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広大な自分のための短文
砂浜で落ちているものを手に取っては眺める。
珊瑚の幾何学的な形の連なり、貝のミクロまで続く相似形。
目は、手に取った小さなものに共鳴して、身体を振動させる。
耳に入る波の音は遠くなり、手の中の愛しき小さなものに意識が凝縮する。
珊瑚、淡く白く光る石、螺旋の貝、錆びた鉄の破片、流木、骨。
しゃがみこんだまま、手に取っては眺め、手に取っては眺めを繰り返す。
ふと目を上げて立ち上がる。
時間は波と
スピリット 入り口 記憶
スピリットの場所に降りる時、透明な水の中に音もなく滑り込んでいくような心地になる。
周りは少し暗く、ぼやけていて境界が見えない。
でも無機質な印象はなくて、とてもみずみずしい世界に包まれる。
そこではあらゆるものが美しい。
境界が曖昧でどこか焦点が合わせにくいのに、一瞬一瞬の世界の移り変わりに目を奪われる。
どこかで何かを失ったような、悲しいような感情も、力強い生きる喜びの感情も少し遠い。
近
スピリット 断片 4 感覚
気がつくと、視界全てに紅葉した山の風。
吹き抜ける鈴音のような木々の擦れによって、一瞬にして感覚は山と一体化した。
勢いよく流れる川の音と相まって、縦横無尽に音は踊る。
音波の微細な振動によって、環境と溶け合う。
溶け合うことで、人であることを手放すことができる。
スピリット 3.1 オレンジ色
オレンジ色の光。
微かに見えるものの手触りは、夕陽のようなオレンジ色。
産まれたばかりのような、視界を含めて全ての感覚がピントが合わない状態でダイレクトで、距離感が掴めない。
曖昧なジグジグ、と音がするようなオレンジ色。その感覚が自分自身の全て。
(この感覚は誕生の瞬間の記憶かもしれない。)
とても心地よい温度の包みに包まれているような安心感を感じる。
スピリット 2 感覚
小さい蟻が、足元のから身体を登っていく。
表皮のでこぼこ、樹皮のめくれ、ウロの中の苔、折れた枝のささくれ、葉っぱの葉脈の一筋一筋を、落ち着いた細やかな脚運びで、音もなく歩き回る。
朝から晩まで、その繊細な脚の運びを、感覚のリズムを静かに楽しむ。
スピリット 1 感覚
深々と静かに雨が降っている。
明るくも暗くもない、雨の中の山はしずかで、少し霧があって境界がぼやけている。
淡い皮膚感覚と分散した自己認識の中を浮遊する。
ああ、人の形だ。
人という形を結集して雨の中の山の中にいる。
いる、という認識があり、うちと外の情報が感覚を通して淡く分かれている。
ここが限界だ。
すぐにでも分散しそうな存在のまま、強くなる雨音に共振していく。
雨の細かい粒が直接皮膚