塩湖マンと野生の人間Part2

木々を利用しながらのヒットアンドウェイで爪による攻撃をしてくるアヴェンジ。爪の雑菌についてはその認識がないのだがともかくこの戦法が有効だという手応えを感じて攻撃を続けている。

「仕方がない、ちょっと本気出すか」

正直痛くて死にそうなのを気合で隠しながら余裕そうにアヴェンジに告げる。

「ホンキ?ホンキ?」

本気という言葉の意味は分かっているが敵の本気が一体どういうものなのか全く分かっていないアヴェンジは攻撃の手を緩めなかった。それが彼の選択ミスであることを知らずに…

「神性ちょい開放、塩湖マンモード」

するとそれまで普通の人間の姿だった男が球体頭の塩湖模様の謎の怪人になる。

「ソレ、オマエノ、ホンキ?」

これまでの優位が野生の勘を鈍らせアヴェンジは攻撃を仕掛けてしまう。今までなら皮を、肉を切り裂く感触があったはずだ。しかし、彼が感じたのはジャボッという水に手を入れたような感触であった。

「ナニ!?ナニ!?ミズ!?ナンデ!?」

その場に立ち止まり何度も何度も攻撃を加えるも返ってくる感触は水のもの。恐慌状態に陥ったアヴェンジ。それを黙って見つめる塩湖マン。

「パニックを起こしているのか、それじゃあ気付けをしてやらなきゃ…な!」

アヴェンジの攻撃にあわせて顎先にカウンターを一閃。打撃ダメージは無く脳震盪を起こすことだけを目的としたパンチ。巨体は糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。

次にアヴェンジが目を覚ますと焚き火の向こう側で座っている塩湖マンが視界に入った。すっかり夜も更けたため焚き火を光源にしてアヴェンジが起きるのを待っていたのだ。

「おはよう」

「オ、オハヨウ」

「落ち着いたか?」

「ウン、オチツイタ」

「名前を聞いてもいいかな?」

「アヴェンジ・ヤードッグ、ダ」

「アヴェンジか、俺はわわ・しーるだ」

「ワワ…テキジャナイ、オレコロサレテタ。デモイキテル。ワワ、テキジャナイ!」

笑顔を見せるアヴェンジ。それを見て笑顔(?)になる塩湖マン。

「俺、迷子。道、分かる?」

「マイゴ、ミチ、ワカラナイヤツ?ワカッタ、オレワカル!」

市街地への道を案内するために駆け出すアヴェンジ。それに置いていかれずに着いていく塩湖マン、起きたときの警戒のため塩湖マンモードのままだったのが功を奏した。やがて街の灯が見えてくる。

「ありがとう、アヴェンジ。」

「テキ、マチガエテ、ゴメン」

「はは、良いのさ。また来ても良いかな?今度は遊びに」

「イイゾ、オレタチ!トモダチ!」

「ああ、友達だ!」

ガシッと握手を交わすと塩湖マンは人間の姿に戻り手を振りながらアヴェンジの元を去っていく。アヴェンジはそれを見送ると静かに森に帰って行った…。

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