沼色もず

両親の地方移住をきっかけに家族のことを書きはじめました。時々、自分のことも。

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両親の地方移住をきっかけに家族のことを書きはじめました。時々、自分のことも。

マガジン

  • 親の移住と、家族の記録。

    60代両親が地方移住の夢をかなえるまでの紆余曲折。パソコンデビュー、物件探し、断捨離などの家族の記録。

最近の記事

連休だもの。

休日にお酒を飲むのは楽しい。 次の日も休みだと、もっともっと楽しい。 だから私は、連休が好きだ。 さあ、五月の長期連休がはじまった。 あと、写真を撮り忘れたけれど、実家で飲んだスーパードライがおいしくて驚いた。喉ごしだけなイメージがあったけど、ちゃんと味わいも良くて、見直した。どん兵衛と同じで、進化してるんだな。 母と飲んだハイボールも楽しかった。 ひとりで、気ままに。 家族と、まったり。 賑やかな街の中で。 静かで広い空の下で。 おいしいお酒とともに過ごした、今年のゴー

    • こっち側の景色。

      五月の連休を前に、両親へのお土産を買いに出かけた。 今回の帰省は、二泊三日の予定。顔を見せに行くのはお正月以来だ。 甘いものを食べない父親用に、お煎餅やおかきを何種類か選ぶ。醤油げんこつ、揚げ塩、あとは胡麻や海老もおいしそう。海苔チーズ、マヨ七味なんてのも気になる。思案しながら選んでいると、急に声をかけられた。 「これってすごくカタいかしら?」 顔を上げると、年配のご婦人がこちらに袋を向けている。お煎餅の固さを知りたいようだ。 商品棚の値札にある表示を差して、「5段階中4っ

      • ノスタルジックとエスニック

        ラジオの天気予報が、今日は初夏の陽気になると告げている。 ほんとに? まだ桜もだいぶ残っているのに? 冬のコートをクリーニングに出しに行くために、用心して日焼け止めを塗る。 季節感がごちゃごちゃだなと思いながら外に出た。 吹いてくる風はさわやかだが、下からの照り返しはすでにけっこう強い。 歩いていると、肩や背中にじりっとした陽射しの暑さを感じる。 帽子をかぶってきてよかった。 このままだと、本当に春と秋がなくなってしまうかもしれないな、スプリングコートとか死語になっちゃうの

        • 春になったら。

          なかなかにしびれる忙しさだった三月。 寝ても寝ても眠い、やたらお腹が空く、寒暖差に体がついていけない・・・これら全部が春のせいなのか仕事のせいなのか、よくわからない感じで過ごしていた。 その忙しさが一段落するのと同時に、四月がやってきた。 新しい月、新しい年度、新しい季節。自分自身の環境はなにも変わらないのだが、それでもやっぱり、春というだけでなんだか明るい気分になる。 街で見かける新入社員たちが、ピカピカでまぶしい。まだ少し緊張気味のその背中にそっとエールを送りたくなるの

        連休だもの。

        マガジン

        • 親の移住と、家族の記録。
          20本

        記事

          知らなかったんだと、知った夜。

          年末年始の帰省中のある夜、ハイボールを飲みながらテレビを見ていた。 夕食はとっくに済み、両親はもう休んでいる。仕事の電話を終えて戻ってきたきょうだいが、「ちょっと小腹空かない?」と聞いてきた。言われてみればそんな気もするが、深夜のカロリーは良くないよなあ・・・と葛藤していると、台所から弾んだ声が聞こえてきた。 「どん兵衛があるよ!」 思わず目を見合わせる私たち。気持ちは一瞬で通じ合う。 「20分どん兵衛やる?」 「やろうやろう!」 「20分どん兵衛」とは、その名の通り、

          知らなかったんだと、知った夜。

          「乳母車」と言ったら咎められた。いやわかるよ、ジェンダーレスでボーダーレスで多様性の時代にはそぐわない昭和ワードなんでしょ。でもね、うばぐるまって響き、好きなのよ。赤ちゃんを愛おしむおとなたちの気持ちやまなざしまで伝わってくるようで。美しい日本語を捨てたくないって、私は思うんだ。

          「乳母車」と言ったら咎められた。いやわかるよ、ジェンダーレスでボーダーレスで多様性の時代にはそぐわない昭和ワードなんでしょ。でもね、うばぐるまって響き、好きなのよ。赤ちゃんを愛おしむおとなたちの気持ちやまなざしまで伝わってくるようで。美しい日本語を捨てたくないって、私は思うんだ。

          母と歩けば。

          実家を出て二十数年が経つ。 気がつけば、家族で暮らした年月よりも一人暮らし歴のほうが長くなっている。 私もきょうだいも巣立ち、両親は六十代後半で地方へ移住し、今はそれぞれがそれぞれの場所で生きている。 そんな家族も、毎年お盆とお正月には全員で集まる。 両親の家に集合して、たくさんしゃべって、さんざん食べて飲んで、賑やかに過ごす数日間。その楽しい時間の中で私がいつも思うのは、「もう二度と、家族みんなで住むことはないんだな」ということ。 そりゃそうだ、きょうだいにはパートナーが

          母と歩けば。

          お正月、箱根駅伝に思うこと

          今年のお正月も箱根駅伝を見た。 おせちをつまみにだらだら飲みながら、のんべんだらりと過ごす私の目の前で、真剣でリアルでライブな最高のドキュメンタリーが展開されている。 道具を使わず、己の体ひとつで未知の世界へと挑む若いランナーたち。冬休みモードで身も心もすっかり緩みきった私には、その存在自体がもう、まぶしすぎる。 レース自体ももちろんだが、今年は合間に流れたコマーシャルが素晴らしく良かった。サッポロビールの箱根駅伝用オリジナルCMは毎年、歴代選手や過去の名シーンへのリスペ

          お正月、箱根駅伝に思うこと

          12月の魔法

          市販のおでんには、いろいろと種類がある。一人暮らしにうれしいコンビニのやつ。スタンダードな具材がセットになっていて煮こむだけの簡単タイプ。それらの具がつゆと一緒にパックされている至れり尽くせりタイプ。静岡や名古屋などのご当地タイプに、ピリ辛などの味変タイプ。などなど。 12月のはじめ、スーパーのお買い得コーナーで「海鮮おでん」なるものを見つけた。鰯つみれ、蛸ボール、桜海老つくね、鯛すりみ半片など、いい出汁がでそうな練りもの系の具が3個ずつ、たっぷりのつゆに浸かってパックされ

          12月の魔法

          あ、雪だ! 瓶のなかにちらちら舞って、まるでホワイトクリスマス。 サンタは来ないけど。 ベルは鳴らないけど。 焼いてるのはケーキじゃなくて、イカだけど。

          あ、雪だ! 瓶のなかにちらちら舞って、まるでホワイトクリスマス。 サンタは来ないけど。 ベルは鳴らないけど。 焼いてるのはケーキじゃなくて、イカだけど。

          世界を変えないひと。

          今日は肌と髪の調子がとてもいい。 今年一番なくらい。 それなのに隣の後輩くんは出張、向かいの同僚はお休み、仲良し先輩はリモートワーク、打ち合わせも定時後の予定もナシ。 人との接点がことごとく無い。 そもそも接点があったとしても、他人のコンディションの微妙な違いなど、知らんこっちゃだろう。 私の絶好調を世界中が知らないまま、今日一日が過ぎていく。 誰からも褒められなかった。 でも、誰かに傷つけられたり、傷つけたりもしなかった。 自分が世の中になんの変化も起こさないこと、な

          世界を変えないひと。

          見たい空があるから。

          視野検査というやつを受けた。ものもらいで眼科を受診した際に、ついでにいろいろと診てもらったのがきっかけだった。視野が狭くなっていく緑内障の傾向があるから、検査を受けたほうがいいという。そんなこと急に言われても、と戸惑ったが、先生はカルテを見ながら神妙な顔つきをしている。一気に不安が押し寄せてきて、心細くて泣きそうになった。 検査当日、少し緊張してクリニックに行った。心配で気持ちが弱っているところに看護師さんたちの優しさがあたたかく、また泣きそうになる。 検査方法は、視界に

          見たい空があるから。

          買ってきた里芋はしっかり乾燥させるんだよ、と電話口で母。へー知らなかった。大人になっても親から教わることはまだまだたくさん。こうやって代々伝えられてきた暮らしの知恵を、私はたぶん、誰にも伝えないままだろう。ちょっとだけ感じる後ろめたさ。ちょっとだけ、ごめん。

          買ってきた里芋はしっかり乾燥させるんだよ、と電話口で母。へー知らなかった。大人になっても親から教わることはまだまだたくさん。こうやって代々伝えられてきた暮らしの知恵を、私はたぶん、誰にも伝えないままだろう。ちょっとだけ感じる後ろめたさ。ちょっとだけ、ごめん。

          今年の冬も。

          毎年、この時季に思うこと。 寒いほうが、ビールはおいしい。 どうしてだろう、夏よりもうまさが際立つ気がする。 空気がきれいだから? 体温が高くないから? ついこの前まで「夏はやっぱりビールだ!」なんて言ってたのをすっかり忘れて、「冬こそビールだ!」と叫んでいる。 どうしてだろう、とは思うけれど、理路整然とした理由が知りたいわけではない。 科学とか生物学とかの小難しい説明をされてもピンとこないし、「そんな気がするだけで実は差異は無い」なんて聞かされちゃったら、それこそ酔いも

          今年の冬も。

          秋、心が動いて。

          秋から年末までのあいだ、ちょうど今くらいの世の中の空気が好きだ。 暑さから解放されて、寒さはまだそれほどでもなく、 行事の慌ただしさもない、おだやかな時季。 なんとなく中途半端な、でもなんだか落ち着くような、独特の質感がする。 心にゆとりがあるからだろうか、目に入るいろいろなものが印象に残る。 ふいに心動かされることが続いた、そんな今日このごろです。

          秋、心が動いて。

          秋、はじめました。

          ある日突然、姿が見えなくなった。 さよならも言わずに去っていった。 急すぎる別れだから、余計に胸に残る。 そんな終わり方だった、今年の夏。 気力と体力を奪い続ける暑さに、ほとほと辟易していたのは事実。 もううんざりだ、勘弁してくれと悪態もついた。 でも、だからって、こんなに急に居なくならなくてもいいじゃないか。 去りかけている気配に気づき、そうかもうそろそろお別れか、いろいろ文句も言ったけどありがとうね、と少し感傷的な気持ちになって見送るところまでが、私にとっての夏なのだ

          秋、はじめました。