塩湖マンの回想(16)テキスト版 最終回
病との戦いが始まってから約半年、そろそろ労働のドクターストップも終わる頃、家庭内で引っ越しについての話が始まった。
家のローンを返す生活が辛いということだった。塩湖マンはこれについては何も言えずただその意見を支持するのみだった。
この身が生まれ育った土地から離れる。塩湖マンにとっては二度目の故郷との別れ。しかしその胸に去来したのは寂しさでも悲しみでもなく、新しい環境へ飛び込むワクワク感であった。
治療開始前ではまずありえなかった久しいこの感覚に浮足立つ。そして家族の休日