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アイツは可愛い年下の男の子

 昨日は甥っ子が実家に遊びに来ているよと母からLINEがあったので、たまにはどうかと思って晩御飯に誘ってみた。

 すると二つ返事で「行きます!」と返信があったので用事を済ませて夕方に合流。

 つい最近顔を合わせたばかりだったが、二人きりでどこかに出かけるのはずいぶん久しぶりだった。

 妻はたまには甥っ子とデートしてきたらいいよと気持ちよく送り出してくれたのでありがたかった。

 昔は私が甥っ子を迎えに行ったものだが、今は運転が好きな甥っ子が迎えに来てくれる。

 おう、やぁと簡単な挨拶を済ませて何を食べたいか聞いてみた。

 するとう~んと少し悩んでいるようだったので、焼き肉?寿司?
中華?イタリアン?と何パターンかの選択肢を与えてみた。

 逆におじちゃんは何がいいのと聞かれたので脂があまり多いものはもうあんまり食えないなぁと何とも切ない中年事情を話すとだったらイタリアンがいいと答えてきた。

 そうなるとあそこかなと思い当たるお店があったので道案内をしながらお店に向かった。
 
 気を遣って移動中の車内のBGMが80年代のポップスを流してくれたので、こう見えても最近の曲もわかるんだぞと言って若い子がよく聴いているバンドの名前をいくつか挙げると、おじちゃん若いねぇと乗ってきたのでひとしきり盛りあがった。
 
 それからお店に着いて駐車場に車を停めようとするとほぼ満車だった。

 そういえばここは予約しないと入れないことがあるんだったと思いつつ店内に入ってみると満員だった。

 受付のお姉さんに今日はお客様が多くてかなりお待ちいただくことになりますがと言われたのでそれじゃあ仕方がないと思ってこのお店は諦めた。

 お店の選定が振り出しに戻ったのでどこにしようかしばし思案。
 
 せっかくなので何か美味いものを食べさせてあげたいというおじ心が働いて次に少し遠くなるが別のイタリアンダイニングのお店まで移動。

 道中も互いの近況報告などで会話は途切れない。

 お店に到着して中に入るとはたして席は空いていた。

 ああ良かったと思いつつテーブルについて何を食べるかメニューを眺めた。

 コースでも良かったのだが、甥っ子は食が細いのでそんなに食べられないよというのでアラカルトで何品か頼むことにした。

 私は運転しなくていいので遠慮なくワインを注文。
 
 甥っ子はソフトドリンクでとりあえず乾杯。

 最初に頼んだサラダをつつきながら他の料理が来るまでもお喋りをした。

 甥っ子は小さい頃実家に預けられる事が多かったのでその当時実家に住んでいた私はよく出会っていた。

 それこそ赤ちゃんから高校を卒業するまでは数えきれないくらい一緒に遊んだものである。

 甥っ子は昔からデジタル機器に興味津々な子どもだったのでCDラジカセをプレゼントしたものだ。
 
 小さい頃は分解癖と乱暴に取り扱うのですぐにCDラジカセを破壊していたのでなるべく頑丈で安いものを何台か新しく買い与えていた。

 やがて中学生になるとパソコンに興味が出てきたらしくそのうちに自分でパソコンを組み立てられるくらいのスキルを身に着けるようになった。

 私はデジタル音痴なので何が凄いのかよくわからなかったが甥っ子がこの部品に変えてからこんなにサクサクになったんだよと嬉しそうに言うのを聞くのは楽しかった。

 高校生になってからは動画編集に興味が出てきたらしくその頃から漠然と将来は映像関係の仕事に就きたいと思うようになったようだった。

 その夢を叶えるために映像の専門学校に進学して今は映像制作会社に勤務している。
 
 もう十分に大人のはずなのだが、未だにどこか幼さが抜けきっておらずそこがまた可愛くて仕方がない。

 ひよこの擦り込みではないが幼い頃から一緒に過ごした時間が長かったので今でも慕ってくれるのが何とも嬉しい。

 料理を食べてお酒を飲みながら昔話や甥っ子の仕事の愚痴なんかを聞いていると一丁前になったなぁとしみじみ思ってしまう。

 特に労働環境がかなり過酷らしく今年入った五人の新人の三人がもう辞めてしまってそのしわ寄せが来て雑用が多くてしんどいと言っていた。

 何だかんだで社会人になって四年目になるのでよく辞めないで続けているなとその根性には素直にエライと思ってしまう。

 それを褒めるといやぁでも本音はちょっと辞めたいかもと弱音がポロッと出てきたのでまあそれも全然ありだし、今の仕事のキャリアは絶対に無駄にならないからと転職歴の多い私が偉そうに語ると少し気が楽になったようでどことなく嬉しそうだった。

 メインに頼んだスパゲティを食べたらもうお腹いっぱいと言っていたがデザートは食べない?と聞くと食べる!と即答だったのでティラミスをお勧めした。

 私はワインをチビチビ飲みながら美味しそうにティラミスを食べる甥っ子を見ていた。

 会計をしてお店を出ると甥っ子がご馳走様でした!とペコリと頭を下げたのでそういうのも大事だよなと言っていい気分になった。

 それから帰り道にコンビニに寄って買い物をして自宅まで送り届けてもらった。

 家に辿り着いて車を降りる時に気持ちばかりのお小遣いを握らせようとするとありがとうございます!!と素直に受け取ってくれたのでそれもとても嬉しかった。

 じゃあまたねと言って別れてから妻にただいまというと、楽しかったんだねとニヤニヤされた。

 どうも表情筋が緩んでいたらしい。

 甥っ子はいつまでも可愛いやつである。

 これからもずっと仲良くしていきたいなと心から思った。

 週初めから楽しいイベントがあって心のエネルギーがたっぷり潤った。

 梅雨空は気持ちが沈みがちになるが今の私はとってもリフレッシュされた状態だ。

 甥っ子も楽しそうだったのでそれが何よりである。

 ええ、そうです大した事は出来ませんが甘々の甥っ子バカと言えば日本でも私只一人でございます。

 いやぁ、いい夜でした。

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