Keio SFC Matsukawa Lab

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最近の記事

書評ーSD選書『B・ルドフスキー / 建築家なしの建築』

書評_07_26 松川研究室 環境情報学部1年  高橋紗里 書籍情報 発行日 1984年1月25日(第一刷)     2011年1月25日(第十三刷) 著 者 バーナード・ルドフスキー(著)     渡辺武信(訳) 発行所 鹿島出版会 1.概要 本書は、世界各地の無名の工匠による無名の建築の事例を多く挙げている。そして、集められた事例全体が作る「建築の多様性」と数個の文明のみを取り上げた現在の建築史との違いを問うた本である。故に、図集のような本ではあるが、数多くの事例を4

    • 『代謝建築論―か・かた・かたち』

      書評_039 ADL(慶應SFC松川研究室) B3 天谷祥吾 書籍情報 発行日: 2008/04/01 著者: 菊竹清訓 発行所: 彰国社 本の概要の説明 建築家である菊竹清訓(1918-2011)は、黒川紀章ら当時若手だった建築家数名とともに「メタボリズム・グループ」を結成し、建築は生物の代謝のように取り替えが利くものであるべきという「メタボリズム(代謝建築)」を提唱した。その菊竹清訓氏の提唱したメタボリズムの根幹とも言える理論が「か・かた・かたち」である。 著者の

      • 建築の四層構造ーサステイナブル・デザインをめぐる思考

        書評_040 松川研究室B1 新延摩耶 書籍情報 書籍:建築の四層構造ーサステイナブル・デザインをめぐる思考 著者:難波和彦 出版社:INAX出版 著者について  難波和彦(なんばかずひこ)  1947年生まれの建築家。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授。代表作に1994年から続く「箱の家」シリーズ。サステイナブル・デザインに力を入れる。 本著の概要  本著は、現代住宅への批評を基に、これからのサステイナブルな建築デザインとはどのようにあるべきかを、論じたものとな

        • アルファベットそしてアルゴリズム

          書評_038 ADL(慶應SFC松川研究室) B2 藤原彰大 <書籍情報> 発行日: 2014年9月20日 著者: マリオ・カルポ 訳者: 美濃部幸郎 発行所: 鹿島出版会 <著者について> マリオ・カルポ 建築史家。ルネサンス建築を専門とし、主に建築の表記法の歴史を研究している。イタリア出身。 著書に、 『Architecture in the age of printing』 『The Second Digital Turn: Design Beyond Inte

        書評ーSD選書『B・ルドフスキー / 建築家なしの建築』

          未来都市はムラに近似する

          書評_037 ADL(慶應SFC松川研究室)B2 相川隼哉 書籍情報 - 発行日 2021年3月2日 著 者 北山 恒 発行所 彰国社 - 本の概要の説明 少子高齢化などによる人口減少社会を迎えている日本は、世界の近未来である。このような社会は今後どのように終着するのか。本書では、著者である建築家・北山恒が近年発表してきた都市論を再編集したものである。 著者の説明 著者は、1950年生まれの建築家。横浜国立大学大学院修士課程修了、1978年architecture WO

          未来都市はムラに近似する

          空間〈機能から様相へ〉

          書評_036 松川研究室B2 水野祐紀 書籍情報 書籍:空間〈機能から様相へ〉 著者:原広司 出版社:岩波現代文庫 著者について  原 広司(はら ひろし)  東京大学名誉教授。日本建築学会賞作品賞・大賞、村野藤吾賞を受賞。世界初の連結超高層ビル梅田スカイビルや京都駅ビル、札幌ドームなどを設計したことで知られる日本の建築家。 本著の概要  本著は原広司氏による、現代建築の今後の切り口を「様相論」という考え方によって展開しようと試み、近代建築を代表させる主義である、「機能

          空間〈機能から様相へ〉

          宇宙をプログラムする宇宙いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を作ったか?

          書評_035 松川研究室B2 長谷川愛 書籍情報 発行日: 2022年3月1日 著者: セス・ロイド(著)水谷淳(翻訳) 出版社:早川書房 著者について  著者のセス・ロイド氏は、マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学教授。専門は量子情報、量子計算量子コンピューティングなどのテーマについて一般メディアから科学専門誌まで幅広く寄稿してきた。本書は初めての一般向け科学解説である。以上の説明は本書内から 要約  第一部の「全体像」では、宇宙とビット。情報とエネルギーの

          宇宙をプログラムする宇宙いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を作ったか?

          こころの情報学

          書評_34松川研究室B2 志磨純平 書籍情報書籍:こころの情報学 著者:西垣通 出版社 ‏ : ‎ ちくま新書 (1999/6/20 初版) 本の概要本書では、<情報>という概念を用いてヒトの<心>を捉えていくことを試みられている。 著者の紹介1948年生まれ。現在東京大学大学院情報学環教授。工学博士。 理系と文系を横断的する新しい情報学の構築を目指している。 主な著書に「基礎情報学」「ウェブ社会をどう生きるか」「デジタル・ナルシス」「ネットとリアルのあいだ」がある。

          こころの情報学

          3・11後の建築と社会デザイン

          書評_033 B2 桑原健 書籍情報 発行日 2011年11月 著 者 三浦 展 編著 藤村 龍至 編著 発行所 平凡社 本書は2011/3/11の東日本大震災の四ヶ月後に開催された「3・11後の社会デザイン−東北の再生と東京の再編」のシンポジウムを本にして、世にさまざまな問題を問うことを目的としてる。シンポジウムは藤村龍至氏、山本理顕氏の事務所や研究室の協力により開催され、日本をどうするのか、復興になにが必要なのか、建築、都市計画に限らず、社会学、経済学などとさまざまな

          3・11後の建築と社会デザイン

          建築家の解体

          書評_032 ADL(慶應SFC松川研究室)B3 高部達也 書籍情報 著 書 建築家の解体 Reinventing Architects 著 者 秋吉浩気 発行日 2022年2月16日 発行所 VUILD BOOKS 本書は、30代の若手と呼ばれる人たちの中から、世界で同時多発的に広がるデジタル建築の潮流の最先端で活躍する6人の建築家・建築理論家にVUILD株式会社の代表取締役CEO、秋吉浩気氏が声をかけ、インタビューをした内容を一人一章にまとめた六章構成の本となっている

          書評─現代建築家コンセプト・シリーズII-1『秋吉浩気|メタアーキテクト───次世代のための建築』

          書評_031 M2 佐野虎太郎 書籍情報 発行日 2022年3月1日 著 者 秋吉浩気 発行所 株式会社スペルプラーツ 本書は、「建築の民主化」を目標に掲げ、デジタルテクノロジーによって建築産業の変革を目指すVUILD株式会社のCEO、秋吉浩気氏の単著である。氏は本書において建築やものづくりを、現在大きく変化する〈社会〉〈産業〉〈経済〉〈流通〉〈職能〉〈設計〉の6つの基底から捉えなおし、新たな価値観の提示を試みる。 また、『現代建築家コンセプト・シリーズ』は、建築、デザ

          書評─現代建築家コンセプト・シリーズII-1『秋吉浩気|メタアーキテクト───次世代のための建築』

          人間とコンピュータの創造可能性

          書評_030 松川研究室B2 石橋優希 書籍情報 著書:『考える脳 考えるコンピュータ』(原題 ''On Intelligence'') 著者:Jeff Hawkins, Sandra Blakeslee 出版社:ランダムハウス講談社 著者のJeff Hawkins氏は、本書出版まで25年間に渡りモバイルコンピューティングの開発を行う傍ら、脳の構造を明らかにし真の知能を備えた機械を作る、という目的のため研究をおこなってきた。本書評では、『考える脳 考えるコンピュータ』を通

          人間とコンピュータの創造可能性

          セヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間

          書評_029 松川研究室B3 紀平 陸 書籍情報 著書:セヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間  著者:中谷 礼仁 出版社:鹿島出版会(2011/3/1) セヴェラルネス  セヴェラルネスとは、severalとnessを組み合わせた著者による造語である。 以下は本書からの引用である。 "とても簡単なイメージ。  私たちは辻で立ち止まる。目の前に異なった方向へと至るいくつかの道がある。体はひとつ。ゆえにひとつの道しか選ぶことができない。だから確たる理由がな

          セヴェラルネス+(プラス)―事物連鎖と都市・建築・人間

          「いき」の構造 | 九鬼周造

          書評_028 松川研究室B3 福島真実 書籍情報 著書:「いき」の構造 他二篇  著者:九鬼周造 出版社:岩波文庫  「いきの構造」は、「いき」は日本民族に独自に芽生えている美意識であるとし、その日本の文化の、まぎれもない独自の価値の構造を明らかにしたものである。  著者の九鬼周造は日本の哲学者である。 1888(明治21)年、男爵九鬼隆一の四男として東京都に生まれ、 第一高等学校を経て、1909年東京帝国大学文科大学哲学科に入学。ケーベル博士に師事する。東京帝国大学大

          「いき」の構造 | 九鬼周造

          固有の美意識

          書評_027 固有の美意識 松川研究室B3 村松美怜 書籍情報 著書:陰翳礼讃 ー陰翳礼讃ー 著者:谷崎潤一郎 出版社:中公文庫 本書評は、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の概要を述べ、理解を深めるとともに、固有の美意識についての意見の共有を図るものである。 『陰翳礼讃』で谷崎は「暗さ」「陰」の魅力をメインテーマとし、伝統文化を起因とする日本独自の美意識について、西洋と比較しながら論考を述べている。 「陰」の魅力 谷崎が高く評価する「陰」の魅力は、大きく3つに分類することが

          オートポイエーシスの世界ー新しい世界の見方

          書評_026 松川研究室M1 渡辺顕人 書籍情報 書籍:オートポイエーシスの世界新しい世界の見方 著者:山下和也 出版社 ‏ : ‎ 近代文芸社 (2004/12/10) オートポイエーシス・システム 今回の書評ではオートポイエーシス・システムの概念編を主に扱う。 オートポイエーシスという言葉は1970年代にチリの神経生理学者ウンベルト・マトゥラーナによってギリシャ語で自己を表す「アウト」と創作・産出を意味する「ポイエーシス」を組み合わせて作られた造語である。日本語では「

          オートポイエーシスの世界ー新しい世界の見方