小清水志織

本音で嘘を書いているひとりです。小説、詩など好きなものを。

小清水志織

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マガジン

  • 詩集

    note をはじめたころから貯めてきた詩をまとめています。

  • 蒼生のレファレンス

    世界を知りたがる少女と、世界を知りたがらない青年。 星《ルーレタ》の導きによって結ばれた二人が不思議な事件に立ち向かっていく、異世界謎解きアドベンチャー。

  • 連載小説『言葉くづし』

    言葉では打ち消せない想いが、きっと真実。

  • 夏炉冬扇(中断)

    大変申し訳ありませんが、制作の途中で挫折してしまい、更新をストップいたしました。別のかたちで最後まで書き直したものが、連載小説『言葉くづし』(サイト内マガジンのひとつ)です。よければそちらをご覧ください。

  • 魂の読書感想文

    読書記録と感想、プラス魂。

記事一覧

じんわり元気が出るアニソン選集

こんにちは。小清水志織です。 本日は気楽に、じんわり元気が出るようなアニメ・ソングをご紹介していきます。 どうぞよしなに。  ※( )内の年はアニメ放送開始年です…

19

【短編小説】どら焼き

晴天に恵まれて、この街は運が良い。 新聞にでかでかと掲載された祭りの全面広告を眺めながら、平沢環はそう思った。 全国的にも有名なとある大名が、初めてこの地の城に…

小清水志織
12日前
23

セキララ・キララ!

うちら輝きたい 惹かれたい 内の世界も 外の世界も ルールは三秒で無効 フールは八百も嘘 本音のためなら 手段 選んでいられない あそびながら まじめながら なのめ…

小清水志織
2週間前
14

【ご挨拶】『蒼生のレファレンス』をご覧いただいたすべての皆様へ

こんにちは、小清水志織です。 『蒼生のレファレンス』は本日をもって一つの区切りを迎えました。最後までお付き合いいただいた皆様、誠にありがとうございました。 また…

小清水志織
3週間前
17

【最終回】18. 蒼生のレファレンス

目が覚めてしまえば、あっけないほど世界は平和だった。 分天の祭りで多大な犠牲者が出たことも、喫茶店《ウラヌス》で激戦が行われたことも、まるで一夜の夢だったかのよ…

小清水志織
3週間前
15

17. 決闘

エルが天井高く跳躍した。 空気のざわめきと硝煙のゆらぎが彼の輪郭を曇らせる。 アルファルドは銃を高く掲げ、発砲する。 銃声。四方に飛び散る血液。 その場にある時間…

小清水志織
1か月前
15

16. 〈もつ〉者と〈もたざる〉者と

こんな匂いを、エレナは知っていた。 十年前、深夜にベッドの上で目覚めたとき,大好きなマホガニーの芳香は消え失せて、その代わりに肉が焦げた匂いが邸宅に立ち込めてい…

小清水志織
1か月前
20

15. ペガススと騎士

はるか遠くで弾けた爆音は、エルたちのいる宿舎の敷地にまで鈍く響き渡った。 「まさか……?」 カペラと表に駆けだしたエルは、西方につづく坂道の上から高く火の手が上…

小清水志織
1か月前
28

14. 裏切りの星

エルとカペラが会っていたのと同時刻。 エレナ・ローゼンハイムは長い凸凹の坂道を登って、喫茶店《ウラヌス》の洒落たドアを押し開けた。ドアの隙間からリスのリゲルがさ…

小清水志織
1か月前
18

葉桜

伝えたい言葉は春の訪れと一緒に 背伸びした青空へ吸い込まれていった 咲きはじめだけが取り柄の桜のように きつく吹いた風に負けてしまいそう 本物のお姫様になりたくて …

小清水志織
1か月前
28

13. カペラの追憶

カペラ・オリーヴェの部屋にエルが訪れたのは、午後の授業が終わった夕方のことだった。 早くもあの事件から一か月たち、殺気立っていた街の空気は徐々に緩まりつつある。…

小清水志織
2か月前
20

12. 守れなかった朝を迎えて

空気の透きとおる朝。雲ひとつない秋晴れの空にむかって硝煙が立ち昇っている。 エルは熾きがくすぶる公会場の真ん中に独りで立っていた。死体のほとんどは女性、子ども、…

小清水志織
2か月前
17

11. 孔雀明王

降り注ぐ火の粉が公会場を昼間のように照らしていた。割れる火炎瓶。絶え間ない爆発音。逃げ惑う観客や聖歌隊。鼻が曲がりそうな、人の肉の焼けた匂いが立ち込める。 恐慌…

小清水志織
2か月前
18

10. 分天の祭り

豪華絢爛、という言葉が今日ほど似合う日も少ないだろう。 錦糸の刺繍が施された紅麻の帷子を身にまとい、客を接待する女たち。 村の若衆は早くも紹興酒が回り、千鳥足で歌…

小清水志織
2か月前
19

9. 光と闇の狂宴

「だっさ。こいつが強盗を倒したって大嘘ね」 梯子から滑り落ちて頭を抱えているエルを見下ろしてエレナは言った。 「それで? 《ヘデラ・ヘリックス》の意味は何だった…

小清水志織
2か月前
21

8. 雷撃王の恐怖

「本校が建っているハレーという地域は、五百年前まで城塞として利用されてきた。北側には当時から商業の中心地であったウノ市街を見下ろせ、隣国と国境を接する他の三方は…

小清水志織
3か月前
17
じんわり元気が出るアニソン選集

じんわり元気が出るアニソン選集

こんにちは。小清水志織です。
本日は気楽に、じんわり元気が出るようなアニメ・ソングをご紹介していきます。
どうぞよしなに。
 ※( )内の年はアニメ放送開始年です。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

今日は一日がんばった。そしてつかれた。
でも、まだ眠れない。
そんな夜におすすめの一曲。

★Homecomings「ヘルツ」
TVアニメ『君は放課後インソムニア』(2023年)第7話ED

『君

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【短編小説】どら焼き

【短編小説】どら焼き

晴天に恵まれて、この街は運が良い。

新聞にでかでかと掲載された祭りの全面広告を眺めながら、平沢環はそう思った。
全国的にも有名なとある大名が、初めてこの地の城に入城したことにちなんだ一大行事。メインイベントである行列には有名な俳優・女優が出演し、さらに一般公募から選ばれた美女たちや愛らしい子どもたちが公道を練り歩く。消防団員による梯子登りや纏の演技、地元の和太鼓やマーチングバンドの演奏が人々の熱

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セキララ・キララ!

セキララ・キララ!

うちら輝きたい 惹かれたい
内の世界も 外の世界も
ルールは三秒で無効 フールは八百も嘘
本音のためなら 手段 選んでいられない
あそびながら まじめながら
なのめならず はどめならず
言っちゃったもん勝ちっしょ 最後まで生きてりゃ
鎖 腐り しきたり ハッタリ 大キライ
うちらの想い 青春じかけで弾けたら 
セキララ・キララ! セキララ・キララ!

かねてより 金は時なり 使いドキ
浪費応援割引

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【ご挨拶】『蒼生のレファレンス』をご覧いただいたすべての皆様へ

【ご挨拶】『蒼生のレファレンス』をご覧いただいたすべての皆様へ

こんにちは、小清水志織です。

『蒼生のレファレンス』は本日をもって一つの区切りを迎えました。最後までお付き合いいただいた皆様、誠にありがとうございました。

またいつか、エルとエレナがパワーアップして復活する日が来るかもしれません。かつて、拙稿「夏炉冬扇」の中断を経て、約2年後に『言葉くづし』という長編に結びついたように、再びこの世界線を描きたい、描き直したいと性懲りもなく執念を燃やしております

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【最終回】18. 蒼生のレファレンス

【最終回】18. 蒼生のレファレンス

目が覚めてしまえば、あっけないほど世界は平和だった。
分天の祭りで多大な犠牲者が出たことも、喫茶店《ウラヌス》で激戦が行われたことも、まるで一夜の夢だったかのような、ふわふわとした落ち着かない感覚。

それでも、都市庁による規制の張られた《ウラヌス》の焼け跡で独り、美しい花の束を手向けるエレナの手には、生々しい傷痕が浮き上がっていた。静かに両手を胸の前で組み、死者の冥福を祈る。

すると、後ろから

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17. 決闘

17. 決闘

エルが天井高く跳躍した。

空気のざわめきと硝煙のゆらぎが彼の輪郭を曇らせる。
アルファルドは銃を高く掲げ、発砲する。
銃声。四方に飛び散る血液。
その場にある時間と空間のすべてが、彼らのために動いていた。
エレナは耳をつんざく音に怯えて、顔を地面に伏せる。
彼女が信じる男が血を流して斃れる様が頭をよぎった。
しかし、その瞬間に、エレナは強烈な力によってアルファルドの魔の手から引き剥がされていた。

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16. 〈もつ〉者と〈もたざる〉者と

16. 〈もつ〉者と〈もたざる〉者と

こんな匂いを、エレナは知っていた。
十年前、深夜にベッドの上で目覚めたとき,大好きなマホガニーの芳香は消え失せて、その代わりに肉が焦げた匂いが邸宅に立ち込めていた。

当時、いまよりも背の低かった彼女は、異変を感じてベッドの上を半ば転がるように滑り降りると、隣で眠っていたはずの女中を探して寝室のドアを開けた。

目の前の光景に、エレナは言葉を失った。
そしてすぐ、身体に容赦無い熱気を浴びることにな

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15. ペガススと騎士

15. ペガススと騎士

はるか遠くで弾けた爆音は、エルたちのいる宿舎の敷地にまで鈍く響き渡った。

「まさか……?」

カペラと表に駆けだしたエルは、西方につづく坂道の上から高く火の手が上がっているのが見えた。

「あの場所は……。《ウラヌス》!」

エルは全速力で走り出した。後ろからカペラの呼び止める声が聞こえたが、振り返ることなく人の群れを縫うように進んだ。

私立ミレトス学院の生徒もよく利用するその喫茶店は、美味し

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14. 裏切りの星

14. 裏切りの星

エルとカペラが会っていたのと同時刻。
エレナ・ローゼンハイムは長い凸凹の坂道を登って、喫茶店《ウラヌス》の洒落たドアを押し開けた。ドアの隙間からリスのリゲルがさっと走り抜ける。チリンとベルの音が鳴ると、すぐに店長が手を振って出迎えてくれた。

「エレナちゃん。祭りの夜、大変な目に遭ったと街の人から聞いたよ。ケガの具合はどうだい」

「店長ありがとう。まだ顔の火傷が痛むけど、だいぶ治ってきたわ」

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葉桜

葉桜

伝えたい言葉は春の訪れと一緒に
背伸びした青空へ吸い込まれていった
咲きはじめだけが取り柄の桜のように
きつく吹いた風に負けてしまいそう

本物のお姫様になりたくて
はりぼてのお城に棲んでいる
そんなの「かっこわるいよ」と
わらう君がいる

わたしがいつもとおんなじ
「元気」で在るために
並べた噓八百 浮かべた笑顔を
いまだけは 忘れていいかな

葉桜 まだらに複雑に
色づく姿のまぶしさが
なんだ

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13. カペラの追憶

13. カペラの追憶

カペラ・オリーヴェの部屋にエルが訪れたのは、午後の授業が終わった夕方のことだった。

早くもあの事件から一か月たち、殺気立っていた街の空気は徐々に緩まりつつある。カペラが重苦しい防弾チョッキをさっぱり脱いで、お気に入りの生成色のブラウスだけで登校できたのも、実に久しぶりのことに思われた。

しかし、穏やかになりつつあったカペラの神経を逆撫でしたのが、他ならぬエルクルド・エーフォイの訪問であった。彼

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12. 守れなかった朝を迎えて

12. 守れなかった朝を迎えて

空気の透きとおる朝。雲ひとつない秋晴れの空にむかって硝煙が立ち昇っている。

エルは熾きがくすぶる公会場の真ん中に独りで立っていた。死体のほとんどは女性、子ども、老人だった。五十人は下らない数の人間が、わずか十数分の間に生命を奪われた。死体や瓦礫を運ぶ荷車の列が、まるで葬列の予行演習のように思えて、エルは目を逸らした。

「やっぱりここに居た」

後ろから声をかけられて、はっと顔を上げる。

「も

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11. 孔雀明王

11. 孔雀明王

降り注ぐ火の粉が公会場を昼間のように照らしていた。割れる火炎瓶。絶え間ない爆発音。逃げ惑う観客や聖歌隊。鼻が曲がりそうな、人の肉の焼けた匂いが立ち込める。
恐慌状態では皆が自己を優先する。幼い子どもが無惨に踏みつけられても、その母親は我が子の安否を確かめる余裕すらない。すし詰めになった人間どうしが一斉に動き回れば、行き着く結末は悲劇しかない。

たちどころに人間の雪崩が起こり、何百という者が将棋倒

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10. 分天の祭り

10. 分天の祭り

豪華絢爛、という言葉が今日ほど似合う日も少ないだろう。
錦糸の刺繍が施された紅麻の帷子を身にまとい、客を接待する女たち。
村の若衆は早くも紹興酒が回り、千鳥足で歌い、踊る。
都市庁の高官は冠にあしらった宝石の美しさを自慢している。
ふだん贅沢には無縁の農民たちも、この日ばかりは髪を整え、化粧をし、一張羅を着こなして街に繰り出す。

帝国民にとって一年に二度だけの楽しみ、分天の祭りの夜がついに到来し

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9. 光と闇の狂宴

9. 光と闇の狂宴

「だっさ。こいつが強盗を倒したって大嘘ね」

梯子から滑り落ちて頭を抱えているエルを見下ろしてエレナは言った。

「それで? 《ヘデラ・ヘリックス》の意味は何だったの?」

「……。もうちっと相手を心配しても罰は当たらないと思うが」

ぶつぶつ文句を言いながらエルは一冊の古書をひらいた。

「私は焦ってるの! ユーリア人は今みたいに差別される対象じゃなかった! 支配層のガリシア人はもちろん、敗戦国

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8. 雷撃王の恐怖

8. 雷撃王の恐怖

「本校が建っているハレーという地域は、五百年前まで城塞として利用されてきた。北側には当時から商業の中心地であったウノ市街を見下ろせ、隣国と国境を接する他の三方は天然の断崖によって守られている。しかし、孤立した自然環境は文明の発達を遅らせ、前時代的な卜占や精霊信仰によって村落が運営されていたという。当時ハレーの大半を占めていた民族こそ、君達のよく知っているユーリア人である」

ピーコック先生による帝

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