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スピリット 入り口 記憶

スピリットの場所に降りる時、透明な水の中に音もなく滑り込んでいくような心地になる。
周りは少し暗く、ぼやけていて境界が見えない。
でも無機質な印象はなくて、とてもみずみずしい世界に包まれる。

そこではあらゆるものが美しい。
境界が曖昧でどこか焦点が合わせにくいのに、一瞬一瞬の世界の移り変わりに目を奪われる。

どこかで何かを失ったような、悲しいような感情も、力強い生きる喜びの感情も少し遠い。
近所の温浴施設にある、露天風呂の中でも少しだけ高い位置にあるお風呂に入っていると、深夜の温泉でたわむれている大学生の雑談が遠くに感じられて、ふっといつの間にか自分がそういう世界に包まれていることに気づいた。

そういえば西伊豆スカイラインを走っている時もそうなりやすい。
仁科峠のあたりとか。
体のない状態でいるときは、相対的に高い位置にいるのかもしれない。

小さな頃からどうしても体のある世界との壁を感じて、どうやったらそっち側に行けるの?と試行錯誤しているような気持ちになる時がある。世界に受け入れられていないような気持ちになる時がある。

そういう時は、気持ちを落ち着けて、スッと静かな水の中に入る。

水の中から自然と顔を出した時、世界と自分が全く新しく生まれ変わっている。
海から上がって裸足のまま砂浜を歩いて、拾った貝を食べて、ゆっくり世界を眺めると、いつの間にか世界と自分が一体となっている。

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