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人生の師匠に出会った。

 明治5年の今日、日本に現存する最古の新聞である東京日日新聞が発行されたそうである。

 この新聞は現在の毎日新聞の前身にあたる。

 新聞と言えば私が子どもの頃は祖父と父がそれぞれ一紙ずつ取っていた。

 興味があるのはテレビの番組欄と四コマ漫画だけである。

 テレビは放送時間がだいたい頭に入っているのでその日のゲストだったり何をやるのかを大まかに把握するのに役立っていた。

 父の取っていた新聞を読むことが多かったので四コマ漫画は東海林さだおさんのアサッテ君だった。
 
 子どもの頃は正直この漫画は地味で退屈なものだったので適当に読み飛ばしていた。

 確かに子どもには風刺ネタは意味不明だし何より日常のあるあるネタが多かったように記憶している。

 学校でも漫画の話は良くしたが新聞の四コマが話題にあがる事はまずなかった。

 父の教育で新聞の一面だけを読むように教育されたというのは以前書いたような気がするが、それなりに世の中の大きなニュースを知ることが出来て役に立ったと思う。

 特に小学校六年生の時に消費税が導入されるという一大事件は駄菓子屋通いが日課だった私たちにも影響のある話だった。

 そんな感じで新聞と着かず離れずの関係を続けていたが大学生になって上京した時に新聞の勧誘のしつこさに辟易したものである。

 三か月でいいから取ってくれとか、一か月タダにするからとあの手この手で興味を引いてきたが一番しつこかったのは野球チームを持っているあの新聞の拡張員であった。

 とにかくほぼ毎日来て今なら野球の試合チケットを十枚あげるとか人気アーティストの東京ドーム公演に入れるよと様々な甘言を繰り出してきた。

 私はその会社の独断専行型のオーナーが苦手だったので契約するつもりは微塵もなかった。
  
 それでもインターネットの無い時代には新聞は情報源として有効なものだったので最終的に実家で父が読んでいた馴染みの新聞を取ることにした。

 契約の時に拡張員のお兄さんが洗剤をどっさりとくれたので気前がいいなと思った。

 そうして再び新聞との生活が始まったが、学生と言うのは基本的に暇なのとせっかく身銭を切って取っているのだからと隅々まで読み込むようになった。 
 
 まるで自分には関係のない株式市場までホウホウとよくわからないなりに目で追った。

 そしてその時に読んだアサッテ君は子どもの頃の印象とまるで違ってユーモアとペーソスに溢れたしみじみ味わい深いマンガであることに衝撃を受けた。

 それから東海林さだおさんにハマった私は神田の古本屋街でマンガやエッセイを買い漁って貪るように読んだ。

 私と新聞生活は結婚するまで続いたが今はもうほとんどの情報がパソコンやスマートフォンで手に入るので必要がない。

 それでも東海林さだおさんのファンはまだ続いており先日刊行されたあれも食いたいこれも食いたいシリーズの最終巻カレーライスの丸かじりも読了して胸がいっぱいになっている所である。
 
 モテない青春時代を過ごした私が同じような境遇だった東海林さんから受けた影響は数知れない。

 思えば子どもの頃に巡り合って四十年、未だに憧れの漫画家さんである。

 父が取っていてくれた新聞が毎日新聞で本当に良かった。

 そんな事を思い出しながら昨日の晩御飯を少しだけ。

 昨日は実家から牛肉を分けてもらったのですき焼き。

 お肉はもうスライスしてあるのでそのまま。

 白菜をざく切り、ネギを斜め切り、シイタケを飾り切り。

 エノキの根を落として、豆腐を切ったら下ごしらえ完了。

 副菜はシンプルに人参のきんぴら。

 人参をスライサーで薄く削いでゴマ油で炒めて醤油、酒、白出汁、水で軽く煮詰める。
 
 人参が薄く醤油色に染まったら火を止めてゴマを振って出来上がり。

 後はぬか漬け、昨日は大根。 

 コンロと鍋を出してきて妻を呼んでいただきます。

 火を点けてから牛脂をまぶしてそこにお肉を並べる。

 すぐに上から砂糖を振りかけて醤油をタラリ。

 お肉の色が変わったら卵を溶いた器に入れて食べる。

 クニクニと肉の脂が甘い、うんこれはいいお肉だ。 

 合わせるお酒はビール。

 プルタブをパスッと起こしてタッタッタとグラスに注ぐ。

 またお肉を敷いて砂糖を振りかけて醤油をたらす。

 これを三回くらい繰り返す。

 そう我が家のすき焼きは関西風である。
 
 お肉を堪能したら次には野菜を鍋に次々に投入。

 隙間にお肉を乗せたら水を加えて味を調節する。

 クツクツと煮える間に人参のきんぴらを食べる。

 ショリショリした歯応えでメリハリの効いた味で口直しに良い。

 二本目のビールをクピクピ飲みながら煮えた野菜を食べていく。 
 
 お肉の出汁を吸った白菜が甘い、ネギもクタクタに煮込むと味が染みていていい。

 シイタケもホコホコした食感でキノコとすき焼きの相性の良さを感じる。

 残りのお肉と野菜をバランスよく煮込んで食べていく。

 締めはもちろんうどんである。

 すき焼きの抜群の旨味を吸ったうどんの美味しい事といったらもうたまらない。

 大根のぬか漬けをポリリと齧ってご馳走様。

 すき焼きなんて一年に一度か二度くらいしか食べる機会のない大ご馳走である。

 思わず実家の方向に手を合わせてご馳走様をして片付けた。

 そういえば新聞って野菜を包む時にも役に立ちますよね。

 他にも濡らしてガラスを吹くのに使うと油分があるから綺麗に汚れが採れますし。

 情報と言う面ではやや時代から取り残されつつあるのかもしれませんが、なあにまだまだ新聞と言う老兵の活躍の場は広いのではないでしょうか。

 生涯現役、なんて素敵な言葉。

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