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【note連載版】ライトノベル回顧2023|毎週レビュー企画:2023年12月編

新月お茶の会の自称ラノベ担当・はじめまことが、今年1年のラノベ界隈を振り返る。週にひと月を取り扱い、12週間で1年を振り返ることを目的とする。蒸発した場合も『月猫通り2183号』に掲載予定なのでご心配なく。毎週土曜更新予定。

 この企画では、新月お茶の会のラノベ担当を自称するはじめまことが、各月のライトノベルを振り返り、印象深かった作品や界隈で盛り上がった作品・話題について語りつつ、その月の面白かった新作2シリーズを選んで1000文字前後のレビューをしていく。なお、対象作品はレーベル公式サイトの「n月の新刊」の分類(ラノベの杜スタイル)を基準とし、実際の発売日や発行日は無視するものとする。なお、ここで紹介される新作を私が全て読んでいるとは限らない。また、「界隈」とはX(旧Twitter)におけるラノベ界隈のことを指す。

 最終回です。

 これを書いている時点で未だファミ通文庫やGCノベルズなんかはまだ発売すらしていないのに何をもって「話題になった」とか言えるのか。十一週間前の私はその辺について考えなかったんでしょうか。というわけで、今月の記事は序盤と中盤だけで書きます。書籍版(『月猫通り』2183号掲載予定)では終盤の作品も含めて書きますのでお楽しみに。幸い今月は序盤・中盤だけでも話題に事欠かないレベルで傑作が揃っていました。

 十二月序盤では、まずスニーカー文庫から、今年のスニーカー大賞金賞『性悪天才幼馴染との勝負に負けて初体験を全部奪われる話』が出た。とうとうスニーカー文庫にもガルコメの波が来たか。去年は一月に5作品も一気に出して、結局一作品も3巻まで到達できていないのを反省したのか、今年の受賞作は2作である。最近のスニーカー大賞は面白い割にどうも戦績がいまいちな作品が多いので、そろそろ大きく伸びる作品が出てほしいところだ。ついでに大賞の呪いも解いて欲しい。

 同じくスニーカー文庫からは、雲雀湯先生の新作『血の繋がらない私たちが家族になるたった一つの方法』が出た。作者が昔馴染みを書くのが上手いことを前提とした設定構築が良い。長編が完結する前に新作を出す流れが構築できているのが素晴らしい。web小説で後書きで新作の宣伝をするのと似たような空気を感じる。

 講談社ラノベ文庫からは、暁社夕帆先生の新作『先生も小説を書くんですよね?』が出た。デビュー作である『君と紡ぐソネット』には2023年の新歓読書会でお世話になった。新作もやはりライト文芸寄りの講ラ新人賞らしい作品であるが、同時にアンモラルでもある。そういえばこの人百合書きだった(百合書きに対する強い偏見)。

 PASH!文庫からは、『今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す』が出た。二年前くらいに少し流行ったような社会派歳の差ラブコメ。どうもPASH!文庫は実在する配信者を作品内に出すコラボを積極的に行いたいらしい。そっちの方面での読者層の開拓も狙っているのだろう。

 電撃文庫からは、野宮有先生の新作『どうせ、この夏は終わる』が出た。『僕を振った教え子が、一週間ごとにデレてくるラブコメ』と同じく、復活した電撃ノベコミ+の新連載書籍化第一弾である。このような形態はかつての雑誌連載なんかを思い起こさせるが、利用者数さえ確保できれば全方位に利のあるシステムであると思うので是非とも隆盛してほしい。ところで季節ものはその季節か少し前に出せ。

 同じく電撃文庫からは、コイル先生の新作『いつもは真面目な委員長だけどキミの彼女になれるかな?』が出た。自由と不自由を描いた社会派ラブコメ。コイル先生は電撃の新文芸からメディアワークス文庫に流れるというなかなか異色の経歴を持っている作家だが、それぞれのレーベルの色と作家の色が混ざり合っていて、「電撃文庫、電撃の新文芸、MW文庫のAMW3レーベル全てから本を出している」というのを売り文句にできるだけはあるなと感じる。

 十二月中盤では、ファンタジア文庫から新作が6作品も出た。8冊出て最大で3巻という新陳代謝の進んでいる証拠のような月である。個人的には『俺に義妹が出来た後の実妹の変化がこちら』が良かっただろうか。妹であることに執着するあまり一人称が妹になってしまう実妹ヒロインとかとても可愛かった。

 大判では、まずは『本好きの下剋上』の完結に触れるべきだろうか。去年完結した『無職転生』に引き続き、なろう書籍化初期の長大作・著名作も段々と終わる季節がやってきたわけである。中にはweb版が長すぎて途中で終わってしまう作品もある中で、30を超える巻数を積み上げ完結まで出版されたのはとても素晴らしいことであろう。

 大判新作では、まずは電撃の新文芸から『引きこもりVTuberは伝えたい』が出た。VTuberものもwebの流行から書籍の流行への遷移の季節であるだけあって、傑作がばんばん刊行されていく。このまま流行がテンプレとして安定するかどうか。注目である。

 もう一作、SQEXノベルから、『オリヴィア嬢は愛されると死ぬ』が出た。とにかく泣けると話題である。私は泣きたくてラノベ読んでるわけではないので買っていない。

 さらにもう一作、TOブックスから、『推しの敵になったので』が出た。web版既読だが、刊行が決まっている2巻にここ数年で最高レベルの異能バトルが入るはずなので黙って読んでほしい。

 以上、「【note連載版】ライトノベル回顧2023」でした。十二週間に渡りお読みいただきありがとうございます。

 これらの記事はレビューと合わせ、改稿と加筆を挟み来年5月頃発売予定の『月猫通り』2183号に収録予定です。この企画以外にも、今年に発売されたライトノベル新人賞作品全レビューや、私が主催する「なろう系と新文芸の十年史」企画など、ライトノベル尽くしの巻となる予定ですので、皆様是非お買い求めください。

【↓今週のレビュー作品】

(はじめまこと)


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