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絵本を読むと、「子どもの個性」が浮かび上がってくる

「絵本で話そう」イベントから見えてくる
 


わたしは、ふだん絵本講座を主宰している。

絵本講座とは別に、月1回は、
「絵本で話そう~ゆるっと哲学」というイベント
ZOOMや対面で開催していて、25回ほどになる。
 
毎回一冊の絵本を読んで、
その余韻を感じながら、
「哲学対話」を行うスタイルのイベントだ。
 
 
あるときの、絵本はこの絵本。

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 『ながーい5ふん みじかい5ふん』
文: リズ・ガートン・スキャンロン オードリー・ヴァーニック
絵: オリヴィエ・タレック  訳:木坂 涼 出版社: 光村教育図書



この絵本は、過去に「課題図書」と呼ばれる、
夏休みに感想文を書くための指定図書 (低学年の部) に
選ばれた一冊だ。
 
内容を簡単に言えば、
「同じ5分でも短く感じるときもあれば、
長く感じるときもある」
という
時間を感覚で捉える体験が、主題だ。


わたしが以前さらっと読んだとき、
「これで感想文を書くと、
みんな似たような感想文ばかりになるのではないかな」
とちょっと意地悪く予想していた。


 しかし、実際は
 わたしの予想を大きく外れたのだった。

 
すべてお見通しの子、大人を批判する子
 


実際の「絵本で話そう」イベントは、
どんな様子だったのかを書いてみよう。
 
基本、参加者は大人のみだ。
まず絵本の感想を、
わたしと参加者で、シェアしあう。
 
参加者さんにお子さんがいる場合は、
その場にはいないけれど、
事前に本を読んだときのお子さんの感想も、
あれば、伝えてもらう。
 


この、子どもの感想が、おもしろかった。
 
まず小学低学年のお子さん。
まさしく、課題図書の対象年齢は、
この絵本のテーマを完璧に理解していて、全てお見通しだった。
「こういうことが、伝えたいんだよね」
 
別の子は、「自分も時間が長く感じたり、
短く感じたりするのは不思議だ」と前から思っていて、
「もう5分たったことが信じられない!」と、
ストップウォッチで計り始めたという。
 
ここで、参加者はみんな爆笑。
大人はもうそんなことしないけど、魔法みたいに感じるのだろう
その気持ちはよく理解できた。
 
一方、幼稚園児には、この絵本はいまひとつ
ピンとはこない感じだったように見えたらしい。

 
次に聞いた、小学高学年の感想に驚いた。
 
「大人って『5分待って』って、このセリフをよく言うけど、
『5分待って』が、5分で終わることはないよね」と言ったという。

更に、こう加えた。
「『5分待って』は、『ちょっと、待って』の代わりに
使っているよね」

つまり「5分」が比喩になっていることまでも、
見抜いてたのだ。
 
ほほう。気を使って一般化して言ってるけど
これは身近な大人、親や先生への批判だ。

高学年は、絵本を読んで、ここまで出来る。
 
この絵本は、テーマが勝ちすぎかなと、
わたしは懸念していたけれど、
こんなに多様な感想があったのだった。
(指定図書の読書感想文は低学年限定ですけど)
 
 


テーマにこだわっていたのは、誰か
 


高学年の鋭い視点に驚いた後、
またまた別角度からの話が飛び出した。
 
「話の内容よりも、絵のほうが印象に残った」子がいた。
 
ああ、そうそう。慌てて思う。
絵本なんだもの。絵が気になる人はいるのは、当然。
その素直で健全な感想が、嬉しかった。
 
いかに、わたしが、コチコチに「テーマ」を読み取ることに
意識を向けてしまっているかが、
わかった。
  
大人にも感想を聞くと、こちらも個々に感じ方が違っていて
「へえええ」「そうなのね」と聞いてるだけで、
時間は楽しく過ぎていく。
 
一冊の絵本の読まれ方は、人それぞれ、同じではない。
 
このあと、イベントでは、
問いを立てて、哲学対話に入った。
 
 

わが子の個性を伸ばしたいなら
 


絵本は、子どもの個性をあぶりだすツールだ。
 
親が子どもをじっと見ているだけでは
発見できない「その子らしさ」が、
絵本という媒体を通して、浮き上って見えてくる。
 
わが子の個性を伸ばしたいと願う親は多いと思う。
 
だとしたら、
その子らしさをみつける気持ちで読み聞かせを
してみるといい。
 
ひとつの絵本が
わたしたちに教えてくれることは、
意識ひとつで
多くも少なくもなる。
 


 
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