三年目の別れ
悲劇は唐突に起こった。
朝出かけて用事を済ませている時に不意に手元からボールペンが落ちて拾い上げようとしゃがんだ。
その刹那ビリッと何かが避ける音がした。
その音の原因は私にはすぐに察しがついた。
話していた相手には幸い聞こえなかったようだった。
なので私も何事もなかったかのようにボールペンを拾い上げて話に戻った。
数分話し込んで用事が済んだので失礼した。
カツカツとほんの少し早足になりながらトイレに駆け込んだ。
個室に入ってズボンを下げるとああやっぱり…パンツが裂けていた。
しかもお尻の割れ目の所から綺麗にパックリと。
アチャーと思ったが当然替えのパンツなんて持っているはずもない。
思えばこのパンツを履きだして三年は経っている。
三枚で千円と言う超激安品だったので最初から生地はペナペナで頼りなかったが健気に履かせてくれた。
ローテーションで履いていたのだが全部が生地がスケッスケになるくらいになっているのはわかっていた。
それにしてもよりによって訪問先でビリッといかなくても良かろうにと思いつつ近所のしまむらに足を運んだ。
そこでまた激安のパンツを買って、会計をしてからトイレに行って真新しいパンツに履き替えた。
真新しいパンツは生地がまだゴワゴワで履き心地はあまり良くなかったがそれでも穴あきパンツよりはずっとマシである。
となると他のパンツの寿命も近いという事になる。
この際古いパンツにはお疲れさまとねぎらいの言葉をかけてご退場願おうと思った次第である。
ちなみに私は人前でズボンのお尻部分が裂けた経験もあるが今回の方が何だかスリリングだった。
衣食住のバランスで一番大切なのはもうぶっちぎりで食でありそのかなり後に住が来てもうはるか遠くで肉眼では見えない位置に衣がある。
なので私の身に着けているものにブランド物は一切なく良くて紳士服の青山止まりである。
靴も先日祖母の葬式で靴底の接着面が取れる激安パカパカ靴で満足する体たらくである。
ちなみに美容師の弟は職業柄ファッションにはうるさくTシャツ一枚でも二万円位するものを身につけている。
靴もブランド音痴の私でも知っているごつい革靴を履いている。
なので私たち兄弟が二人並ぶと小金持ちの兄貴分とみすぼらしい子分の関係にしか見えない。
もちろん私が子分である。
弟は圧倒的に衣を重視するタイプなので同じ兄弟でもこうも違う物かと思うと結構面白い。
まあなんにせよ、今日買ったばかりのパンツもまた股が裂ける直前まで履き込むことになりそうである。
丁度いいエピソードが出来たので今晩の晩御飯の話のネタになりそうである。
そんな事を考えながら昨日の晩ご飯のお話を。
昨日は牛肉が安かったので細切れを購入。
帰宅して手洗いうがいをして早速料理開始。
玉ねぎを薄くスライス。
フライパンに醤油、砂糖、めんつゆ、水を加えて煮汁を作る。
そこに牛肉と玉ねぎを入れて火を点ける。
沸騰したらアクを取りつつ弱火で煮こむ。
その間に副菜づくり。
小松菜を湯がいてギュッと絞って細かく切る。
そこにお茶漬けの素を和えて小松菜の和え物の出来上がり。
砂肝があったので細切りにしてからシンプルに塩コショウで焼いた。
みそ汁は小松菜と玉ねぎ。
ぬか漬けはキュウリ。
牛丼が煮えたらアツアツのご飯上にたっぷりかける。
私はつゆだくに卵、妻はつゆ少な目。
さぁて出来た出来たといただきます。
まずはみそ汁を飲む。
玉ねぎの甘さが嬉しい。
次に砂肝を食べる。
私は砂肝が好きなのでよく買う、焼いても煮ても美味しい優秀食材である。
あっさりしてコリコリした食感が心地いい。
それから牛丼を食べる。
卵を崩してハムハムッと掻き込むと甘辛い牛肉の味がダイレクトに口に飛び込んできてたまらない。
普段牛肉はあまり食べないのでプレミア感があっていい。
合い間にぬか漬けと小松菜の和え物も食べる。
お酒は昨日は休肝日。
お腹いっぱいになるまで食べて大満足でご馳走さま。
お酒を飲まない日にしか白米を食べないのだがあまりダイエットにはなっていない。
やっぱり運動かぁと思いつつお風呂に入って早めに就寝。
いやぁ、人前でパンツが裂けると冷や汗が出ますよ。
ああ、どこかに鬼のパンツが売っていないかなぁ。
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