スピリット 1 感覚
深々と静かに雨が降っている。
明るくも暗くもない、雨の中の山はしずかで、少し霧があって境界がぼやけている。
淡い皮膚感覚と分散した自己認識の中を浮遊する。
ああ、人の形だ。
人という形を結集して雨の中の山の中にいる。
いる、という認識があり、うちと外の情報が感覚を通して淡く分かれている。
ここが限界だ。
すぐにでも分散しそうな存在のまま、強くなる雨音に共振していく。
雨の細かい粒が直接皮膚を叩いて、また音として波になって振動を届ける。
振動は主に骨を震わせて、身体中を振動させる。
今は鼻の奥の骨だ。高い周波数の音を放つ振動で身体が震えている。
景色は薄まり、ただ振動になっていく。
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