見出し画像

福岡は、うどん屋で飲む。ハイボール150円、もつ鍋290円の楽園【ウエスト】へ

「実は福岡民は、ラーメン以上にうどんが好き」

というのは、わりと聞く話です。実際、町にはたくさんのうどん店があります。人気ラーメン店に観光客をはじめとする行列ができている一方、うどんはチェーン店が多く、だいたい地元の人たちがさっと入ってくってサッとでる、といった光景が見られます。

仕事で福岡に滞在することが増え、チェーンうどん店のある光景も慣れてきた頃、さらに「うどんのウエストは、居酒屋使いがいい」という話を耳にしました。

福岡うどん三大チェーンは「牧のうどん」「資さんうどん」「ウエスト」。一角をしめる「ウエスト」は、天ぷらをはじめとするサイドメニューが豊富で、居酒屋としても有能だというのです。

上品な印象のある「蕎麦屋で一杯」と対極にある、意識低い「うどん酒」に行ってきました。先に言いますが、いいです。また行きます。

中洲川端の地下1F「うどんのウエスト」へ

ウエストの店舗数は151。都市部から住宅地、ロードサイドとあらゆる場所に進出しています。中でも「居酒屋づかい」に選んだのは、九州を代表する繁華街・中洲にある「ウエスト ゲイツ店」です。

「ゲイツ」とは、地下1F、地上11Fからなる複合商業施設ビル。印象的なのは、入居施設の顔ぶれ。

「けいりんオートレース場外車券売場」「地方競馬 共同場外発売所」「カレーパン専門店・小麦の禁断症状」「ゴルフバー」「驚安の殿堂 ドン・キホーテ」「くら寿司」「牛角」「パーソナルジム」!

欲のビルです。
人間の欲を解消する、欲望の天国です。

そんなゲイツの地下1F、地下鉄駅直結に、「うどんのウエスト」があります。いろいろな念が堆積した独特の空気に、ワクワクします。

「うどん」と「居酒屋」が併記されています

ここからウエスト飲みの模様と、その楽しみ方を解説します。

ウエストは食券制!提供が圧倒的に早い

うどんチェーンがメインであるウエストは、店の入口にある券売機でオーダーします。席でのんびり選ぶような時間はなし。“とりあえず”の感覚でオーダーします。

ギューン!とうなるタイプの券売機

そしてこの食券機、食券を買った時点でオーダーが入るタイプです。食券を買い、席についたと思ったらすぐに「224番で注文のお客様〜」と声がかかります。

取りに行こうと立ち上がりかけると、「224番で注文のお客様〜」と言いながら、お店の人が席まで持ってきてくれました。

生ビール290円。普通にちゃんと、ちゃんとおいしい生ビールです。
こんなふうに、ドリンクなどは発券から1分もかからないくらいで出てきます。まとめての注文ではなく「おかわりの度に食券機へオーダーしに行く」が、ウエスト飲みの基本です。

博多名物もつ鍋、290円!

見てください、もつ鍋が1人前290円(注文は2人前〜)。ミラノ風ドリアレベルです。

うん、普通にうまいです。しっかりモツが入っていて、ごぼうなどの根菜もたくさん。心から、これで十分です。うどんチェーン店に来ている感覚が次第になくなってきます。

ハイボール150円、自分のタイミングで食券機へ

鍋の間に食券機へ向かい、ハイボール150円をおかわり。ふとソフトドリンクコーナーをみると、ウーロン茶が210円。酒の方が安い。

ぐつぐつたぎるもつ鍋の旨みを、ハイボールで流します。

周りとみると、店内には他にも「居酒屋づかい」をしているテーブルがありました。おそらく会社員、20代〜50代くらいの、年齢幅のあるグループです。

おそらく最年少だろう若手社員が「ちょっとおかわりしてきます」と、財布持って食券機へ。その向かう様子を見て気づきました。ウエストのみは、おごるとか、気をつかって一緒に注文とか、支払いどうしようという、煩わしさがないことに。

好きな分を、好きなタイミングで、自分で発券する。そもそもめちゃくちゃ安い&早く出てくるので、「誰さんの分も一緒に」とか余計な気遣いがいらなくなります。ウエストは、仕事での飲みにも使えるのです。

丸天(250円)。うどんのトッピングはつまみになります

居酒屋以外で居酒屋飲みする楽しみ

黒霧島の炭酸割り=黒ッキリボール

基本がうどんチェーンとあり、お店はつねに注文が飛び交っています。その中でうごく店員さんは、すべての動きが高速。キビキビと動き、メニューを出し、片付ける。大量のオーダーを捌くプロ中のプロです。

もちろん飲み屋さんの繁盛店で働く人もとても忙しそうですが、ウエストの方々の動きは、それとはまるで別種目のように見えます。

お店は「チェーン店のテンポ」で、お客である自分は「飲み屋」のテンポ。そのギャップが居心地よく、まるで客席から別の世界を見学している気分です。

一体感ではなく、分離感。
これが、非・居酒屋で飲むひとつの醍醐味です。

出汁がやさしい、〆のうどん

福岡のうどんといえばごぼう天。塩で食べると完璧なつまみになります。

そして、ようやくメイン(〆)のうどんです。

ここで改めて書きます。
ウエストは、うどんがおいしいんです。
出汁がとにかくうまくて、ずっと飲めます。
出汁を吸った麺は、少しやわめで適度に弾力があります。

先ほどのごぼう天をのせる

三大チェーンの中でも、私は特にウエスト派です(実家の近所にあったので)。ランチなどでよく慣れ親しんだ味なのに、お酒の〆にいただくと、一層おいしく感じられます。

ウエストの居酒屋使いは、うどんウエストのポテンシャルをさらに高みへ持っていくのですね。

たまに「サイゼリア飲み」の話を聞きますが、「ウエスト飲み」はそれに匹敵する楽しさです。安さや速さ、うどんに乗る「揚げ物」がつまみとして魅力的なのもあるのですが、それ以上に「〆の美味しいうどんが確定している」点が強いです。


ウエスト飲み、いいですよ。

もちろん、お酒を飲みます。