほどの楽しさを与えてくれる。

「『おまかせ』はお店都合で出されるから損」のような声を聞いたことがありますが、私は逆だと思います。八寸の構成は、酒場の良心そのもの。お店のスタイルや考えが感じられる気がします。

ちなみに左上の白いもの、たくあんの中に具をつめた、たしか「なみだ」というもの。こういうひとてま、本当に好きです。

もはやメイン盛り。お店の「顔」が揃う「きんぼし」の八寸

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ここらへんから「もはや八寸じゃない」レベルになってきます。秋葉原「きんぼし」名物の「おひとりさまプレート」(要予約)です。

つまみ系だけでなく、お刺身や揚げ物まで並ぶプレートは、まさにオールスター。おすすめの楽しみ方は「お酒」も「おすすめ」してもらうこと。八寸とは「お店が提案するおいしさ」を楽しめるもの。せっかくなら合わせるお酒も「お店の考える組み合わせ」が楽しいです。

また、これだけ量があると、ひとくちずつお酒を合わせて行くという、ペアリング探しの遊びもできます。口のなかで味や食感、お酒の相性がころころ変わるので、無限ループに突入できます。

「ごちゃっと」大歓迎。カレー×日本酒イベントでの八寸

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もはや、八寸じゃないです。

ではなにかというと、大島にある「5510」のカレー&日本酒イベントで登場した巨大なスパイスつまみ盛り。

八寸というと「ひと口の料理がバランスよく配置されている」という美学みたいなのを感じますが、これはその逆。「ごちゃっと」しています。

お盆の上に点々とのせる世界があるのであれば、どうでもよくなるおいしさの暴力だってある。スパイスのつまみは「味が混ざったらそれはそれでおいしい」んです。さらになぜか、お酒を飲まないひとの多いインドの惣菜は酒によく合います。

八寸は、酒場で飲む楽しさが凝縮されている

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(これはどこかでいただいたつまみ盛り)

お店の個性、特に「お店が考えるお酒の楽しみ方」が伝わってくる八寸。家ではなかなかできない品数と組み合わせとプロの手間、見た目の楽しさも加わるこの1皿を前に、じっくり飲みます。

組み合わせはもちろん、食べる順番を考えるのも楽しいし、好きなのを最初に食べても最後に残してもいい。そうしながら次のメニューを考えるのもいい。

私がお店でお酒を飲む、その楽しさの半分以上が、決してメインメニューではないこの「八寸」にあるのです。

ーー飲みに行きたい。

紹介したお店(の一部)はこちら


もちろん、お酒を飲みます。