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初回アポから商談に繋げる4ステップ

前回の続編として、今回は初回アポからいかにして商談にしていくか、というお話です。

アウトバウンドの初回アポを取り付ける際によく利用される「情報交換しませんか」というフレーズ。しかし、いざ顧客と会ってみると「情報交換」はどこへやら、自分たちの売り物のことばかり語ったり、自分たちの知りたいことを一方的にヒアリングしていませんか?こんなことをされては、誰でも心のシャッターを下ろしてしまいます。
「初回アポから商談に繋ぐのが難しい」という言葉をよく耳にしますが、これは裏返せば多くの買い手は皆さんと商売の話をしたいと思っていない、という状況とも言えます。

ということで、今回は「初回アポから商談につなげるための大事なステップ」として4つを紹介します。長めのnoteですので、時間をとって1つ1つ理解して実行に向けたアクションプランを考えてみてください。


はじめに:「商談」とは何か?

初回アポから商談に繋ぐにあたって、まずは「商談とは何か」について考えてみましょう。

  • 商談は「商売の談(はなし)」と書く。

  • そして「商売」には必ず売り手と買い手が存在する。

つまり、売り手である営業だけが「商売の話をしたい」と意気込んでいても、買い手に「商売の話をしたい・してもよい」という意思がなければ、商談とは言えません。

特にアウトバウンド活動は、こちらからアプローチしてアポに至っています。加えてアポの口実を「ディスカッションや情報提供、事例紹介」という切り出し方をしている場合は特に、買い手のアポに臨むスタンスは「商売の話ではないよね」という状態であることは容易に想像つくと思います。

  • (特にアウトバウンドの)初回アポは、商談でなく"面談"である

  • つまり、いきなり商売の話はしない(相手はそれを期待していない)

まず大前提として、このことを押さえておいてください。

では、顧客に「ぜひ商談したい」と思ってもらうにはどうしたらいいのかについて、具体的な手法を、4つのステップで説明していきます。

  • ステップ1. 顧客の信用と信頼を得る

  • ステップ2. 顧客の問題を聞く

  • ステップ3. 顧客と会話をしながら課題を整理する

  • ステップ4. 解決したい課題とその解決にむけて合意する

ステップ1.顧客の信用と信頼を得る

まず行うのが顧客の「信用と信頼」を得ることです。

たいして考えなくてもわかると思いますが、初対面の人から開口一番「あなたの課題を解決します!」と言われても、「ていうかあんた誰。私の何を知ってるの」と感じますよね。

買い手からすると、皆さんが営業としてアポに来ていることくらい分かっています。「何を売り込まれるんだろう」と、買い手が営業のことを警戒をしている状態で始まります。つまり関係値でいうとマイナスからスタートです。

初回アポでは、顧客に「変な人・害がある人・話たくない人ではなさそうだ」と思ってもらうこと。別に好かれなくても良いです。マイナスをゼロに戻すこと。そのためには信用してもらうこと。そしてそのためには失点をしないことです。アポイント前のコミュニケーションから信用獲得は始まっていると思ってください。
失点をしないために、例えば以下のようなポイントは要チェックです。

アポにおいては、扱っているプロダクトのアピールはいったん脇に置き、相手から信用してもらうためにどういうコミュニケーションをすると良いのか、に全振りしてください。ちなみに信用を得たあとは信頼を得ないといけません。信用と信頼は別物です。このあたりについては以下のnoteで詳しく触れているので、併せて読んでおいてください。

ちなみに、信用を得る上で大切なのは営業個人のみならず、会社においても同様です。つまり「ちゃんとした会社のようだね」と思ってもらうために会社紹介の説明をどう工夫するべきか?は営業として大事な仕事の1つです。信用獲得に関係のない情報は削ぎ落としましょう。ノイズです。

ステップ2.顧客の問題を聞く

顧客から信頼されているかどうかは機械的に判断はできません。表情が柔らかくなったり、口数が増えたり、「実は…」と本音を口にしたりとさまざまです。ここについては各自の人としてのフィーリング(つまり個性)を活かしてください。
ちょっと突っ込んだ質問をしたときに考えて答えてくれるような振る舞いに変容してきたな、と判断したら「困りごと(問題)」を聞くステップに入ります。

とはいえ「困っていることは何ですか?」のような質問をすると答えにくいでしょうから、例えば以下のように聞くのは有効です。

「御社の業界では、◯◯さんのご職責においては**にお困りの方が多く見受けられるのですが、同じ問題が起きていますか?」

当然ながら事前準備として、この仮説を用意する必要があります。尚、困りごと(問題)は私たちの日常生活でいうと「頭がいたい・腰がいたい・お腹がいたい」等の「症状」を指します。課題とは概念が別なので混同しないようにしてください。課題についてはステップ3でお伝えします。

ちなみに、買い手は問題を自覚しています。なので信用してもらえれば聞いたら答えてくれます。何も不都合なく痛みもなく、今後何の不安もない人はそもそも営業とのアポは受けませんから。ビジネスにおいては少なからず皆何かしらの問題を持っていると思って良いです。

なお、質問をする際は主語を「御社」ではなく「◯◯さん」にしましょう。B2Bとは言え、相手は人です。詳しくは以下のnoteをご覧ください。

ステップ3. 顧客の課題を整理する

顧客の問題を把握できたら、次は「問題・原因・課題」の3つの観点で問題の構造を整理します。つまり、聞き取った問題を引き起こしている原因と、その原因に紐づく課題を整理します。

ここでやったらいけないのは「問題を聞いたら解決策を提示する(売り物のアピールをする)」ことです。急な腹痛を訴えている人に対して「お腹を切開して手術しましょう」と言っているのと同じです。原因がわからないのに解決策を提示するとはそういうことです。

とはいえ、買い手は問題の原因がわからないから解決に向けて動けていないわけです。何が原因ですか?と聞いても「それが分かってればとっくに解決してるわ」と思われるのがオチです。なので売り手から考えられる原因を提示していく必要があります。これも仮説です。

「**の調査レポートにあったのですが、◯◯が原因であるということは考えられませんか?」
「同じ問題を抱えていた他社は◯◯と△△が原因でしたが、思い当たることはありませんか?」

こういった仮説を挙げながら、買い手と会話しながら問題の原因を整理していきましょう。
問題に対して原因は複数あるものだという前提に立つことも重要です。複数の原因が混在しているからこそ、その複雑性から解決への糸口が見出せずにいるのではないか、と捉えることは不自然ではないはずです。

具体的なイメージは以下の通りです。受注率が上がらない、という問題に対して原因と課題の構造、そして課題に対して適切な解決策が紐づきます。営業が得意とする「解決策から話をすること」が不適切である理由はここにあります。

この構造でコミュニケーションを行うために必要なのは業務知識です。ただし、自社のプロダクト領域の業務知識だけではなく、一段上の業務に対して、です。例えば人事労務のSaaSプロダクトを扱っている営業であれば、労務業務だけではなく人事全般の業務を指します。

ステップ4. 解決したい課題とその解決に向けて合意する

買い手と会話を通じて構造化を行なって課題を整理できたら、どの課題から解決していくべきか、その課題はどのように解決すべきか、を会話することです。

ここで大事なのは「自社プロダクトの提案ありきで会話しないこと」です。せっかくここまで買い手の立場にたって課題整理をしたのに、安直なセールストークをしてしまうとこれまでのコミュニケーションが台無しです。「結局あなたの商材を売りたいのね」と思われ、せっかく築いた信用が崩落します。

「問題を解決するためにどの課題解決から着手すべきか」という視点は常に忘れないでください。

つまり、課題を整理した結果、自社プロダクト領域以外の課題を先に解決したほうがいいと思えるのであれば、その旨を理由と共に買い手に伝えます。他の課題を解決した後、もしくは解決に向けて着手した後に皆さんの領域における課題解決のステップに進みますから。焦って売り込まないこと。ここで売り込んでも成約しません。せっかくのパイプラインがなくなります。

ただ、課題を整理していく中で、自社のプロダクトが解決できる課題の優先度が高いことが買い手と合意できれば、進め方について合意していきます。具体的には以下です。

 - 整理した課題Aは弊社にて解決できる領域です
 - 簡単にプロダクトの概要を紹介させてください
 - 次回はより詳細の機能説明やデモを実施します
 - ⚪︎⚪︎さんにおいては関係する別の方や、現在の業務フロー、利用システム等の情報をお持ちいただきたいです
 - 次回の目的は要件整理です。その上で次々回はご提案させていただきます

その上で、「次回のお打ち合わせに進ませてもらってよろしいですか?」と確認をし、合意されれば「商売の話」に進むことを合意していることになるので、晴れて「商談化」というわけです。

(インバウンドも同様ですが)特にアウトバウンドの初回アポにおいて、この流れの設計は非常に有効だと考えています。ただ本noteに記載したことを実行するためには考え方を変えたり、知識を得るために勉強する必要があるので、多くの営業パーソン(含マネジメント)はやらない理由を挙げて現状維持です。

SaaSをはじめ、技術進歩によって新たなサービスやプロダクトが登場していますが、買い手からすると「買ったことのないものを買う」というシーンに直面しているとも言えます。合理的に購買するためにはどのように判断して進めればいいのかわからない相手に対して、プロダクトの特徴や利点ばかり連呼しても買えるわけないでしょう。

買い手の問題を解決する方法は、必ずしも自社のプロダクトを販売することだけではありません。別のベンダー企業を教えたり、知見を有する人を紹介したり、参考情報を提供することも立派な問題解決の一助になります。
満を持して自社プロダクトが貢献できるフェーズに来た時に、真っ先に相談される関係になれることが自転車操業の営業活動から脱却する上でとても大事な「パイプライン保持活動」になります。

ただ、繰り返しますが、これらのコミュニケーションを行う上で土台になるものは信用と信頼です。信用がないと何を伝えても素直に聞き入れてもらえませんし、質問をしても本音で答えてもらえません。
そして第一印象を左右する重要な機会が初回アポです。定型的な進め方で機械のような説明をすることが何の得策にもならないことはお分かりいただけましたでしょうか。

おわりに

今回は初回アポから商談につなぐ流れについての話でした。

アドバイザーとしてB2B営業の支援をしていると、自社プロダクトの話をしたくて仕方ない営業パーソンが多すぎると感じています。せっかくとったアポイントだから商談・提案に繋げたい!と意気込むのはわかります。

でも、それはただの売り手のエゴでしかありません。

心当たりがある人は、ご自身の営業スタイルを振り返ってみてください。商談とは何かから丁寧に考え、細かくステップを区切って進めることで、商談化率は改善できると思います。

引き続き、みなさんの営業活動に気付きを与える話ができたらと思っていますので、ぜひフォローやスキをお願いします!

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